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実験参加者および実験手順

3.2 方法

3.2.5 実験参加者および実験手順

実験参加者として,日常的に運転をしている一般ドライバ78名(20代,30~40代,50代の男 女各 13 名ずつ)を対象とした.本実験では,参加者に予告なく,視覚的に切迫した場面を提示す るため,参加者が過度な緊張による身体の不調をきたすこと,またパニックによる不測の運転操作 を行うことが懸念された.そこで,第三者機関(専門医,弁護士)を交えて実験計画を検討し,以 下の手順で実施することにした.

まず,参加募集の際に循環器系の疾患や喘息,脳梗塞,精神疾患などを患っている方を事前スク リーニングした.また,パニックによる不測の行動に備え,同乗する実験者が即座に操作できる補

LED点灯

-1.5s -0.5s 0s

仮想前方画像

(警報呈示)

1.8s 1.5s わき見タスク

(数字表示) カメラ前方画像

ドライバ ブレーキ開始

警報開始

(TTC=1.8s)

カメラ前方画像 ドライバ

視線戻し開始

被害軽減ブレーキ作動 ブレーキ無し(TTC=0.6s)

1.2s ドライバ

脇見タスク開始 ドライバ行動

前方映像

タスク

システム 衝突タイミング

(ブレーキ無し)

助ブレーキとエンジン停止スイッチを設けた.さらに,危険場面への切り替えは,テストコースの 中でも周辺に構造物のない広い場所で実施することにした.

図3-7に実験手順を示す.はじめに,参加者へ書面と口頭により,実験内容や手順,注意事項の 説明を行い,参加同意書への署名を求めた.図3-8に示す「説明シート」①~④を用いて,以下の ような教示を行った.

① 実験の目的

・ 現実に起こりうる交通場面における運転行動を調べること

・ ディスプレイ画面でも,距離感をつかんで適切に運転できるかを調べること

② 走行方法

・ 先行車に追従してコースを走行すること

・ 先行車は40km/hを上限に走行し,減速・停止する場合もあること

・ 走行中に,ときおり脇見タスクを行うこと

・ 安全運転を最優先にすること

③ 脇見タスクについて

・ 脇見タスクは,メータパネル部に設置されたタスク開始合図のLED点灯後開始すること

・ 助手席足元部のモニタに0~9の数字が9回表示されること

・ 最初に呈示された数字が,その後何回呈示されるかを数え,口頭で回答すること

④ 情報・警告の表示方法と意味

・ 走行中,運転に役立つ「情報」や「警告」が告知音とともに提供される場合があること

・ 情報や警告は,メータパネルに設置されたディスプレイに表示されること

上記のように,実験目的の説明を衝突警報に特化したものではなく,現実に起こりうる交通場面 での運転行動を調べることにすることで,実験参加者がハザードの出現を予測しにくい状況を設定 した.また,支援用モニタには,衝突警報を含めた全5種類(工事情報,一時停止情報,交差車両 注意喚起,停止車両注意喚起,衝突警報)の支援情報が提供される可能性があることを説明し,各 表示と音を運転開始前に体験する機会を設けることで,衝突警報の実験であることを予測しにくい ように配慮した.また,衝突警報は切迫した場面に作動する作動頻度の低い装置であることもあり,

装置を深く理解した上で作動を経験するユーザは少ないと考え,上記のように複数の情報の中に含 めた説明で,効果予測のための実験の教示としては妥当と考えた.なお,参加者には安全走行を最 優先にし,安全に運転できると思う範囲で脇見タスクを行うよう指示した.

教示を終えた後,参加への同意が確認されたドライバは練習走行を行った.練習走行は危険場面 再現車の運転に慣れるためであり,実験コースを先行車に追従しながら10分程度(3周~4周)走 行した.練習走行の最後に,停止した状態でわき脇見タスクの練習を行った.練習は,3問連続し

て正答できるまで繰り返し実施した.

実験走行においても,練習走行と同様のコースを先行車に追従して 10分程度走行した.走行コ ースの直線区間において,脇見タスクを実施し,タスク中先行車の挙動が定常走行の場合と,緩や かに減速・停止する場面を設けた.これにより,実験参加者が脇見タスクへ没頭することを抑制し た.実験走行 4 周目において,脇見タスク開始と連動して,前方映像を警報提示場面に切り替え,

ドライバの衝突警報への対応行動のデータを計測した.1回目のデータ取得後,以下に示す質問項 目について内省報告を得た.

• 警報音に気がついたか

• 警報表示に気がついたか

• どのような警報内容であったか

• 警報内容はどこから理解したか

内省報告の取得後,次は別の情報や警告が出る可能性があることを示唆した上で,続けて走行2 回目の実験走行を実施した.2走行目においては,脇見タスクを1度行い,次の脇見タスクで2度 目の警報提示場面を実施した.当該走行は,衝突警報を1度経験しているものの,同じハザードが 出現することを予測しにくいような配慮をした.走行2回目の終了後,1走行目後と同様の内省報 告を得て,実験を終了した.

図 3-7 実験手順

図 3-8 教示シート