7.3 結果および考察
7.3.3. 可視車両の有無が与える影響
図 7-9 進入速度
(6)ハザードの出現を予測の高低による影響のまとめ
ハザードの出現を低く予測したドライバは,交通状況から交差車両は来ないだろうと予測するた め,状況に対する危険度を低く評価し,安全に運転できる自信は比較的高く,速度が高い状態で交 差点へと接近していた.支援情報が提示されると,情報の具体性に関わらず,予測が改善されると ともに安全運転への自信が低下した.ただし,情報に対する信頼感は低く,危険度の評価の低さに も変化はなかった.I2およびI3の具体的な支援情報が提供された場合,交差点接近速度は抑制さ れたが,I1の抽象的な情報での速度抑制効果は小さいことから,具体的な情報を提供することが望 ましいと考えられる.
見えない車両の出現確率を低く評価したと考えられる.一方,I3「交差車両2台接近中」が提供さ れた場合には,見えないどこかにもう1台がいるのではないかという認識が高まった可能性が高い.
図 7-10 交差車両出現確率の評価値
(2)危険度
主観的危険度評価について,条件ごとの評価点の平均値および標準偏差を図 7-11 に示す.分散 分 析 の 結 果 , 可 視 車 両 の 有 無 と 予 測 の 高 低 お よ び 支 援 情 報 に よ る 交 互 作 用 が み ら れ た
(F(1,19)=8.22, p<.01)ことから,各水準間の多重比較を行った.予測低群は,可視車両がいる状 況でI2情報を受けた場合,および可視車両がいない状況でI3情報を受けた場合に,危険度を低く 評価した.
予測低群のドライバは,交差車両の出現可能性を低く評価した状況において危険度も低く評価し た.
図 7-11 主観的危険度 0
20 40 60 80 100
可視車両なし 可視車両あり 可視車両なし 可視車両あり
I2 I3
交差車両出現確率の評価値(%)
情報の種類と可視車両の有無
予測高群 予測低群
** ** **
SD Mean
**:p<.01
* :p<.05
1 2 3 4 5 6 7
可視車両なし 可視車両あり 可視車両なし 可視車両あり
I2 I3
低←主観的危険度→高
情報の種類と可視車両の有無
予測高群 予測低群
* *
SD Mean
**:p<.01
* :p<.05
(3)自己評価スキル
交差点を安全に通過できる自信について,分散分析を行ったところ,主効果および交互作用はみ られなかった.実験条件として設定した状況では,可視車両の有無が自己評価スキルに影響しない といえる.
(4)信頼感
支援情報に対する信頼感について,条件ごとの評価点の平均値および標準偏差を図7-12に示す.
分散分析の結果,可視車両の有無による主効果がみとめられ(F(1,19)=20.04, p<.01),可視車両が いる状況の方が,いない状況よりも情報に対する信頼感が有意に高かった.また,予測の高低によ る主効果にも有意傾向がみられ(F(1,19)=7.51, p<.05),予測低群は,予測高群よりも信頼感が低 かった.
可視車両がいる状況では,I2およびI3の「交差車両」を知らせる情報を支持する交通状況であ ることから,情報に対する信頼感が高まったと考えられる.
図 7-12 情報の信頼感
(5)進入速度
交差点約 20m 手前地点の速度に関して,分散分析を行った結果,可視車両の有無による主効果 がみとめられ(F(1,19)=5.09. p<.05),可視車両がいない場合にはいる場合よりも速度が有意に低 かった.
分散分析の結果で有意差はみられたものの,いずれの条件も平均値は20km/h以下と速度は低か った.可視車両がいない状況で,ハザード情報が提供された場合,ドライバの不安感が高まったこ とで速度が低下した可能性が考えられるが,今後より詳細に検討する必要がある.
0 20 40 60 80 100
可視車両なし 可視車両あり 可視車両なし 可視車両あり
I2 I3
低←情報の信頼感→高
情報の種類と可視車両の有無
予測高群 予測低群
**
* SD Mean
**:p<.01
* :p<.05
(6)可視車両の影響のまとめ
可視車両がいる場合,情報を支持するような交通状況であるため,信頼感が高まることが示唆さ れた.ただし,可視車両の他に,見えないハザードが存在するにも関わらず,I2「交差車両に注意」
のように台数が示されていない情報を提供すると,ドライバは情報の指す交差車両を可視車両のみ と認識し,見えないハザードの出現が予測しにくいことが明らかになった.このような誤解を防ぐ ためには,ハザードが複数台いる可能性を示す配慮が必要であると考えられる.