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契約関係に根拠を求める見解

ドキュメント内 フランス保証制度の研究 (ページ 168-177)

第 2 章 担保保存義務と債権者の融資取引上の民事責任との交差

3 契約関係に根拠を求める見解

1)契約責任(responsabilité contactuelle)

契約責任説は、不法行為責任説を批判する側から主張されるもので、仏民 2314 条のサ

689 不法行為責任説の内容については、Simler, supra note 32, no 798, pp. 797-798を参照。

690 Cass. civ., 17 août 1836, S., 1836. 1. p. 633.

691 Cass. req., 20 mars 1843, S., 1843. 1. p. 459.

692 Cass. req., 18 mars 1901, S., 1903. 1. p. 137, note Albert Whal.

693 Simler, supra note 32, no 798, p. 797.

694 Mouly, supra note 32, no 424, p. 527.

695 Mouly, supra note 32, no 422, p. 526.なお、山野目教授はこの点、「一三八二条は不法行為の一 般的成立要件を定める規定ではあるものの、担保保存義務の根拠を不法行為責任に求める考え 方が学理的に深められた考察に基づくものであるかは疑わしい。むしろ、保証人に損害が生じ な か っ た 場 合 に は 二 〇 三 七 条 に 基 づ く 免 責 が 認 め ら れ な い こ と を 説 明 す る た め に 不 法 行 為の 要件論を借用したものであるというべきであろう」と指摘する(山野目 ・前掲注(57)129 頁 参照)。

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ンクションは債権者の契約上のフォートに基づいて生じるとする見解である696。契約責任 説は、仏民 2314条に関して、債権者は、保証人が債権者の有する優先弁済権に将来代位す ることができるように、その権利を保全することを暗黙のうちに合意し、それを守る信義 則上の義務を負っていると説明する697。仏民 2314 条の根拠を契約に求めることで不法行 為責任説が抱える免除特約の問題は回避される。

しかし、同説に対しては、①保証契約は片務契約であり双務契約より生じる契約不履行 のサンクションが債権者に課されるのはおかしい698、②担保の目的の 1つは信用の補完で あるところ、債権者は自由にこれを処分できない契約上の義務負っているというのは担保 の性質に反する699、③債権者が保証人にとって有益な優先弁債権をサンクションなしに放 棄することができないからといって、債権者はこれらを保全する契約上の義務を負ってい るわけではない、④保証人は、他の担保提供者がいる、または、弁済後に代位できるから という理由で保証契約を締結するわけではない、などの批判が加えられている700

2)同時履行の抗弁または契約不履行に基づく解除に根拠を求める説

仏民2314条は、不履行による解除、または、同時履行の抗弁権(exceptio non adimpleti contractus)の一種であるとする見解である。この見解は、まず、保証契約の性質を片務契 約ではなく双務契約と捉えることから出発する。すなわち、仏民 2314条の起源である金額 貸与の委任と同様に、保証契約においても、保証人が保証債務を履行する義務を負う一方 において、債権者は保証人に対して担保保存義務を負うという双務的関係が成立している と説明する701。その上で、債権者が担保保存の義務を履行しない場合には、双務的関係に したがって、保証人は保証債務の履行につき同時履行の抗弁を主張し、または、債権者の 契 約 不 履 行 に 基 づ い て 保 証 契 約 の 解 除 を 主 張 す る こ と が で き 、 こ の サ ン ク シ ョ ン を 仏民 2314 条が定めていると説明する702。本説に対しては、契約責任説に対する批判がそのまま

696 Planiol et Ripert, supra note 610, no 1560, pp. 1005-1008 ; Beudant, supra note 675, no 102, pp.

107-108.

697 Beudant, supra note 675, no 102, pp. 107-108.

698 Aynès et Crocq, supra note 27, no 281, p.122. 一方、Beudant, supra note 675, no 102, pp. 107-108 は、このような指摘を した上で、なお、契約責任説の立場に立つ。すなわち、債権者が信義則 に 基 づ い て 課 せ ら れ る 黙 示 的 か つ 二 次 的 な 約 束 に 違 反 す る こ と に そ の 責 任 を 求 め る こ と がで きると指摘している。

なお、山野目教授によると、信義則に基づいて 2314 条の発生根拠を説明する考え方は、契 約責任というよりも不法行為責任と契約責任との間に「より大きな親和性を持つものとして整 理しておくのが適当であ る」とされる。その理由 としては、「信義則上の 義務というものは、

契約に基づいて生ずる義務なのではなく、当事者間の具体的契約関係を超えたところから一般 原理に基づいて課せられる義務である性格を持つことに求められる」からであるとする(山野 目・前掲注〔686〕129頁以下)。

699 Mouly, supra note 32, no 426, p. 529.

700 Simler, supra note 32, no 798, p. 798 ; Simler et Delebecque, supra note 4, no 260, p. 237、山野 目・前掲注(57)130頁以下参照。

701 Colin et Capitant, supra note 684, no 1419, p. 904.

702 G. Baudry-Lacantinerie et Albert Wahl, Traité théorique et pratique de droit civil, des contrats

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当てはまるが、さらには、本説固有の問題として、同時履行の抗弁権が債務の一時的な停 止の効果しかもたらさないのに対して、仏民 2314 条は保証債務の免責をもたらすという本 質的な違いを説明できていないとの批判が加えられている703

3)コーズ(cause)説

「変幻自在な」コーズに根拠を求める説である704。コーズ説は、かつて、破毀院が、担 保の存在は保証人の「推進的なコーズ(cause implusive)」705であると判断した706ことを発 端として形成された学説である。実際、債権者が主たる債務者に対して担保権を有してい るのかどうかは、保証人が保証契約を締結する際の重要な動機の一つであることが多い。

つまり、保証人は、最終的には保証債務を履行しなければならないリスクを覚悟しなけれ ばならない一方で、債権者が担保権等を適切に保全してくれることを期待しているのであ る。また、同説は保証契約の片務的性質にもなじみやすく、かつ、仏民 2314 条の対象とな る債権者の優先弁済権が保証契約の締結時にすでに存在しているか、または、その取得が 確 定 的 に 予 定 さ れ て い な け れ ば な ら な い と い う 判 例 お よ び 学 説 の 立 場 と も 整 合 的 で ある

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しかしながら、同説に対しては次のような批判がなされている。すなわち、すべての場 合において債権者の権利に代位できることが保証契約のコーズであ るとまで言うことはで きず、また、契約を決定するすべての要素がコーズの性質を有しているわけではない。コ ーズの法律上の概念は、目的、すなわち、締結された契約の原因を意味している。これを 保証契約についてみると、保証契約は、通常、主たる債務者に融資などを受けさせること を目的としているのであって、代位することを目的として保証人は義務を負うのではない。

したがって、代位できることが保証人にとってのコーズである と言うことはで きな い708

4)条件(condition)説

条件説とは、保証人は、将来、自分が代位することがで きるであろう債権者の優先弁済 権について、債権者が適切に保全するという条件の下でしか 保証債務を負っていないとみ

aléatoires du mandate, du cautionnement de la transaction, 3e éd, 1907, Librairie de la société du receil J.-B. sirey et du journal du palais, no 1180, pp.619-620 ; Colin et Capitant, supra note 684, no 1419, p. 904.

703 Simler, supra note 32, no 798, p. 798.

704 Simler, supra note 32, no 798, p. 798.

705 訳語については、中村ほか・前掲注〔37〕66頁を参考とした。

706 Cass. req., 5 déc. 1843, S., 1844.1. p. 71.

707 Simler, supra note 669, no 802, pp. 716-717.

708 Simler, supra note 32, no 798, p. 798.さらに、シムレール教授は、1984年法制定前は仏民 2314 条は特約によって排除できたのであり、代位できることがコーズであるというのであるならば、

特約で排除できるなどということは想像しがたいことであると指摘する(Simler, supra note 669, no 802, p. 717.)。

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なすという説である709。シムレール教授は、同説を保証契約の片務的性質とも矛盾せず、

かつ、仏民 2314条の対象となる優先弁済権が保証契約締結時に存在していた、または、確 定的に予定されていたものに限られているという点とも整合性がとれており、優れた学説 であるとしている710。代位の期待可能性が保証契約の決定的な要因のひとつであるという 理由から、同説に対して親和的な態度を示した破毀院判決もある711

しかしながら、①仏民 2314 条による免責を受けるためには債権者のフォートが要求さ れていること、②条件による解除の効果は必然的に契約の完全な解除の効果をもたらすこ ととなるが、同条による保証人の免責は保証人が受けた損害の範囲にとどまるということ などの点は、条件説からでは説明できないとされる712。さらに、1984 年法によって 2314 条が強行法規となった以上は、もはや存立できない学説であるとされる713

5)法定失権(déchéance légale)

法定失権説とは、仏民 2314 条による保証人の免責は債権者に課せられる信義則と衡平 によって正当化される法律上の失権(déchéance)であるとする説であり、クリスチャン・

ムーリー(Christian Mouly)教授によって主張されたものである。ムーリー教授は、担保 保存義務について、まず、「信義則と衡平の2つの概念は、一方においては当事者の一般利 益によって、他方においては、保証契約の附従性によって強化される」とした上で、「債権 者が、優先権の存在によってより厳格なものとされる信義誠実義務(devoirs de bonne foi et

loyauté)に違反した場合に、衡平に基づいて保証人を予め保護するために、立法者により

債権者に課せられた失権」であると説明する714。1984 年法によって、仏民 2314 条が強行 法規化されたことにより、この学説は非常に説得力を持つものとなった715

しかしながら、これに対しては、①仏民 2314 条においては、文言上、優先弁済権につ いていかなる種類の制限も行ってないにもかかわらず、保証人の免責を生じさせるものは 原則として保証契約締結時に存在していた必要があること、②仏民 2314 条による保証人の 免責は損害と比例するということなどは、信義則や衡平からでは説明がしにくい との批判 がなされている716

5 まとめ

仏民 2314 条の法的根拠に関する議論は様々なされているものの、現在においても、な

709 Philippe Simler, La renociation par la caution au benefice de l’article 2037 du code civil, JCP G, 1975.I. 2711, no 18.

710 Simler, supra note 709, nos 19-21.

711 Cass. 1re civ., 24 févr. 1982, JCP G, 1982. IV. 168.

712 Aynès et Crocq, supra note 27, no 281, p.122.

713 Simler et Delebecque, supra note 4, no 260, p. 237; 山野目・前掲注(57)132頁.

714 Mouly, supra note 32, no 455, pp. 555-556; Cabrillac et Mouly, supra note 32, no 304, p. 191.

715 Simler, supra note 669, no 804, p. 718.

716 Simler, supra note 32, no 798, p. 799 ; Simler et Delebecque, supra note 4, no 260, p. 237.

ドキュメント内 フランス保証制度の研究 (ページ 168-177)