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―03年度新入生に対する「基礎的操作技能」アンケート悉皆調査の検討を通じて―

ドキュメント内 情報教育研究センター年報 2002 (ページ 30-38)

Akira NAKANO

情報教育研究センター研究員 日本語日本文学科教授

A Study on General Education for Informatics in University

1.はじめに

○情報教育の系統

急速に進展する情報社会に対応できる能力を育成す べく、教育における改革が進められている。例えば、

2002年度からは小・中学校で、2003年度からは高等学 校でそれぞれ新しい学習指導要領が本格実施されてい るが、その中には情報教育関連の教科・領域が多く盛 り込まれている。小・中学校では「総合的な学習の時 間」をはじめ、すべての教科・領域の中で情報教育を 扱うことになっている。さらに中学校では、技術・家 庭科の必修領域「情報とコンピュータ」が新設され、

情報活用能力を育成する主たる教科・領域として位置 づけられている。また高等学校では、普通教科「情報」

が必修教科として導入され、本格実施が始まっている。

一方で、「情報社会に主体的に対応できる能力」=

「情報活用能力」の概念が一層明確になり、以前のよ うに、コンピュータ操作技能を高める教育が情報教育 である、という誤解はかなり影を潜めたように見える。

コンピュータ操作技能は情報活用のいわば表層であっ て、本質ではない。

しかしながら、大学教育入門期において、情報機器 操作を伴う、情報の処理や表現等の教育は不可欠であ る。このような教育を一般情報教育と呼ぶことにする。

○大学でのカリキュラムの工夫

大学における一般情報教育は、小・中・高等学校の ような教育全体を動かすほどのドラスチックな変化と しては現れていない。しかしながら、情報社会の進展 状況と、入学してくる学生の情報活用能力の変化、産 業社会からの要請など様々な要素に配慮しながら、各 大学では一般情報教育の取り組みを強化しつつ、その 枠組みやカリキュラムのありかたについて様々な工夫 を行っている。情報教育カリキュラムの改訂、履修方 法の柔軟化、教材のモジュール化、本学が行っている リテラシー教育の外部委託などもこの一例として挙げ ることができる。カリキュラムや履修・学習方法の検 討の中で、大学における一般情報教育のあり方そのも

のについても議論が進んでいる。そこでは、一般情報 教育では表層ではなく原理や本質を追究すべきである という考え方が中心となっている。かつて、大学の一 般情報教育がスキル中心の教育内容であったり、プロ グラミングなど技術を重視したものであったことに対 する反省も込めて語られていることが多い。

○理想と現実のギャップ

しかしながら、現実にはコンピュータリテラシーを 育成するための教育(非常に狭い意味での情報教育)

を、補完的にではあっても、行わざるを得ない情況が 存在する。恐らくは、2006年度以降、本学入学生全員 が新教育課程の履修者になった後もこの種の教育が引 き続き必要になると考えられる。これは、入学してく る学生たちのコンピュータリテラシーが大学での専門 教育に接続するには不十分であったり、学生によって その能力に大きなばらつきが見られるためである。そ れは、普通教科「情報」の中での取り扱い方、情報A,

B,Cという科目選択の違いなど、コンピュータリテ

ラシーに関する扱いはそれぞれの入学生で大きく異 なっていることが考えられるからである。問題は、大 学入学時にどのような内容をどの程度、どのように学 習させるかということである。本学においては、コン ピュータリテラシー教育の多くを外部委託しているこ ともあり、新教育課程の過渡期を含むここ数年は学生 の実態把握に努めながら教育内容と教育方法を柔軟に 選択していくことが望まれる。

○コンピュータリテラシーに関する悉皆調査

2003年は、教育課程の大きな節目の年であるととも に、MM館における情報教育が本格稼働し始めた年で あることから、抽出調査ではなく、入学生全員にコン ピュータリテラシーに関する質問紙を実施し、3000名 弱から有効な回答を得ることができた。

本稿では、この質問紙の結果から、2003年度入学生の コンピュータリテラシーについて分析した。全体の単 純集計や、各学科による違いなどは別に出される報告 に譲ることにして、ここでは主として、入学生の持っ ているコンピュータリテラシーの構造や構造間の関連

に注目し、検討することにした。これらによって、今 後本学の一般情報教育に関して、その教育内容と教育 方法を策定する上での参考資料に資することができれ ばと考えている。

2.調査の概要 2―1.質問紙実施の概要

・対象:2003年度大学、短期大学部の新入生全員 合計2966名

有効回答数は、2868名

(N=2868)

・実施時期:2003年5月

・実施方法:質問紙による意識調査

必修科目「情報活用の基礎」授業の中で調査を行っ た。

・データ化の処理:質問紙の回答をマークカードに転 記し、データ化した。

・結果の処理:量的処理を行った。調査結果の集計に ついては、別の報告が行われる予定となっているの で、これと重複しないように配慮した。特に因子分 析を中心とした処理を行った。

・回答漏れの処理:未回答、重複回答、誤記入等につ いては欠損値として扱い、レコードそのものを排除 することはしなかった。

2―2.質問紙について

・項目数:A4用紙2枚に及ぶ用紙に52項目で構成し た。それぞれの項目は、パソコン基礎、ワープロ基 礎、表計算基礎、ネットワークの4カテゴリに分類 されている。今回の調査では、個人の属性を問う質 問項目は含まれていない。

・質問内容:次ページの図1(質問項目の平均値と

SD)に掲載する。

・回答方法:「大変よくできる」「だいたいできる」

「あまりできない」「全くできない」の4件法を用 いた。4件法を用いたいとは、事前の予備調査で、

「答えにくい」という指摘がなされたことを反映し たものである。

3.結果

3―1.全体としての特徴

次ページの図1に、各項目の回答数、それぞれの項 目の単純平均と、100点換算平均値をあげる。100点換 算平均値については、4を100点、3を67点、2を33 点、1を0点として換算したものである。また、各項 目ごとのSDをあげる。

○得点の高かった項目

「漢字まじりの文章入力」、「目的に応じたマウス操 作(クリック、ダブルクリック、ドラッグ、右クリッ クなど)」、「携帯電話を使ったホームページの閲覧」、

「ウィンドウの基本操作(最小化、最大化、閉じる)」、

「携帯電話を使った電子メールの送受信」などの項目 が、ほぼ80%を超えていた。携帯電話によるメール送 受やWeb閲覧などのインターネットを介するサービ スが学生たちの間に浸透している様子があらためて明 らかになった。

また、「漢字まじりの文章入力」、「目的に応じたマ ウス操作」、や「ウィンドウの基本操作」については、

入学以前にほぼ全員の学生が体験してきたものと考え られる。

○得点の低かった項目

「データの並べ替え」、「絶対参照を使用した計算式 の作成」、「関数を使用して合計や平均値を求める」、

「インデントの設定」、「セルの表示形式(カンマ、通 貨スタイル、パーセントスタイルなど)の設定」、「グ ラフの作成や編集」、「Wordやホームページ作成ソフ ト、HTML言語を使用した簡単なホームページの作 成」、「ヘッダとフッタの作成」、「表の修飾(格子、二 重線、斜め線など)」、「コンピュータウィルスに対す る対応」、「オートフィルを使用した連続データ(日付 など)の入力」、「コントロールパネルを使用したアプ リケーションソフトの追加と削除」等の項目が20%に 満たない得点となっていた。

これらの項目はSDが目立つほど大きくないため、

「一様にできない項目」と考えられる。中でも、表計 算ソフトのやや高度な活用についての項目の得点が低 い。つまり、「データの並べ替え」、「絶対参照を使用 した計算式の作成」、「関数を使用して合計や平均値を 求める」、「セルの表示形式の設定」、「グラフの作成や 編集」、「表の修飾」、「オートフィルを使用した連続デー タの入力」などである。

SDの高かった項目として、

「オンライン上の掲示板 やチャットの利用」、「ホームページの保存・印刷」や

「気に入ったホームページ(URLアドレス)の登録」

などが挙げられる。これらは、パソコンを経由してイ ンターネットを日頃からよく使っている人とそうでな い人がどちらも多く存在しているということの現れと 考えられる。これら以外にも比較的高い項目があるが、

特に特徴的な背景は読みとれない。ただ、大学入学以 前の情報教育で取り扱われた内容とそうでない内容が あることや、質問の意味が的確に理解されていないも のもある可能性がある。次に、100点換算した後の度 数分布をヒストグラムで図2に表す。

ドキュメント内 情報教育研究センター年報 2002 (ページ 30-38)