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大連・上海・杭州における現地調査の報告

ドキュメント内 中国の海洋政策の日本 (ページ 95-126)

第7章  中国の造船

三  大連・上海・杭州における現地調査の報告

 

〔はじめに〕 

本研究においては現地における担当者に直接会って教示願うことが必要と思われた。そ こで現地の船舶会社・港湾、港湾施設、水路、造船所等を見聞し、且つ海事関係者にヒア リングを行うべく、平成 17 年8月 21 日から 28 日の間(実質6日間)大連、上海、杭州 の関係先を訪問しヒアリングを行うと共に可能な限り見学を行った。 

このような調査を行うには全く不案内であったことから、調査の趣旨を伝え国土交通 省より JETRO に出向し JETRO 上海事務所船舶機械部長である赤星貞一氏にアポイントメン ト等の手配、調査の流れの組立等をお願いし、且つ全行程同道していただくという最大の 便宜をはかっていただいた。 

また元上海領事館領事であり現海上保安大学校助教授である奥武氏を研究協力者として、

また通訳兼文献収集等のため同道をお願いした。 

また赤星氏は部下である劉京華氏を同道していただいたおかげで、まことに細い面まで 完璧な連絡が可能となり、中国語ができないのは私一人という贅沢な布陣で調査を行うこ とができた。その意味でヒアリング内容はかなり正確なものであると思われるし、またか なり厖大なものになった。とはいえ早口で多くを話して下さるカウンターパートの方々の 訳を日本語に書き留めたのは私であり、どうしても一部不正確な面もあるということにつ いて御了承いただきたい。 

それにしても本調査は赤星氏による綿密な計画と根まわしがなければ何もなし得なか ったであろううし、またそれ以上にかつて笹川フェローとして日本で学ばれた学兄が、か なりの地位にのぼっておられ、それらの方々は大変親身に協力して下さった。正に平和的 な国際協調、援助が確実に実を結び、今後のあるべき方向を成果として現実に目の当たり にすることができ、そのことの方がより強い感銘となって心にやきついている。 

著述の場としては、不適切であるかも知れないが、日本財団・東京財団そして海洋政 策研究財団のすばらしさと力をしみじみと、かみしめた調査であったことを付記しておき たい。 

中国(大連・上海・杭州)調査出張日程      平成 17 年8月   

                                                     

27日(土) 杭州市内視察後、上海へ

資料の不備、訪問の内容等チェック  JETRO 側にさら にお願いする資料の集収等打合せ

28日(日) 上海発 広島帰着 21日(日) 広島空港発

大連着      JETRO赤星貞夫氏、劉京華氏と合流、

以後の調査の進行予定について打合せ

22日(月) 午前        大連海事大学訪問  ヒアリング調査 午後        大連海事大学施設見学

操船シュミレーター、水難救助訓練用プール等 23日(火) 大連新港区訪問  ヒアリング調査及び見学

岩壁およびコンテナヤード、荷さばき場、引込 鉄道、コンテナ運送用道路の建設現場等を見学 24日(水) 大連発

上海着    (中露の軍事演習のため大幅に離陸がおくれ上海着そ の分遅延) 

夕刻        上海港口管理局訪問  ヒアリング調査 25日(木) 午前        JETRO上海訪問、

資料調査法令検索資料のコピー 以後の打合せ

午後        上海海事大学訪問  ヒアリング調査

26日(金) 午前        上海から杭州への沿海諸施設、埋立て等の沿岸沿の 諸設備、配置等を見学しながら杭州の東風造船所訪 問

ヒアリング調査、造船所見学

 

調査出張メンバー  呉大学教授      廣瀬肇 

海上保安大学校助教授      奥 武(通訳兼任) 

JETRO 上海代表所         赤星貞夫  舶用機械部長  JETRO 上海代表所         劉京華  船用機械部部長助理 

(通訳兼任、現地マネージング) 

訪問先及び面接者       

〔大連海事大学〕 

大連海事大学  国際合作与交流処副処長    楊伝勇 

〃         法学院教授      王秀芬 

〃         交通運輸管理学院港口興航運研究所  副教授・王杰 

〃         航海学院  副教授(笹川フェロー)  鮑君忠 

中国人民共和国海事局船舶監督処港口国監督協調官(笹川フェロー)  李玉衡 

〔大連新港区・大連コンテナターミナル有限公司(DCT)〕 

大連コンテナ埠頭有限公司マネージャー   趙歡 

〔上海市港口管理局〕 

副局長  李文輝 

科技和外事処  助理調研員  田暢 

〔上海海事大学〕 

上海海事大学  国際交流学院院長    徐大振   

〃         教務処処長      楊万楓 

〃         商船学部助教授(笹川フェロー)  胡志武  上海法亞航運有限公司主管(中日経営部)        楽家彪  上海航運交易所科長      王嵐 

〔杭州〕  東風造船 

杭州東風船舶製造有限公司  総経理・董事(取務役)    鄭斌          〃      衛生管理部長      温瑋 

㈱中西機械工業所  中国事務所    王樹  長島造船㈱取締役設計部長        長井祐介 

浙江省人民政府外事弁公室(パスポート査証処)    処長      羅衛平  処員      湯志豹 

 

事前に送付した質問の日本語版 

〔質問事項〕      2005・8・7(廣瀬肇) 

2005 年、大連海事大学、上海海事大学での聞き取り調査での質問項目 

Ⅰ  海事大学に関すること 

1. それぞれの海事大学の建学の精神、設立目的、教育目標、海事大学の中国にお ける位置づけ。 

海技教育、海事教育(海運システム、貿易関連、海洋政策関係、海洋法等)

の内容とカリキュラム。高級船員の免状制度について。 

2. 学生について 

学生のレベル、卒業後の進路(台湾や海外での就職等も含めて)、 

全寮制の教育なのかどうか。 

3. 海事大学から見て、台湾の海洋、海運、海事に関する教育をどのようにみてい るか。 

4. 貴大学の宣伝パンフレット及びシラバスを頂戴できますか。 

Ⅱ  中国における海に関する法制度について 

1. 中国における船員制度とその法律について  2. 船舶の船体や構造の安全のための法律について 

3. 中国における商船(船舶)の管理に関する法律について(中国籍船を便宜置籍す ることを認めているか。また中国を便宜置籍国とすることができるか等も)   4. 中国の海難審判制度の概要及びその法律について 

5. 船舶の航路、航行管制に関する法律について 

6. 中国における海洋を管轄する官庁について(国家海洋局と思われるが) 

7. 海域使用管理法(第9期全人代常務委員会第 24 次会議、2001・10・27) 

及び領海法、2003・6・28 港湾法の内容について。できればこれらの法律の条 文をいただきたい。 

また、2003 年4月と聞いている「海域使用管理法及び制度の執行状況に関する 検査通知」の内容を知りたい。できればその文章のコピーをいただきたい。 

8. 中国の海上の治安維持、安全確保のための警察制度、海難救助制度及びその法 律について。 

Ⅲ  中国の商船隊について 

1. 中国の貿易、物流(外航)の内容、統計数字等について。取り分けコンテナ輸 送関係について。輸出入物資について、中国船による輸送率はどのぐらいか。 

2. 船員(部員)教育のシステムについて。 

3. 海外との貿易に使用される港湾について(いわゆる開港の場所、設備等)。港湾 の建設、維持、管理について。 

4. 中国の造船所、建造能力、建造計画、年間進水量等。最近のLNG船の建造に ついて。 

5. 中国国籍船(外航用)の数等。中国商船隊の今後の方向等を含む、中国の商船 に関する海洋政策といったものがありますか。 

6. 中国商船隊は今や世界に広がっていますが、貿易ルートの海上安全(セキュリ ティを含む)への関心について、特にマラッカ海峡の海賊問題等への対処はし ていますか。 

7. 鄭和の遠洋航海 600 年記念の今年、大イベントが行なわれたと聞きますがその 内容について。 

8. 日本では子供を対象として、いわゆる「海事思想の普及」ということを行なっ ていますが、中国では一般的に国民に対して海事に関する知識の普及のような ことを行なっていますか。 

9. 中国政府の海洋政策について海洋進出についてどのように受け止めているか。 

10. 文章になった海運政策の要綱のようなものはありますか。 

8月 22 日午前  大連海事大学にて聞き取り調査開始  副処長  楊伝勇氏、  あいさつ 

王秀芬  大連海事大学法学院(船員法)教授  王杰  副教授    の 2 人がカウンターパート 

先ず広瀬から質問の趣旨について説明(質問表は2人の先生に渡されてはいなかったの で)近年の中国経済の著しい発展に伴い海上輸送も飛躍的に発展していると聞いている。

そこで中国の海運政策に関し船員船舶、造船、港湾、船員教育、船舶安全、諸港湾開港等 に関し質問書の内容について、さし支えない範囲でいろいろ教えて欲しい。中国の海洋政 策と海運船員問題との関連などについても教えてもらいたい旨話をする。 

両王先生は法律が専門であるが故に法律面の話を中心にお話をしたいということになる。

男性の王杰氏はアシスタントという感じであった。主として王秀芬教授が回答してくれる こととなる。 

国家の海洋政策は国連海洋法条約に関すること、エネルギー資源の開発、領海問題等以 外、一般的な商船の政策については不熱心であり、担当部局(行政庁)は分散して統一が なく、なによりも全人代(全国人民代表大会)のなす法律の不備が目立っている。少しず つ正していく努力はしているが極めて不十分のままである。船員政策もしっかりしたもの がない。学者(の立場は)は提案するのみで現実に影響を与えるのはむつかしいというこ とであった。 

船舶登録について(許可制、中国に登録できるのは中国(籍)の人のみである)国務院 の船舶登録条例があるが  現在改訂中であり全人代による法律にしようとしている。 

中国の船員は陸上に比べて給料は 1980 年代は3〜6倍であった、また海員は沿海都市 部出身者が多かったが、現在陸上労働の給料もあがって来たので、海員(船乗り)の人気 は  かげりつつある。現在中国東北部  西部の内陸出身者が増えている。大連海事大学に は練習船が2隻あり、日本にも行ったことがある。 

中国のなしている便宜置籍船にについて 

実質中国の保有する船舶は約 4000 万トンで世界で第5位の保有量である。中国は IMO 理事国ではあるが海運の面から中国海運は強国とは云われていない。実質保有 4000 万ト ンのうち 56%は外国で登録している。残り 44%が中国国籍船で、中国の会社が経営して いる。平均船齢は 19 年で船齢は高い。中国の便宜置籍船の船齢の平均は 12 年である。中 国側が経営する会社に属する船舶の平均トン数は1万5千トンであり便宜置籍船は平均4 万トンである。便宜置籍について政府も苦慮しているという。その理由は、もしもという とき便宜置籍船は(外航での利用は可能であるが)内航にもってこられない。 

自国用に使うことができない。中国における中国船の経営コストがかかる  取り分け税 金が高い。現在中国の会社が外国で船舶を建造し中国で登録すると 27%の税(船価)が かかり、登録手続は複雑であって且つ時間がかかる(中国での造船をすすめる意図か?)。

この状況を変えるため、現在中国は第2船籍(第2国籍)を考えているという。 

海の開発・管理の法律はそこそこあるが、いわゆる海事法は未整備の状態といってよい。

全人代制定の法律も少なくはないが、93ʼ中国海上安全法、海洋環境保護法、海上交通安 全法、領海法、大陸棚法、海域使用管理法が定められている。法律の運用に関する諸規定 は海上安全法と交通安全法については交通部で定める。 

ドキュメント内 中国の海洋政策の日本 (ページ 95-126)

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