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ラザフォード後方散乱法による窒素イオン注入層の結晶 評価

第4章 窒素イオン注入による素子分離

4.5 ラザフォード後方散乱法による窒素イオン注入層の結晶 評価

4.5 ラザフォード後方散乱法による窒素イオン注入層の結晶

で表すことができる。またZiは入射イオンの原子番号である。単元素からなる原子密 度Nの標的に、総量Qのイオンを入射したときの深さxからの後方散乱イオン数(Yx) は、

𝑌𝑥 = 𝜎(𝜃)Ω𝑄𝑁δt𝑥 (4.5.1.3)

で表される。ここで、Ωは検出器の立体角、Nは標的の原子密度、δtxは深さxにおけ るイオンのエネルギー変化が無視できる程度の微小な層の厚さを示している。固体に 入射したイオンは、固体中で電子との非弾性散乱により徐々にエネルギーを失う。式

(4.5.1.2)に示すように、散乱断面積 σ(θ)はエネルギーに依存するため、固体表面での

後方散乱イオン数に比べ、入射イオンのエネルギーが減少する固体内部での後方散乱 イオン数は増加する。この場合の後方散乱スペクトルは、図4.5.1.2に示すように、標 的の構成元素の質量に比例したエネルギーにおいて、後方散乱イオンが検出され、こ のエネルギーが表面に相当する。低エネルギー側では、標的の内部で後方散乱したイ オンが検出される。標的内でのイオンのエネルギー損失を評価することにより、後方 散乱スペクトルのエネルギー軸を深さに換算することができる。

図 4.5.1.2 RBS測定より得られるスペクトルの模式図

5.4.2 実験目的

ラザフォード後方散乱法(Rutherford Backscattering Spectrometry: RBS)測定を用いて 窒素イオン注入により形成した非晶質層の結晶性を評価する。高濃度のイオン注入に よって表面層を非晶質化した試料に対して、結晶性を有する基板の結晶軸に整軸した 場合に測定したアラインスペクトルでは、非晶質層からの後方散乱イオン数がランダ ムイールドと等しくなる。非晶質化した試料に対して熱処理を行い、基板結晶軸に沿 って再結晶化が生じた場合、再結晶層においては基板と同様にチャネリングが生じる ため、アライン測定により得られる後方散乱イオン数は、ランダム測定における後方 散乱イオン数よりも減少する。従って、再結晶化前後のアラインスペクトルを比較す ることで、結晶性の変化を評価することが出来る。

前節において活性化熱処理後に窒素イオン注入を行うことでアイソレーション形 成が有効であると判断した。そのため本研究では、熱処理は行わずに窒素イオン注入 のみを行った場合の注入層の結晶性評価を行う。

1018 1019 1020 1021 1022

0 50 100 150 200 250 300

N : 80 keV Effective Dose 1×10

16

/cm

2

SiN GaN

Depth (nm)

4.5.3 実験条件

試料には、(0001)Al2O3基板上にundoped-GaNを厚さ0.2 μm、Mg-doped GaNを厚さ 2 μm成長させたp型GaNエピタキシャル基板を用いた。Mg濃度は1 × 1018 /cm3であ る。まずイオン注入保護膜として SiNx をマグネトロンスパッタリング装置にて厚さ

30 nm堆積した。用いたスパッタ条件はRFパワー300 W、スパッタガスN2、処理室

内圧力0.8 Paである。試料全面に、Nイオンを80 keVのエネルギーで加速し、1 × 1016

/cm2の実効ドーズ量を室温で注入した。RBS測定の観測限界や結晶欠陥の特性を考慮 し、1 × 1015 /cm2よりも1桁多いドーズ量でイオン注入を行った。イオン注入中の基 板の加熱冷却を行っていない。なお、チャネリング現象を抑制するため、ビームに対 して基板を7o傾けて注入を行った。SRIMシミュレーションよるイオン注入プロファ

イルを図4.5.3.1に示す。RBS測定は、1.5 MeVに加速したHeイオンを用いて結晶性

を観測した。

図 4.5.3.1 窒素イオンの注入プロファイル

4.5.4 実験結果

図4.5.4.1に注入エネルギー80 keV、ドーズ量1 × 1016 /cm2の注入直後の試料におけ

るRBSスペクトルを示した。図のRBSスペクトルではランダムスペクトルを黒色で 示し、アラインスペクトルを赤色で示した。図より、アラインイールドにおいて、1100

keV~1200keV 付近の膨らんでいるところが結晶欠陥を表している。欠陥の分布をガ

ウス分布で仮定し、横軸に深さをとり、結晶欠陥分布を示したものとSRIMシミュレ ーションによる窒素イオン注入欠陥のプロファイルを図4.5.4.2に示す。

図 4.5.4.1 窒素イオン注入後のRBSスペクトル

図4.5.4.2 結晶欠陥分布とSRIMシミュレーションによる欠陥のプロファイル

図4.5.4.2より、結晶欠陥の分布はおおよそシュミレーション通りであり、注入した

試料表面から 500~1000 Åの領域における注入欠陥が最も多いことが見て取れる。そ して、結晶内のおよそ 10 %は窒素イオン注入によって非晶質化していることがわか る。一方で、試料表面から0~300 Å付近は結晶欠陥が少ないということがわかる。注 入エネルギーが80 keV の場合、表面付近の結晶欠陥が少なく、そこを介したリーク 電流が発生してしまう可能性があることから、完全な素子分離をするためには、30keV との多段注入が必要となるエビデンスとなった。

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