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第5章 斜め Mg イオン注入を用いた Halo 構造 GaN MISFET

5.3 実験結果

0 50 100 150 200

0 5 10 15 20 25 30 35

-6 -4 -2 0 2 4 6

Lg = 0.6um Wg = 100um Vd = 5V

Gate Voltage (V) 0

50 100 150 200 250 300

0 1 2 3 4 5 6 7

Lg = 0.6um Wg = 100um Vg from -6 to 6V 1V/step

Drain Voltage (V)

0 50 100 150 200

0 5 10 15 20 25 30 35

-6 -4 -2 0 2 4 6

Lg = 0.6um Wg = 100um Vd = 5V

Gate Voltage (V)

(a) (b) 図5.3.2 Id-Vd特性(a)、Id-Vg特性(b)

(a) (b) 図5.3.3 Id-Vd特性(a)、Id-Vg特性(b)

図5.3.4 Id-Vg特性の各ドーズ量の比較

図5.3.2が示すようにMgを2 × 1013 /cm2で注入したデバイスの最大ドレイン電流Idss

が190 mA/mm、最大相互コンダクタンスgmmaxが20 mS/mmという値が得られた。ま

た、図5.3.3が示すように、Mgを4 × 1013 /cm2で注入したデバイスの最大ドレイン電

流Idssが165 mA/mm、最大相互コンダクタンスgmmaxが30 mS/mmという値が得られ

た。また図5.3.4ではId-Vg特性においてMgイオン注入のドーズ量の違いを比較した ものである。Idの立ち上がりの電圧がMgのドーズ量を増やすことでプラス側にシフ トしていることが確認でき、-5V から 1.5V までシフトしていることがわかる。これ らの結果より、Mg イオン注入の有効性が確認できる。我々は以前にサファイア基板 上に成長させた p 型エピタキシャル GaN 上に同様な MISFET を作製した[4]。その

p-GaN上のMISFETと本研究の斜め Mgイオン注入を用いた MISFETを比較すると、

しきい値が同程度でありながら、デバイスの性能が大幅に改善していることが見て取

れる。p-GaN上にMISFETを作成した場合、チャネル領域はすべてp型であることか

らMISFETの性能が劣化してしまうが、Mgイオンを斜めから注入を行うことで一部

p型層を形成し、その他のチャネル領域の移動度を高いままに保つことができたこと が要因として考えられる

次にMgを4 × 1013 /cm2でイオン注入した試料のIg-Vg特性を図5.3.5に示す。

10-14 10-13 10-12 10-11 10-10 10-9 10-8

-6 -4 -2 0 2 4 6

Gate Voltage (V) Lg = 0.6um

Wg = 100um

図5.3.5 Ig-Vg特性

図5.3.5より、ゲートリークは10-10 A以下であり、非常に小さい値であることがわ

かる。これはゲート絶縁膜であるSiNを40 nmとかなり厚く堆積させたことが要因と して考えられる。ただし、絶縁膜を薄くすることでデバイスがより高性能になること が期待できるので、薄く、かつ良質な絶縁膜を堆積させることが今後の課題と言える。

次に、図5.3.6にドレイン電流のゲート長依存性を示し、ゲート長が2 μm未満のデバ

イスのしきい値をまとめたグラフを図5.3.7(a)に、ゲート長が2 μm以上のデバイスの しきい値をまとめたグラフを図5.3.7(b)に、示す。最後に、図5.3.8には過去に報告さ れた従来のMISFETの特性を比較した図を示す。

図5.3.6 ドレイン電流のゲート長依存性

(a) (b)

図5.3.7 しきい値の濃度依存性、ショートチャネル(a)、ロングチャネル(b)

図5.3.8 最大相互コンダクタンスの従来デバイスとの比較

図 5.3.6 においては、ドレイン電流はゲート長に依存していることがわかる。ゲー

ト長が長い場合、Mg のドーズ量にはあまり依存性が見られず、同じような値になっ たが、ゲート長が短い場合にやや違いが見られた。また図 5.3.7 でも同様にショート チャネル時ではMgイオン注入によるしきい値の変動も大きくなっていることがわか る。これは斜めMgイオン注入が、ゲート長が短いものにより影響を与えることを示 している。また、Mg イオン注入を行うことで注入を行っていないものに比べ、ばら つきが非常に大きくなっていることがわかる。これより、Mg イオン注入では、局所 的にn型になっていることで、しきい値に大きな変動をもたらしていることが考えら れる。Mg の注入によって導入された欠陥がドナーとしてはたらいた、又はイオン注 入機のビームラインに付着した、すす等の汚れの含まれるCやH・それらの化合物が、

Mgと同時にGaN基板へ注入されて、ドナーのように振る舞ったということが考えら れる。水素に関して言えば、注入後の熱処理でMg-HのcomplexからHを乖離できな かったかもしれない。また図5.3.8に示したように、今回作製した MISFETの重要な 性能指数であるgmmaxは、過去に報告された従来型の MISFETの中でも大きいものと なった。しかしながら HFET に比べると gm は、まだまだ小さいことが見て取れる。

デバイスの性能を高める上で、スケーリングは非常に重要な理論であり、特にゲート 長の微細化が半導体デバイスの性能を高めるための従来のアプローチと言える。ゲー ト長の微細化を行うことで、ショートチャネル効果が起こることは良く知られており、

HFETの場合、この問題を最も効果的に抑制する方法は、ゲート長とAlGaN層の厚さ

の比に相当する、アスペクト比を高く保つことである。ショートチャネル効果の影響 を無視できるようにするにはゲート長とゲート下のAlGaNアスペクト比を10~15以 上にしなければならない[5]つまり、ゲート長の微細化に伴い、AlGaN層を薄くする ことで、ショートチャネル効果を低減することができる。しかし、AlGaN層の厚みを 薄くすると電子濃度が著しく減少し、チャネル全体の電気抵抗が増加する問題がある。

つまり、AlGaN層をある程度保たなければいけないので、これ以上のゲート長の微細

化に歯止めがかかっている。

一方、イオン注入を用いた MIS 構造のデバイスでも同様にゲート長の微細化に 伴い、ショートチャネル効果は存在するが、Siデバイスと構造が似ているため、今ま での Si デバイスで培ったノウハウをそのまま使うことができる。Si デバイスで培っ たノウハウを使うことでゲート長の微細化に伴うショートチャネル効果を抑制する ことができ、さらなるゲート長の微細化ができる。つまり半導体デバイスのスケーリ ング則にならったさらなる高性能化が期待できる。今回のデバイスは絶縁膜がかなり 厚く堆積されていたことから、薄くすることや、high-k材料を用いたりするなど、ま だまだ改善の可能性があると考えられる。現在ではHFETには劣っているが、デバイ スの質の改善と前述の Si デバイスのイオン注入技術を用いたデバイスで将来的に HFETを超える可能性は十分にあると考える。

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