第 6 章 トータルレコーディング技術に基づく地上デジタルテレビジョン放送
6.2 測定原理
本章では地上デジタル放送波の信号形式(OFDM 変調,ISDB-T 方式)を利用した新し い伝搬特性測定原理を述べる.ISDB-Tの基本仕様は表6.1の通りである(本論文に関連す る部分のみを抜粋).この測定法の実現には,第3章で述べたトータルレコーディングの技 術がベースとなっている.図6.1は提案する測定法の基本構成の概念図である.送信局が見 通しにある地点において高利得アンテナで放送波を受信し,これを基準信号(TR1)とする.
一方,同時刻に測定したい環境(屋内,または移動体)で同様に受信する(TR2またはTR3).
独立に取得されたデータであっても,周波数変換のための局部発振周波数やアナログ・デ ィジタル変換(ADC)のクロックを精度の良いものとすれば,両信号でコヒーレンスが期 待できるので,TR1信号を位相基準として,TR2やTR3の信号のオフライン解析による精 密測定が原理的には可能である.これは,図 1 の屋内環境(TR2)であっても,移動受信 環境(TR3)であっても,その違いを問題にしない.
表6.1:ISDB-T方式伝送パラメータ(本論文関係分)
映像符号化方式 MPEG-2 Video 音声符号化方式 MPEG-2 Audio AAC
多重化方式 MPEG-2 systems
帯域幅 5.6[MHz]
伝送モード Mode3
キャリア数 5617
シンボル長 1.008[ms]
ガードインターバル長 126.000[µs]
ガードインターバル比 1/8
変調方式 OFDM
変調方式 QPSK
符号化率 1/2
階層A
情報レート 312.06[kbps]
変調方式 64QAM
符号化率 3/4
階層B
情報レート 16.821[Mbps]
誤り訂正内符号 パンクチャド畳み込み
外符号 RS(204,188)
図6.2は信号解析の手順を示している.この一連の信号処理は,複数のサブキャリアで構 成される周波数帯域幅(∆f )と複数のシンボルで構成される時間幅(∆t)で囲まれる領域
(以下では,これをグループと呼んでいる)単位での電波の振幅・位相や MER 値
(Modulation Error Ratio)を求める前段信号処理(Pre-processing)部分と,この情報か ら目的とする伝搬特性や伝送特性の統計的性質を求める解析処理(Statistical analysis)部 分より成る.測定法という意味では前段信号処理までが確認できれば,手段の原理実証が できたことになるので,本論文ではここまで(=図中の点線で囲った部分)をまとめる.
この測定法の有効性を確認するためには,
① 独立に取得した2系列データ中のOFDMシンボルの同時刻特定ができるかどうか?
② 独立な信号発生器(周波数変換用局部発振器,ADC 用クロック発生器)で取得した2 つの信号間でコヒーレンスが保たれているかどうか?
③ 基準局の位相を基準とした精度の良い復調ができるかどうか?
である.本論文では,東京タワーからの実放送波を用いて上記の技術要素を実証する.
TR1
Multipath - free LOS Reference signal
reception
High CNR signal
TR2
Shadowing and multipath (time & frequency variant) Shadowing and multipath
(time - invariant)
DTV broadcasting signal
TR3
図6.1:提案測定法の基本構成(概念図)
図6.2:信号解析手順の概念