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E 値の検討

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第 8 章 実験6 ジャンル別楽曲における E 値と残響の最適ミキシングレベルの検討

8.4 E 値の検討

8章2節3項の検討で、残響の最適ミキシングレベルについて、楽曲要因の有意性が確かめら れたので、第4章と同様に各楽曲の残響の最適ミキシングレベルとE値との関係を検討した。こ こで、個々の楽曲の残響の最適ミキシングレベルは、実験参加者による差が生じているが、第4 章と同じく、その平均値を代表値として検討することとした。

E値はE2(20)を用い、楽曲の種類別に分けて(以下、楽曲種別)、E値と残響の最適ミキシン

グレベルとの関係を検討した。表-23に、楽曲種別のE値と残響の最適ミキシングレベルの相 関係数と有意確率を、図-42にE2(20)と残響の最適ミキシングレベルの散布図を示す。

表-23 E2(20)値と残響の最適ミキシングレベルの相関係数と有意確率 楽曲種別 相関係数 r 有意確率(両側)p

1 全楽曲 r = -0.478 p = 0.010 < 0.05

2 オーケストラ楽曲 r = -0.745 p = 0.002 < 0.01 3 アンサンブル楽曲 r = -0.717 p = 0.004 < 0.01 4 トランペット楽曲 r = -0.931 p = 0.067 > 0.05 5 チェロ楽曲 r = -0.839 p = 0.018 < 0.05

トランペット楽曲は、E値と残響の最適ミキシングレベルとの相関係数が大きいが、サンプル 数が少なかったこともあり、危険率5%で相関の有意性が棄却された。その他の楽曲は危険率5%、

もしくは1%で相関が有意である。

図-42に、オーケストラ楽曲は丸印(●)で示し、アンサンブル楽曲は四角印(■)で示して いる。アンサンブル楽曲はさらに細分化し、チェロ楽曲は、四角印に重ねられた三角印(AEA)、ト ランペット楽曲は四角印に重ねられた菱形(AEA)として示したところ、グループ毎に大きな相関 を持っていることが判る。従って、E値は4章4節で検討したように、残響の最適ミキシングレ ベルの決定に関する、楽曲の特徴を含むことが確かめられた。

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図-42 E値と残響の最適ミキシングレベルの関係

また、それらグループは、図-42において残響の最適ミキシングレベルの縦軸方向、すなわち グラフの上下方向でグループが分離していることが判った。E値は、残響の最適ミキシングレベ ルの決定に関して、同種の楽曲では残響の最適ミキシングレベルとの間に大きな相関を持つが、

異種楽曲間では良い対応関係を持っていない。しかし、グループ分離が明確なことから、残響の 最適ミキシングレベルに関わる楽曲種別を分離できる特徴量の存在が暗示される。

E値は、楽曲の音響信号の経時領域の特徴を数値化したものであるが、楽曲種別間の特徴は、

それら楽曲編成が、グラフの縦軸方向において、上からオーケストラ、小編成、チェロ、トラン ペットと並ぶことを考えると、グラフの上に位置する楽曲はスペクトルが広範囲にわたり、下に 位置する楽曲はスペクトルの範囲が狭い傾向があるものと考えられる。すなわち、楽曲種別間の 特徴量は、周波数構造に関する特徴量として検討可能と考えられる。

Beetho S7

Arle

Bruck S8B Bruck S8C

Ruslan

VC Kod S8 VC anoy

QR America

Water Mahl S1

Mahl_S5

Mend S3

Figaro A

Figaro B

PizzPolk Schosta 5

Traviata A

Traviata B

Tr Vol A

Tr Vol B Tr Hydn Con

Tr Polka Debussy

VC Paga

VC Weber VC Gavot

VC Variat

VC Tchiko r = -0.48

r = -0.75

r = -0.93 r = -0.84

-14 -12 -10 -8 -6 -4 -2

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

Preferable Reberberation Mixing Level

E2(20) index

Orchastra Ensenble Trumpet VC

Regression Line of All Regression Line of Orchestra Regression Line of Trumpet Regression Line of VC

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図-43 各楽曲のスペクトル等高線とFFTによる平均周波数特性

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そのため、まず図-42において縦軸方向と横軸方向について、なるべく均等となるような楽曲 音源を選び出し、周波数構造を調べた。選んだ楽曲は、03_Bruckner_Sym8_B、11_Mozarto_Figaro_B、 12_Strauss_PizziPolka、13_Schostako_Sym_No5、14_Verdi_Traviata_A、16_TrumpetVoluntary_A、 17_ TrumpetVoluntary_B、19_Trumpet Polka、20_Debussy_Prelude、25_Kodaly_Cello Sonata8、

27_ViolinCello_anonymousの11楽曲で、各楽曲の周波数構造を、0.1秒毎に中心周波数が50Hz ~

10kHzの間について1/12oct分析し、横軸に時間をとった等高線グラフとして図-43に示した。

また、0.1秒毎FFT周波数特性を楽曲の全長について平均した平均周波数特性を併記すると共に、

図-43の右上に図-42を簡略化したガイド図を設け、それぞれの楽曲のE値と残響の最適ミキ シングレベルの関係が判るように配慮した。

図-43に示した等高線グラフは、スペクトル成分のレベル増加と共に、白 → 緑 → 橙色と表 示され、山の部分が橙色、谷の部分が白色となる。図-42においてE値が約1の各楽曲につい て等高線グラフを検討すると、縦軸方向の上に位置する03_Bruckner_Sym8_などの楽曲の等高線 グラフは、等高線の高い部分が一様に、すなわちスペクトルが全体域に渡って均一に現れ、谷の 部分が少ないという傾向がある。縦軸方向の下に位置する17_ TrumpetVoluntary_Bなどの楽曲は、

等高線が不均一、かつ線状にスペクトルが偏り、谷の部分が多く現れるという傾向がある。

また、図-42において、横軸方向の左側に位置するE値の小さい14_Verdi_Traviata_Aなどの 楽曲の等高線グラフは、線状の模様が水平方向に濃く現れるのに対し、横軸方向の右側に位置す るE値の大きい12_Strauss_PizziPolkaなどの楽曲の等高線グラフは、線状の模様が垂直方向に濃 く現れる。この模様変化は、図-42において、横軸の左側に位置する楽曲ほどスペクトルの経時 変化が少なく、横軸の右側に位置する楽曲ほどスペクトルの経時変化が大きいことに対応する。

スペクトルが偏り、等高線の谷の部分が多い楽曲は、残響を付加すると、楽曲のスペクトル成 分の少ない谷の部分に残響成分が埋まることによって、同時マスキング、経時マスキングとも生 じにくくなって、残響成分が聴こえやすくなると考えられる。その結果、そのような楽曲は残響 の最適ミキシングレベルが小さくなっていると考えられる。

なお、E値は、全帯域における信号エンベロープと仮想残響のエンベロープの比で、経時方向 の信号レベル変動の特徴量ともいえる。図-43のスペクトル等高線グラフでも、経時方向は各周 波数成分のレベル変動を現しているが、経時領域の特徴はE値で表現できるので、周波数領域の 特徴量として、楽曲全長における平均スペクトルの各周波数成分の偏差を検討する。

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