第 3 章 トルコ語の形容詞的分詞とタ・テイルの形容詞的用法
3.2. 形容詞的分詞の分類とトルコ語の形容詞的分詞
3.2.3. 形容詞的分詞の -(I)lI
(17) a. güzel‘奇麗/美しい’
奇麗
b. güzel-leş‘奇麗になる/美しくなる’
奇麗-VRBL
c. güzel-leş- miş kız-lar‘奇麗になった/なっている女の子’
奇麗-VRBL-PRT 女の子-PL (Gürer 2014:182-183)
意味用法の観点から見ると、述語用法の -mIşは動詞語幹+-mIşの構造で使われ、他の TAM マーカーが付加されない場合、エヴィデンシャリティー (evidentiality) とパーフェ クティヴィティー (perfectivity) の両方を表す (Göksel & Kerslake 2005) が、名詞修飾用法 では述語形式のエヴィデンシャリティーの意味が喪失し、動作が完了した結果、対象の 表す状態(結果の状態)という意味のみを表す (Korkmaz 2014, Hirik 2016)。
a’. özensizce yap-ılı saç 雑に する-PRT 髪 英語訳:‘Sloppily done hair’
日本語訳:‘だらしなくセットされている髪の毛’
b. metal koruyucu-lar sıkıca kapa-lı-ydı.
金属 保護するもの-PL しっかり 閉める-PRT-PST.COP 英語訳:‘The metal savers were tightly closed.’
日本語訳:‘金具はしっかり閉めてあった。’
b’. sıkıca kapa-lı metal koruyucu-lar しっかり 閉める-PRT 金属 保護するもの-PL 英語訳:‘Tightly closed metal savers’
日本語訳:‘しっかり閉めてある金具’ (Gürer 2014:173)
3.2.2 節で述べたように、Embick (2004) は「make」、「build」のような創造動詞や
「become」のような状態変化動詞は句の分詞とは共起できないと述べ、Gürer (2014) は
Embick (2004) のその指摘は分詞接辞の -mIş と同様に -(I)lI にも当てはまると言及してい
る。
(20) a. *Bu site-ler diz-ili ol-muş.
この ビル-PL 並べる-PRT なる-EV(発見)
英語訳:‘These buildings became ordered.’
日本語訳:‘これらのビルは並んだ形になっている。’
b. *Bu kitabe-ler yaz-ılı yap-ıl-mış.
この 碑文-PL 書く-PRT する-PASS-EV(発見)
英語訳:‘These inscriptions are made written.’
日本語訳:‘これらの碑文は書かれた状態になっている。’
(Gürer 2014:175)
動詞との関係に関しては、-Ik と-mIş に対して、-(I)lI は非対格/非能格動詞のどちら にもほとんど付けることができず、ほとんどの場合に他動詞に付加される。しかし、全 ての他動詞に付加できるわけではない。
(21) a. kapa-lı kapı ‘閉まっているドア’(他動詞)
閉める-PRT ドア
b. *aç-ılı kapı ‘開いているドア’(他動詞)
開ける-PRT ドア
c. *bat-ılı gemi ‘沈んでいる船’(非対格動詞)
沈む-PRT 船
d. *çalış-ılı adam ‘働いている男の人’(非能格動詞)
働く-PRT 男の人
上記の非文法的な例 (21c) は -Ikと -mIş であれば文法的であり、例 (21b) は –Ikであれ ば文法的でり、さらに「aç-」(開ける)を「aç-ıl-」(開けられる)のように他動詞を自 動詞にすると、-mIş も接続できる。従って、-(I)lIはほとんどの場合に自動詞には付加で きず10、他動詞の場合には -Ikが付くことができない動詞であれば、その動詞に付加でき ると思われる。しかし、それも以下のような例外が見られる。(22a) は「腕が何らかの原 因で曲がって、今も曲がった状態にある」という意味を表し、(22b) は「蛇口をある目的 で曲げて、今も曲がった状態である蛇口の性質を表す」という異なった解釈を与える。
(22) a. bük-ük kol ‘(不自然に)曲がった腕’
曲げる-PRT 腕
b. bük-ülü musluk başı ‘曲がった蛇口’
曲げる-PRT 蛇口 (Gürer 2014:179)
-(I)lI で派生された形容詞の意味について考察を行う Gencan (1979) はその意味が動詞
の自他の関係によって左右されると述べている。-(I)lI はほとんどの場合に他動詞に付加 され、自動詞に接続されるのは珍しいが、以下にも表示されるように、場合によって自 動詞にも付加でき、意味の差異が見られる。
10 -(I)lIが付加できる自動詞は Gencan (1979) に挙げられた例の「az-」‘絶望する/増長
する’、「kork-」‘怖がる’と「kok-」‘臭う’しか見つからなかった。
表2 -(I)lI が付いた動詞の種類と派生した形容詞の意味 (Gencan 1979) 動詞語幹+
-(I)lI
-(I)lI が付いて派生され
た形容詞の意味 例
他動詞+ -(I)lI 受動的 (passive) 11 dik-ili(植える+ -(I)lI)
‘植えた/植えている’
自動詞+ -(I)lI 能動的 (active) 12
az-ılı(絶望する/増長する+ -(I)lI)
‘絶望した/絶望している/増長した/
増長している’
Vendler (1957) の動詞分類を使用したGürer (2014) の言語テストによると、-(I)lI は –Ik や -mIş と同様に、「持続的」、「動的」、そして「限界的」である達成動詞のみと両立 している。
(23) a. *koş-ulu çocuk(活動動詞)
走る-PRT 子供
英語訳:‘the child who has run’
日本語訳:‘走った子供’
b. *bil-ili çocuk(状態動詞)
知る-PRT 子供
英語訳:‘the child who knows’
日本語訳:‘知っている子供’
c. *var-ılı yolcu(到達動詞)
到着する-PRT 旅客
英語訳:‘the passenger who has reached’
日本語訳:‘到着している旅客’
d. kapa-lı ev(達成動詞)
閉める-PRT 家 英語訳:‘closed house’
日本語訳:‘閉まった/閉まっている家’ (Gürer 2014:180)
11 Gencan (1979) は他動詞+ -(I)lI の形容詞が受動的な意味を表すことの根拠として、他
動詞+ -(I)lIを -mIşと置き換えると、他動詞+受身形の接辞 -Il/-n + -mIşの構造になるこ
とを挙げている(例:dik-ili → dik-il-miş)。
12自動詞+ -(I)lI で形成された形容詞は、その動作の動作主あるいは経験者 (experiencer) としても解釈される(例:az-ılı (絶望した)= az-an(絶望した人))。