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多目的最適設計問題

第5章 シミュレーション結果 43

第5章 シミュレーション結果 44

図5.5: 多目的最適設計問題の結果

得ることができなかったと考えられる。この解決策としては,初期点に単一目的最適設計 により得られた形状を加えるなどが考えられる。本研究では多目的最適設計問題への適用 を第一に考えたため,初期点をランダムで行ったが,モータ最適設計システムは単一目的 最適設計により得られた形状を初期点として用いることができる。サンプル点配置の際に 良い解の周りに撒くという機構により,単一目的最適設計により得られた形状と近い形状 を探索することができ,磁石量は熟練設計者が設計した形状より多いが,推力特性に関し ては優るという形状を得ることができると考えられる。

パレート解におけるサーフェスモータの形状例を図5.6に示す。図5.6にあるようにパ レート解を求めたことにより様々な形状を得ることができた。多目的最適設計問題におい て用いた評価値は各点に重みづけをした推力の和となっている。そのため,このようにパ レート解を得ることができたが,実際に始動位置において熟練設計者により得られた形状 を上回っているかは明らかではない。そこで,始動位置の推力を図5.7に示す。図5.5と比 較すると,熟練設計者により求められた形状を推力特性において優る形状は,従来形状の 推力を始動位置において上回っていることがわかる。

得られたパレート解集合の推力特性を図5.8に示す。なお,図5.8に示される様々な推力

第5章 シミュレーション結果 45

図5.6: パレート解のサーフェスモータの形状例

特性は,得られたパレート解集合がどのような推力特性を持っているかを大まかに見るた めに示している。図5.8より,単一目的最適設計により得られたパレート解の推力特性は,

熟練設計者により求められた形状のような推力特性ではなく,始動位置付近から少し上昇 するような推力特性をもつ形状を多く得られたことが分かる。また,評価点7〜9付近,つ まり停止位置付近において推力がマイナスになってしまう形状が多いことが分かる。この ように推力がマイナスとなってしまうと,逆方向への力が働き,場合によってはムーバが 停止位置に到達しない可能性が生じてしまう。このような原因として,評価方法が考えら れる。多目的最適設計問題においては,評価方法として,各点に重みづけしその評価点の 和を評価値として扱った。本研究では始動位置の重みをより重視したため,停止位置付近 の推力は値が小さいだけでなく重みも低いため,評価値にあまり影響を及ぼさず良い解と なり,推力が停止位置付近でマイナスになる形状を多く得るという結果になったと考えら れる。サーフェスモータにおける,モータ最適設計システムにより求められたパレート解 の理想としては,単一目的最適設計問題の際に得られたような推力特性の曲線を有してお

第5章 シミュレーション結果 46 り,かつ推力特性においてできる限りマイナスにならないことが挙げられる。上記の解決 が今後の課題であると考えられる。

第5章 シミュレーション結果 47

図5.7: 始動位置の推力比較図

図5.8: パレート解の推力特性

6 結論

本研究では,モータの取り巻く環境の変化に着目し,「モータ最適設計問題の抱える課 題」及び「最適設計問題に最適化手法を適用する際の課題」を明らかにした。そして,統 合的最適化の枠組みに基づく汎用的なモータ最適設計システムを構築すると共に,そのシ ステムを実際のモータ設計問題であるサーフェスモータの設計に適用し,設計者の試行錯 誤により得られた最適な形状との比較を行い,有用性の検証を行った。以下に本研究の成 果を示す。

(1) モータ汎用最適設計システムの構築

「モータ最適設計問題の抱える課題」及び「最適設計問題に最適化手法を適用する 際の課題」を双方とも解決できる方法が必要であると考えられる。そこで,近年の 電磁界解析技術,モデリング技術,最適化手法の発展に着目し,シミュレータ・モ デリング・最適化手法を統合したモータ設計における問題点を解決するための新た な汎用最適設計システムを提案した。

(2) サーフェスモータの単一目的最適設計

サーフェスモータにおける,推力と吸引力の間にトレードオフ関係が成立している こと,及び吸引力が推力より支配的な状況になっている事を踏まえ,吸引力を制約 として扱い,本研究で扱うモータ汎用最適設計システムに合致した制約付加方法を 提案し,サーフェスモータの推力の上昇を目指した。その結果,従来の熟練設計者 により求められた最適な形状を上回る性能を持つ形状を得ることができ,単一目的 最適設計問題におけるモータ汎用最適設計システムの有用性を証明できた。

第6章 結論 49

(3) 目的間のトレードオフ関係を考慮したサーフェスモータの多目的最適設計

サーフェスモータにおいて,推力の上昇,及び磁石量の低減はトレードオフ関係が 成立しており,かつ優先順位がつかないことから,2目的最適設計問題として扱え る。そこで本研究では,多目的最適設計問題を解くためにシステムの多目的の拡張 を行い,熟練設計者が設計した最適な形状を上回るパレート解集合を得ることがで き,その有用性を証明できた。

今後の課題として,下記のようなことが考えられる。

シミュレーション負荷が軽い場合におけるシステムの有用性の証明

多目的最適設計問題における新たな評価方法の決定

離散・連続混合変数設計問題へのモータ汎用最適設計システムの拡張

A

第4章において,本研究でモータ最適設計システムの検証対象としてSFMの 選択理由を記載した。その中の問題構造の形状の検証を行った結果を示す。

問題構造の検証を行うため、設計箇所をステータ,ムーバ,及びステータとムーバ間の ギャップ長を図A.1のように設定した。なお、問題構造のわかりやすく見るために、x1-x2x1-x3x1-x4x2-x3x2-x4x3-x4の組み合わせで問題構造を示す。条件として、評価方

x1

x3

x4

x2

図A.1:RBFN検証における設計箇所

付録A 51

法は「目標曲線と評価点の推力の差の2乗和」とし、単一目的最適設計問題の場合と同様 に評価点を9点、また、目標とする曲線は始動位置が12Nとなりその点からsin波状に降 下していく曲線とする。6通りの問題構造を図A.2〜A.7に示す。なお、図A.2〜A.7にお いてx1をステータ縦、x2をステータ横,x3をギャップ、x4をムーバと表すとした。

図A.3,図A.4,図A.6において多峰性構造を確認できた。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 20

25

30 35

40 0

1 2 3 4 5 6 7 8 9

x 104

 

ギャップ ムーバ

 

評価値

1 2 3 4 5 6 7 8 x 104

図A.2: ムーバとギャップの問題構造

0 1

2 3

4 5

6 7

0 1 2 3 4 5 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000

 

ステータ横 ステータ縦

 

評価値

3000 4000 5000 6000 7000 8000 9000 10000 11000 12000

図A.3: ステータ縦とステータ横の問題構造

付録A 52

1 2

3 4

5 6

7 8

9 0 0.5 1

1.5 2 2.5

3 3.5

4 4.5 5

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000

 

ステータ縦 ギャップ

 

評価値

2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000

図A.4: ステータ縦とギャップの問題構造

0 1

2 3

4

5 1

2 3

4 5

6 7

8 9 0

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

x 104

 

ギャップ ステータ横

 

評価値

1 2 3 4 5 6 7 8 9 x 104

図A.5: ステータ横とギャップの問題構造

付録A 53

0 1 2 3 4 5

20 22 24 26 28 30 32 36 34 38 40 0

0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5

x 104

 

ムーバ ステータ縦

 

評価値

0.5 1 1.5 2 2.5 3 x 104

図A.6: ステータ縦とムーバの問題構造

0 1 2 3 4 5

20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 0

0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5

x 104

 

ムーバ ステータ横

 

評価値

0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 x 104

図A.7: ステータ横とムーバの問題構造

参考文献

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