• 検索結果がありません。

テイルの形容詞的用法

ドキュメント内 学位請求論文 (ページ 65-69)

第 3 章 トルコ語の形容詞的分詞とタ・テイルの形容詞的用法

3.3. タ・テイルの形容詞的用法

3.3.2. テイルの形容詞的用法

一方、上記で挙げた構造的形状動詞ではない形状動詞は語彙的形状動詞とされ、この グループに入る形状動詞は元々出来事の意味を持たないものと、元の動詞は出来事を表 す動詞的用法も持つが、形容詞的用法の方は結果の状態を焦点化することによって直接 派生されたのではないものに分けられる。語彙的形状動詞の動詞分類は次のようである。

(45) a. 典型的第4種動詞(金田一 1950による)

1. 漢語+スル:冷暖房を完備した施設

2. 様態副詞(擬態語・擬声語を含む)+スル:生き生きとした会話 3. 身体部分または形状を表す名詞+ヲ+スル:青い目をした人形 b. 第5種動詞21:異なった種類の問題、関連した事件

c. 結果の状態の固定とずれ22:鳥に似た味、もつれた人間関係

d. 連体詞的形状動詞23:あきれた事件、困った子どもたち

e. 副詞的・後置詞的形状動詞24:外務省を通じた折衝、ルールに従った競争

(金水 1994:55-60)

本節では、タの形容詞的用法の形態的・統語的そして意味的な特徴を概説し、タが形 容詞的になりうる成立条件と成り得ない条件、そしてタがどのような動詞に接続すると、

形容詞的な意味をもつかということに触れた。次節では、ほぼ同様の観点から、テイル の形容詞的用法について記述する。

金田一 (1955) によると、例 (46) は道が「非・真直」という状態にあることを、「曲る」

という語と「テイル」という語の二つの語に分けて表しているという。

金田一 (1955) は形容詞的なテイルの特徴として以下の点を挙げている (pp.46-47)。

i. 動作・作用を表す動詞には単純状態態がない。単純状態態を持っているのは状態を 表す動詞、形容詞、及び「—だ」の形である。

ii. 状態を表す一部の動詞、形容詞、「—だ」の形は、それだけで単純状態態を表す。

状態を表す動詞の一部はテイル又はタをつけて初めて単純状態態を表す(猿に似た 顔=猿に似ている顔)。金田一 (1950) のいわゆる第四種の動詞がこれである。なお、

既然態・進行態・将然態に過去態と非過去態とがあったが、それと同様に、単純状 態態にも、過去態と非過去態がある。「ある」「白い」「似ている」などは、非過 去態の単純状態態であり、「あった」「白かった」「似ていた」などは、過去態の 単純状態態である。

iii. 精神作用を表す動詞の中には、タを付けて、単純状態態を表すものが少数ある。

「困る」「驚く」「あきれる」などがそれで、「これには困ったよ」「困った連中 だな」などのように使う。

また、寺村 (1984) は、金田一 (1950) がテイルの付加によって「単なる状態」や「ある 状態、性質を帯びていること」が表されるのが第四種の動詞であるとし、瞬間動詞と第 四種の弁別が難しい場合が多いことに注目していることを述べた上で、どのような動詞 ならそのテイルが常に形容詞的に理解され、どのような動詞なら決してこの種の使い方 はできないか、またどのような種類の動詞が、「継続・進行」あるいは「結果の状態」

としても使われ、形容詞的にも使われるのかを記述すべきであると指摘している。テイ ルの「継続・進行」の用法と、「完了の結果の状態」の用法を一括して「アスペクト的 な用法」と呼び、アスペクト的なテイルと形容詞的なテイルを判定するテストを行って いる。テイルのこれらの二つの用法の認定方法の一つとして、(未来・未然の)基本形 の用法と、(過去・既然の)過去形の用法の両方が考えられるかどうかということを挙 げ、考えられない場合は形容詞的用法であると認定している。もう一つは、連体修飾で タの形になるのが普通で、そのタには既然(完了)の意味も、過去の意味も感じられな いかどうかである。そのテストに通るものは形容詞的動詞のテイルと考えられると指摘 している。以下はそのテストの例である。

(47) a. その老婦人はいつも犬を連れている。

b. *明日彼女は犬を連れる(はずだ)。

c. *昨日彼女は犬を連れた。

d. 犬を連れている老婦人

e. 犬を連れた老婦人 (*いつも犬を連れた老婦人)

(→ a. は形容詞的) (寺村 1984:141)

(48) a. 私はその秘密を知っている。

b. その子もいつかはその秘密を知るだろう。

c. その秘密を知っている人(は、いない)

d. その秘密を知った人(は、次々に消された)(タは過去)

(→ a. はアスペクト的) (寺村 1984:142)

(49) a. あの人を知っている。

b. *そこへ行ったら、あの人を知るだろう。

c. *あの人は昨日知った人だ。

d. 知っている人には誰にも会わなかった。

e. 知った人には誰も会わなかった。 (タに既然、過去の意味無し)

(→ a. は形容詞的) (寺村 1984:141-142)

このようなテストをしてみると、寺村 (1984) は動詞には、次の3つの種類があると指 摘している。

A. テイルがいつも形容詞的になる動詞

B. テイルがいつもアスペクト的(既然の結果)になる動詞

C. 文脈次第で、テイルが形容詞的にもなるし、アスペクト的にもなる動詞

このテストの観察のまとめとして、テイルが付くと、どのような種類の動詞がどの用 法を表すかを具体的に以下のように示している(○は文脈によってその用法が可能であ ること、×は不可能、◎は特別の文脈なしに用いられる場合の優先的な読みを示す (p.142))。

(50) 過去と結びつけられた 形容詞的 現在の状態

既然の結果の存在 回顧

継続 結果の状態 (開始の結果) (完了の結果)

A 食ベテ(飲ンデ)イル ×

走ッテ(歩イテ)イル ×

B

ノンビリシテイル ×

着物ヲ着テイル

フトッテ(ヤセテ)イル ?

変ワッテイル ?

始マッテ(終ッテ)イル × ×

生キテイル ×

死ンデイル ×

C

スグレテイル × × ×

バカゲテイル × × ×

変ナ形ヲシテイル × × ×

堂々トシテイル × × ×

(寺村 1984:143)

寺村 (1984) は形容詞的なテイルがどのような動詞の場合に表されるかに関する考察を

行い、主にその述語における使用を取り扱っている。連体修飾節における用法について は、金田一 (1955) は単純状態態のテイルの特徴に触れる際、「連体法の場合には「—た」

の形でも表されるのが特徴である (p.46)」と述べているが、それ以上説明されていない。

また、金水 (1994) は 3.3.1 節でも見られるように、形容詞的なタを中心に考察を行って おり、連体修飾節における形容詞的なテイルについては記述していない。しかも、寺村

(1984) の形容詞的解釈の認定では形容詞的用法の動詞は連体修飾ではテイルを取りうる

ことがあるにも関わらず、寺村 (1984) の指摘に従って整理したタ、テイルとテアルの分 布では、主節のテイルとテアルが連体修飾の場合にはタに交替することを示している (pp.32-33)。

(51) 主節 連体修飾

過去・既然 タ タ 継続・結果の状態 テイル テイル

形容詞的 テイル/テアル タ

主節に現れる形容詞的なテイルは連体修飾においてタになることが多いが、テイルに もなり、そのような両形式の使用可能な場合については、3.3.4節で記述したい。

ドキュメント内 学位請求論文 (ページ 65-69)