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 不公正な侵害行為の救済制度は、株主間の利害対立を背景として取締役の業務執行が行 われ、それによって少数派株主の利益が不公正に侵害された場合に、当該株主が被った利 益侵害を直接救済する制度であった。

 会社の構成員は、会社の業務が構成員の全部または一部の構成員の利益を不公正に侵害 するような方法で執行されていることを理由として、裁判所に命令の申請を提起すること

ができ、裁判所は、申請に理由があると認めるときは、訴えられた事態を解決するために、

適当と考慮する命令を発することができる。裁判所の発する命令に関しては、2006年イギ リス会社法996条(1985年会社法461条)に規定があるが、これは、例示列挙であり、裁 判所の発しうる命令は列挙された例示に限定されるというものではない。

165A.J.Boy1e,supra note(74),at pp.126 127,

1661bid.

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 この不公正侵害救済は、とくに、小規模で閉鎖的な会社に適用する上で、非常に好評で あった。それは、対象となる侵害行為の範囲および裁判所によって与えられる救済の融通 性が、不満を有する株主にとって、最も魅力的な解決方法となっていたからである。しか

し、かかる救済は好評である一方で、困難をもたらしていた。

 その第一の原因は、裁判所が不満を有する株主を救済するにあたり、被告の行為の「不 公正」性をこの制度の適用要件としているが、この不公正佳の規準は曖昧であり、何が公 正で何が不公正であるかを、個別の状況に応じて判断することにあった。

 第二に、裁判所は、適切な救済決定を行うために、関連当事者すべての行為を検討する 可能性があることから、多くの事件が裁判時間を相当要し、裁判費用を憂慮するべきレベ ルに押し上げていたのである。

 このように、不公正侵害救済に基づく訴訟は、不公正性規準の曖昧さや費用と時間がか かるといった欠点を有していたため、2006年イギリス会社法の大改正に向けて、抜本的な 見直しが行われた。

 法律委員会は、この改正にあたり、1994年および1995年にロンドンの高等法院(High Court)に保管されていた156の訴状をもとに、不公正侵害救済制度(1985年会社法459 条)に基づく申立の研究を行っている。その訴状のうち、96%が私会社に関するものであ

り、約67%は経営からの排除に関する申立であった。また、求められた救済の約70%が、

申立人の株式の買取であった。

 法律委員会は、この統計をもとに、1985年会社法459条に関して、小規模会社のための 新たな救済案を提案した。当該新たな救済案は、私会社の構成員が、会社の経営から排除

された場合または取締役を解任された場合には、裁判所の判断によって、株式買取による 救済を与える、という限定的な方法であった。

 しかしながら、この救済案に対しては、申立事由が経営からの排除に限られる点や、裁 判所の命令が株式買取に限定される点などが柔軟性に欠ける、といった批判がなされた。

 同委員会は、これらの批判を考慮して当該救済案を放棄し、これに代えて459条以下の 規定を改正し、所定の状況があれば不公正な侵害行為があったと推定する、推定規定を設 けることを提案した。つまり、株主が、会社経営への参画から排除された場合、その行為 は不公正な侵害と推定され、その推定が覆されず裁判所が申立人の持株の買取を命ずるべ きであると判断するときは、株式買取を命ずるものとする、という提案である。

 その後、この代替救済案は、詳細な検討が行われ、適用要件や訴訟手続等に関しても具 体的な提案がなされたが、結局、採用されなかった。

 採用されなかった一つの要因としては、従来から問題となっていた費用と時間がかかる という欠点が、代替救済案である推定規定の創設をもってしても、解決しないと予想され たことが挙げられよう。

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 しかしながら、最初に提案された小規模会社に限定した株式買取による救済案に関して は、法律家の間で望まれる意見もあり、採用されなかったことに対しての批判も多い。

 ところで、アメリカ法においても、不公正侵害救済と類似した制度である抑圧救済制度 が設けられているが、アメリカの抑圧救済は、州によってその救済手段が若干異なってい

る。ただ、抑圧救済は、小規模閉鎖会社を適用対象とし、その救済手段として、株式買取 による救済を裁判所が少数派株主に与えることについては、ほとんどの州が認めている。

 したがって、アメリカにおいては、法律委員会の提案した、小規模会社に限定した株式 買取による救済案と類似の制度を有している州が多数存在している167。

 法律委員会は、この改正にあたり、不公正侵害救済と類似の制度を有するアメリカ法の 研究168を行っていたことから、おそらく、アメリカ法における抑圧救済制度の実情や問題 点等が、改正案の参考になったのではないかと推測される。

 なお、アメリカ法の抑圧救済制度については、以下、第二編第一章において考察を行う。

 結局、2006年イギリス会社法の大改正において、不公正侵害救済制度の抜本的な改正は なされなかったが、株主代表訴訟に関する制定規定を整えることについては実現した。

 次章では、多数決原則の弊害を修正し、少数派株主を救済する制度として挙げられる、

イギリスの株主代表訴訟について考察を行う。

167たとえば、ニュージャージー州法は、25人以下の株主を有する株式会社において、支配 株主等が少数派株主に対し、抑圧的なまたは不公正な行為を行ったことを少数派株主が証 明した場合には、裁判所は少数派株主に株式買取による救済を与えることができることを

規定している。N.J.Stat.Am.§14A:12・7(1)(c)(2003).

168See DTI Consu1tation Pape巧Append.ix瓦at pp.259−260.

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