第 5 章 実験3 一般実験参加者による楽曲と再生レベルを変えたときの E 値と
5.2 分析
まず再生レベル、楽曲の2因子について一般線型モデルの反復測定手法(SPSS)により分散 分析を行い、被験者内効果について表-9の結果を得た。再生レベル因子、楽曲因子は、危険率 1%でそれぞれ主効果の有意性が認められ、交互作用は無いと判定された。
表-9 実験3の分散分析結果
因子 F値 有意確率 p
再生レベル因子 F(2,28) = 31.082 p < 0.01 楽曲因子 F(15,210) = 17.611 p < 0.01 再生レベル×楽曲 F(30,420) = 1.289 p > 0.05
図-22に楽曲因子の主効果を示す。エラーバーは95%信頼区間である。この図より、棒グラ
フの01~05(図にSoloと表記)で示される独奏楽器楽曲の方が、10~16(図にOrchestraと表
記)で示されるオーケストラ楽曲に比べて残響の最適ミキシングレベルが小さい傾向が判った。
以後の検討では、個々の楽曲の残響の最適ミキシングレベルは、実験参加者による異なりが生 じているが、その平均値を代表値として検討することとした。なお、残響の最適ミキシングレベ ルの楽曲毎平均値は、表-8に記載した。
第5章 実験3 一般実験参加者によるE値と残響の最適ミキシングレベルの関係
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図-22 楽曲因子の主効果
図-23 再生レベル別の 楽曲因子の主効果
図-23は再生レベル別に楽曲の主効果を示したものである。このグラフより、各楽曲の残響の 最適ミキシングレベルは、再生レベルが大きくなると小さくなる方向へ変化することが判る。こ こで図に示した楽曲毎の負の傾きの直線は、それぞれの楽曲における再生レベルと残響の最適ミ キシングレベルの回帰直線である。
これら回帰直線の勾配は楽曲によって異なるが、楽曲要因の有意性を確かめるため、実験参加 者の個人別に回帰直線の勾配を求め、統計ソフトのSPSSによる一般線型モデルの反復測定手法
-15 -10 -5 0 5
Preferable Reverberation Mixing Level (dB)
Solo Ensaemble Orchestra
-20 -15 -10 -5 0 5
Preferable Reverberation Mixing Level (dB)
Reference -10dB Reference Reference +10dB
第5章 実験3 一般実験参加者によるE値と残響の最適ミキシングレベルの関係
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によって分散分析を行ったところ、その勾配に関する楽曲の主効果は、危険率5%(F[5,225] = 1.654, p = 0.062 > 0.05)で棄却された。従って、これら勾配が、楽曲毎に異なるのは、楽曲由来 の要因によるものではないと考えられる。
次に、再生レベルと、全ての楽曲における残響の最適ミキシングレベルの平均値との相関を、
図-24に示す。その相関係数はr = -0.99(p=0.035 < 0.05:片側)で有意と検定され、再生レ ベルが4dB変化すると残響の最適ミキシングレベルがおよそ1dB変化することが示された。
再生レベルによって残響の最適ミキシングレベルが変化するということは、聴取時の再生レベ ルが決まらないと、残響の最適ミキシングレベルが求められないことを意味しており、今までの 録音技術では想定していなかったことである。また、制作者側においても、制作スタジオなどの 再生条件が、残響のミキシングレベルに影響することを意味しており、再生レベルを一義的に決 めておく必要性が判明した。
経験上、ミキシング時のモニターレベルを大きくすると、電子残響装置に設定した残響時間が 同じなのに長く感じることがある。この原因は、再生レベルが上昇することで、環境騒音にマス キングされていた残響成分が聴こえ、聴覚に知覚される残響時間が相対的に長くなり、残響感の 増大につながると考えられる。
図-24 全ての楽曲における残響の最適ミキシングレベルの平均値と再生レベルの関係
y = -0.24 x -9.27 r = -0.99
-15 -10 -5 0
-15 -10 -5 0 5 10 15
Preferable ReverberationMixingLevel (dB)
Relative Reproduction Level (dB)
第5章 実験3 一般実験参加者によるE値と残響の最適ミキシングレベルの関係
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本実験では、再生レベルを変えたときの残響の最適ミキシングレベルを求めたところ、再生レ ベルの増加に伴い残響の最適ミキシングレベルが減少するという負の相関を持つことが判った。
このとき、各再生レベルにおいて残響が最適にミキシングされているときの残響感は、最適な残 響感として一定であると考えられる。従って、本結果は、残響感が一定となるような再生レベル と残響の最適ミキシングレベルには負の相関があり、一定の残響感とするためには、再生レベル が大きいほど残響のレベルを減ずる必要がある、と言い換えることができる。
D. Leeによれば、残響を含んだ刺激音源において、残響感が一定となるような呈示音圧と残響
時間の関係を調べた結果、負の相関を持つ、すなわち一定の残響感とするためには、呈示レベル が大きいほど、より短い残響時間とすることが必要であることが示されている [26] が、本結果 と合わせて、残響感が一定であるという条件を満たすとき、呈示音圧と、残響時間、残響のレベ ルそれぞれが、負の相関関係にあることが判った。より詳細な検討のため、第6章で再生レベル を5段階に設定した実験について考察する。