第 1 章 の参考文献
2.3 実規模配電線を用いた実験的検討
2.3.1 実験概要
(財)電力中央研究所 塩原実験場の試験用配電線を用いて,電柱雷撃を模擬した 実規模配電線の雷サージ実験を実施した。試験用配電線を Fig. 2-21 に示す。11 本の 鉄筋コンクリート柱(以下,「コン柱」と記す)と高圧電線3条,架空地線1条が10 径間架線された線路から構成されており,亘長は430 mである。高圧電線にはOC 60 mm2,架空地線には鋼より線 22 mm2を用いており,末端の1号柱と11号柱では反射 が生じないように架空地線,高圧電線とも整合終端されている。この試験用配電線の 中央に位置する6号柱への雷撃を想定した。6号柱の装柱をFig. 2-22に示す。6号柱 は長さ12 mのコン柱(根入れ約2 m)であり,その上部に架空地線金物が取り付け られている。本論文では,架空地線金物も含めて電柱とする。コン柱の表面と鉄筋の インパルス耐電圧は 4~5 kV程度という報告がある [2-14] ことから,本実験ではコ ン柱の表面と鉄筋のスパークオーバ後を想定し,コン柱の頂部と地際で鉄筋を露出さ せ,それぞれ架空地線金物と接地(6号柱周辺に放射状に配置した6つの接地極)に 接続した。
実験回路の配置および実験様相をFig. 2-23,Fig. 2-24に示す。柱頂にバッテリー駆 動のパルス発生器(以降,「PG」と呼ぶ)を設置し,PG よりさらに鉛直上方に架線 した模擬雷道から柱頂に向けて電流を注入した。模擬雷道には直径2 mmのビニル被 覆電線を用いており,Fig. 2-23に示すように,PGから鉛直上方へ約36 mの高さまで 立ち上げ,そこから水平方向に向きを変えて遠方約10.5 mの位置まで架線し,その後 引き下げて地上にて500 Ω の抵抗で整合終端した。電圧測定に利用する零電位線は,
相互の電磁誘導を極力小さくするため,電柱および配電線の方向に対してほぼ直交配 置とし,遠方約120 mの地点にて550 Ω の抵抗で整合終端した。PGの等価回路をFig.
2-25に示す。左端の0.1 μFのコンデンサを充電しておき,水銀リレースイッチを閉じ ることで放電する。直列に接続された500 Ω の抵抗は,PGの内部抵抗を500 Ω とす るためのものであり,模擬雷道のサージインピーダンス500 Ω と合わせて,電柱から みた雷道側のサージインピーダンスは1 kΩ となる。この値は,近年,観測結果より 得られた雷道インピーダンスの値に相当する [2-6]。並列に接続された10 kΩ の抵抗 は放電抵抗であり,100 Ω の抵抗と5 pFのコンデンサは微小振動を吸収するためのダ ンパー回路である。右端のコンデンサ Cf は,注入電流の波頭長Tf(付録A を参照)
を調整するためのものであり,Cf の値を50 pF,400 pF,700 pF,1500 pFと変化させ ることで,Tf をステップ状,0.3 μs,0.5 μs,1.0 μsと変化させた。
No. 6
No. 5 No. 7
No. 4
No. 3
No. 2 No. 1
No. 8
No. 9
No. 10 No. 11
(42 m) (42 m)
(42 m)
(40 m)
(40 m)
(48 m)
(42 m)
(40 m)
(40 m) (54 m) matching resistors matching
resistors
No. 6
No. 5 No. 7
No. 4
No. 3
No. 2 No. 1
No. 8
No. 9
No. 10 No. 11
(42 m) (42 m)
(42 m)
(40 m)
(40 m)
(48 m)
(42 m)
(40 m)
(40 m) (54 m) matching resistors matching
resistors
Fig. 2-21. Test distribution line.
phase wires 10.75
crossarm
reinforced concrete pole ground wire
9.40 1.35
0.80
[unit: m]
0.80
0.80 0.55
phase wires 10.75
crossarm
reinforced concrete pole ground wire
9.40 1.35
0.80
[unit: m]
0.80
0.80 0.55
Fig. 2-22. Arrangement of pole No. 6.
(120 m) (36 m)
wire representing lightning channel
500 Ω
pulse generator (10.5 m)
No. 5 No. 7
(42 m)
(42 m)
550 Ω zero-potential wire pole-top voltage Vt
ground wire
phase wires insulator voltage Vi
reinforced concrete pole
No. 6
(120 m) (36 m)
wire representing lightning channel
500 Ω
pulse generator (10.5 m)
No. 5 No. 7
(42 m)
(42 m)
550 Ω zero-potential wire pole-top voltage Vt
ground wire
phase wires insulator voltage Vi
reinforced concrete pole
No. 6
Fig. 2-23. Experimental setup.
Fig. 2-24. Photograph of pole No. 6.
phase wires
wire representing lightning channel
zero-potential wire
reinforced concrete pole pulse generator
optical fiber E/O converter
optical fiber
2.3.1.2 実験ケース
Table 2-4に実験ケースの一覧を示す。ケース1では,電柱雷撃を模擬した実験回路
において架空地線や高圧電線がない電柱単体の状態でのサージインピーダンスを測 定する。2.3節では,波頭長約30 nsで立ち上がるステップ波状の電流(以降,「ステ ップ電流」と呼ぶ)を柱頂に注入したときの柱頂電位 Vt を測定し,得られた柱頂電 位のピーク値をその時点の電流値で除してサージインピーダンスと定義する†。
ケース2では,電柱に高圧電線3条を架線し,架空地線がない配電線のサージ特性 を明らかにする。注入電流Iの波頭長Tf を変化させたときの柱頂電位および耐雷設計 上最も重要となるがいし間電圧 Vi を測定する。また,ケース 1 と同様,電柱のサー ジインピーダンスについても測定する。
ケース3では,電柱に架空地線1条と高圧電線3条を架線し,架空地線がある配電 線のサージ特性を明らかにする。ケース 2 と同様,Tf を変化させたときの柱頂電位,
がいし間電圧および電柱のサージインピーダンスを測定する。また,本ケースでは,
注入電流が架空地線と電柱に分かれて流れることから,ステップ電流注入時の分流様 相についても測定する。
2.3.1.3 測定方法
本実験に用いた測定装置の概要をTable 2-5に示す。これより,測定系は数十 nsの 立ち上がりを十分正確に測定できるものであるといえる。
2.2 節の縮小モデル実験 [2-3] では,オシロスコープを柱頂まで持ち上げて,直接 電流および電圧を測定した。この縮小モデル実験と同様な測定方法を本実験に適用す
†2.2節によれば,ステップ電流を注入した場合,電柱の接地抵抗は比較的大きな値(200 Ω) であっても柱頂電位のピーク値に影響を与えない。後述するように 6 号柱の定常接地抵抗値 は36 Ω であり,本実験で得られる電柱のサージインピーダンス値は信頼できる値といえる。
+ 10 kΩ 100 Ω Cf
5 pF 500 Ω
0.1 μF
−
+
−
+ 10 kΩ 100 Ω Cf
5 pF 500 Ω
0.1 μF
−
+
− Fig. 2-25. Equivalent circuit of pulse generator.
Table 2-4. Test cases.
Case 1: Stand-alone pole.
Vt I
point of lightning stroke
reinforced concrete pole
Vt I
point of lightning stroke
reinforced concrete pole
Case 2: Pole equipped with three phase wires and without a ground wire.
Vt I
point of lightning stroke
Vi
phase wires reinforced
concrete pole
Vt I
point of lightning stroke
Vi
phase wires reinforced
concrete pole
Case 3: Pole equipped with three phase wires and a ground wire.
Vt I
point of lightning stroke
Vi
phase wires reinforced
concrete pole ground
wire I Vt
point of lightning stroke
Vi
phase wires reinforced
concrete pole ground wire
ると,観測者は高所作業車を使用して地上約11 m の高さでオシロスコープを操作す ることになる。この際,高所作業車の接近により柱頂付近の電磁界が乱されるため,
測定誤差が生じる。本実験では,測定時の高所作業車の使用を避けるため,柱頂にて 電流測定用CTおよび電圧測定用プローブの電気信号を光信号に変換し,それぞれ光 ケーブルを通して試験用配電線から十分離れた地点まで導き,再び光信号を電気信号 に戻してからオシロスコープで測定した。