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岡山秀吉の

ドキュメント内 創造性を育てる工作の指導に関する研究 (ページ 36-62)

第2章 岡山秀吉を 中・d一と した   手コ[二教育

第2節 岡山秀吉の

    手工教育主張

 岡山秀吉は明治44年(1911)8月から大正2(1913)年11月 までの間,文部省の命により欧米に留学している.この留学先 での視察及び研究は彼の手工教育理念を確立していく上で重要 な役割を果たしたものと見え,留学後の主張は手工教育の価値 や目的における人間形成上での意味の掘下げが進み,留学前と 比較してより明確に示されている.更に,教材や教授法等にお いても若干の違いが見付けられる.しかしながら留学後の彼の 主張は,大体において留学前の考えをより総合・整理して発展 させたものであると見ることが出来よう.従って本節では,留 学後に記された岡山の著書『新手工科教授』及び『新手工科教 材及教授法』の両町をもとに,彼の留学後の主張を中心として まとめていくことにする.

    1 手工科教授の任務及び目的

 岡山は手工科教授の任務を,当時の様々な手工教育主張を包 括・整理し,より了解に便なる形として次のように説明してい

る.(20)

(1)一般的陶冶

  手工科における一般陶冶は身体或いは心意の円満な発想を  意味するのであり, 「手・眼を練習し,観察を高め,思考を  練:り,勤勢・精確・忍耐等の習慣を養成する」というフレー

ベルやペスタロッチ等の時代から唱えられてきた方面と, 「 主知主義の教育に野して立った主意主義の教育説」から出発 した方面との2つがある.前者は「手工の實験が感官を練る こと,知識を増進すること技術を進むること」等を重視した が,後者では「製作襲表の心意襲展に及ぼす効果,及び筋肉 運動が脳の襲達に及ぼす憤値」等を重視するものであるとし

ている.

(2)実用的陶冶

  これは手工科において, 「日常生活に必須なる知識及び技  能を授け,現實の社會生活を螢むに便する方面」を言うが,

 この方面の要求は段々強くなる傾向にあるとしている.即ち,

 第一次世界大戦後の大不況により生活が逼迫しっっあった当  時の国民の多数は, 「観察の修練とか,或は勤勉忍耐の良習  慣の養成』といった抽象的な目標を持って,悠長に構えてい  る訳にはいかなかったのである.従って,実用品を作ること  によって具体的効果を収めることが社会の要求に適合させる  ことであり,手工が「實用に長ずるを以て一特徴とする學科」

 たる所以であるとしている.

(3)生産的陶冶

  手工教授を「軍に一般的の意味から生活必須の知能を養ふ  のみならず,尚進んで職業教育に喰ひ入り,成るべく個性に  順慨したる職業の準備教育を施し,個人の生産的能率を増進  せしむると共に,國家の産業を襲展せしめ,國富を増大する       34

の任務を有するものと思ふ」と捕らえ,職業陶冶を手工教育 によって施していこうというものである.この職業陶冶は,

ペスタロッチ等の時代に論じられた,将来職業に就く極僅か の特殊的児童のための職業教育とは意味を異にし,社会が産 業化へと漸次向かっている時代であるからこそ,国民一般に その種の陶冶を施す必要があるのだとした.

 以上のように岡山は,手工科の任務を三項目に及んで説明し たが,その中でも手工科が普通教育の一学科である以上当然一 般的陶冶が重要であるとし, 「早戸幼年の見童若くは將來高等 の教育を受くるやうな籐裕のある見童に封しては,この方面の 陶冶を旨として引くるがよいと思ふ」と述べている.

 現代の教育においてはこの方面が大部分を占めるものである が,この当時では子どもの心意発達の重要性が捕らえられ始め てはいるものの,社会的情勢或いは経済上での問題が多く,ま だそれを全面的に受け入れる土壌は出来ていなかったようであ る.従って,以上の三任務を統合した形で次の手工科教授の目 的が示されている.

 文部省の教則には手工科教授に大体の統一を保たせるため,

「手工ハ簡易ナル物品ヲ製作スルノ能ヲ爲シメ,工業ノ趣味ヲ 長ジ勤勢ヲ好ムノ習慣ヲ養フヲ以テ要旨トスJc21)と目的の大 要が示され,以下の3点を持って手工科の眼目としてある.

   一,物品製作の能を養うこと    二.工業の趣味を長ずること

   三,勤労を好む習慣を養うこと

 これについて岡山は,「その大方針を示し,教授者の羅針盤 となすに於て極めて要を得たものである」と認めながらも, 「 我が邦全艦共通に,市にも村にも,貴族の學校にも貧民の學校 にも,適合せしむるやう,尚また社會の要求が時に依りて多少 攣更することあるとも,それに慮じて幾分の自由のきくやう,

所謂大綱を示すに止まるもの」であるため,実際の教授に当た っては時勢や学校・土地の事情等に照らし合わせて,適当に個 性化していくよう研究をすすめなければならないとしている.

 このように岡山は,基本的に文部省の方針に沿いながらも,

それを一般普通の学校において生かしていくには独自の解釈が 必要であるとし,上の3点について彼の考えを次のように示し 手工科教授の目的とした。(22

(1)物品製作の能を養うこと

  物品製作の能は,物品を創意し或いは模倣する心意作用と  これを表出する技術の2方面からなるものであり,この能力  の養成こそが手工科教授の中心となるべきものであるとして  いる.即ち児童はこれによって, 「自らの経験界から得たも  の,諸學科に於て學んだもの,又は自己の創意に係るものを  車地に言表して,思想感情を練り技術を長じ勤拶自爲の徳を  進め,實用の物品を得るのである」と,その価値を大きく評  価している.更にその製作の能を発揮させるための注意とし  て,以下の4項目を挙げている.

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a. 製作に付帯し多量の知識を授けることを避け,成る   べく多くの実習をさせること.

b. 手の練習を重視すること.

c. 創作の能を養うよう努めること.

d. 製作原料の品類性質や,工具の使用法及び手入れ法   に関して必須の知識を与えること.

(2)工業の趣味を長ずること

  工業の発達は,産業経済の充実を通じ国家社会を発展させ  いくためには必要欠くべからざるものである。従って,普通  教育中鷺に手工科において工業に重点を置いて教授すること  により, 「一般国民の工業に封ずる常識を高め,その趣味を  長ずる」ことをねらっている.

  この考えは,先の第一次世界大戦によって露呈された我が  国工業の欧米諸国からの立ち遅れを憂いて表されたもののよ  うで,農業立国から工業立国への早急な立場の変換を主張し

 ている.

  しかしながら,この工業の趣味を長ずるに当たっては工業  の知識を授けることを主眼としたため,製作の技能及び勤労  の習慣の養成上妨げにならぬよう過重せぬこととし,他の2  つの目的を優先するものとした.

(3)勤労の習慣を養うこと

  当時の小学校において学ぶ児童の大多数は,いずれ実業の  世界に入り身体を労して生活していかねばならない運命にあ

る.そのような児童の将来を見通し,勤労の習慣を養成する ことを目的の一つとしたのである.

 また勤労はそれ自身必要であるだけでなく, 「猫立・堅忍

・自降等,人生々郡上敏くべからざる諸徳を伴ふ」ものであ り,訓育上でも重要な意味を持つとした.

 更に,教育において勤労の精神を養う上での注意として,

次の3点を挙げている.

a。 児童の好む所に従って,これを導くこと.

b  体的運動と心的作用とを協同一致させること.

c  児童にある程度まで自由を与え,自ら進んでこれを   反復実行させること.

 以上のように岡山は手工科の目的を説明したが,留学前の明 治期の彼の目的観と対比させてみると,その背景がよく分かる。

 明治時代の岡山は手工科の目的として, 「之が教授によりて 物品を製作するの技能熟練を養ひ各種工業に關する初歩の智識 を授け,且つ,社會的審美的感情と實業に封ずる趣味とを教育 し,勤勉力行自認自治の良習慣を得せしめ,兼ねて燈育上に資 するにあり」(23)という考えの下に,当時の多くの諸説の中か

ら, 「所謂狭義の教育的債値と實用的憤値との爾方面を認めて,

之が教授により手と眼と脳とを共練して心身の調和的襲達を圖 り,同時に實業の素地と之に封ずる趣味とを養成せんとするに あり」 24)という立場をとって示している.これらから比較し てみると,基本的には明治期からの流れに沿ったものではある       38

が,その個々の内容においてより深く普通教育としての掘下げ が進んでいることが分かる.更にその中にあって,子どもの創 作力を重視し始めた点やより工業立国の立場が強調されている 点が違いとして認められる.

    2 手工科教材の選択

 「手工損紙・綜・粘土・凄桿・木・竹・金屡等其ノ土地二適   切ナル材料ヲ用ヒテ簡易ナル製作ヲ爲サシメ高等小學校二   於テハ製圖及女子野糞リテ開手藝ヲ簡易ナル程度二於テ併   国母クベシ」(25)

 「手工ヲ授クル際ニハ用具ノ使用方材料ノ品類性質ヲ教示ス   可シ」c25

 これは教則において規定された,教材を組織する際の拠り所 である。しかし,全国共通の標準として示されたものに過ぎず,

その内容までは明示されていない.そこで岡山は,教材選択の 要件として次の5項目を挙げ説明した.c2マ

(1)創作力を養ふに適するもの

  創作力の養成は手工科にとって重要な任務であるが,それ  は教授の方法によるだけでなく,教材の良否に負う所も大変  多い.従って次の4点に注意して教材を選択しなければなら

 ない.

a. 課題は成るべく工夫を練るのに適したものとし,ま

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