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単一目的最適設計問題においてのサーフェスモータの設 計方針

第4章 サーフェスモータの最適設計 32

2 設計変数の数

設計変数が少ない場合,実用時間内で従来の熟練者による試行錯誤により最適な形状 を得ることが可能となるため,最適設計システムを用いる必要性がなくなる。サー フェスモータはムーバ,ステータ,及びギャップ長など設計箇所が様々に存在し,ま たその設計箇所を細かく設計する必要があるため,十分満要件を満たしていると考 えられる。

3 シミュレーションにおける計測時間

サーフェスモータは,パソコンの性能にもよるが一回のシミュレーションに5分以 上の時間を要する。モータ汎用最適設計システムにおける「電磁界解析シミュレー タからの評価値情報を用いてメタヒューリスティクスにより最適化を行う方法」を 使うとなると,シミュレータの呼び出しが2000回程度必要があり,その場合だと大 幅な時間を要してしまう。そのため,「電磁界解析シミュレータの評価値情報から構 築した数理モデルにおいてメタヒューリスティクスを行う方法」が有効であると考 えた。

4 問題構造の形状

実際の設計問題の問題構造は最適な形状が一つであるような単峰性ではなく,似た ような性能を持つ形状が多数存在する多峰性となっている。本研究で構築した最適 設計システムは,汎用性の一つとして複雑な多峰性を持つ設計問題への適用を目指 している。そのため,多峰性でるSFMを対象とした。また,SFMにおいては,実 際に問題構造が多峰性になっているかの検証を行った。この検証については,付録 Aにおいて説明する。

4.2 単一目的最適設計問題においてのサーフェスモータの設

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サーフェスモータへの下方向への力(吸引力)が働く。この吸引力が大きくなりすぎると,

ムーバを支えるボールベアリングが動かなくなり,サーフェスモータとしての機能が働か なくなる。このような事から,サーフェスモータにおける推力と吸引力はトレードオフ関 係にあるといえる。また,吸引力が大きくなりすぎるとサーフェスモータが機能しなくな る。そのため,設計の最低条件として吸引力が支配的な状況であり推力と吸引力の関係に 優先順位が付けることができる。そこで本研究では1推力と吸引力がトレードオフ関係に あること,推力と吸引力に優先順位が存在すること,を考慮して,サーフェスモータに おいて吸引力が推力より支配的な要素であるとし,吸引力を制約として本質的には2目的 最適設計問題であるところを有制約単一目的最適設計問題として扱った。

4.2.1 サーフェスモータの設計箇所

最適設計問題において,設計箇所の選択は形状の性能を決定する上で重要な要素となる。

本研究においては,サーフェスモータの推力を課題として考えている。そこで,推力への影 響力が高いステータ形状,ステータとムーバのギャップ長,及びムーバ形状を設計変数と して扱うとした。設計変数は図4.5のようにステータ形状をx1 ∼x14,ギャップ長をx15, 及びムーバ形状をx16 x20とした。なお,熟練者の観点からステータ形状は機械,また は職人の手による加工が容易であるため,ある程度設計変数を増加させても形状を作成す ることが可能である。逆にムーバ形状は,磁石の加工となるため設計がステータとは異な り複雑な形状を作成することは困難となる。そのため,本研究においては上記のように設 計変数を設定した。

4.2.2 評価方法

サーフェスモータはムーバの位置により推力に変化が生じる。サーフェスモータの実用 化を考慮すると,1全体的に高い推力特性を得られたとしても始動位置の推力が小さいと,

物資の搬送の際に始動位置から動作しない可能性が生じること2推力特性にリプルが発生 すると物資搬送などへの応用の際に問題が生じること,が重要となる。本研究で用いる電 磁界解析シミュレータであるJmag-studioは,図4.6のように各位置の推力を算出する。最

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図4.5: 単一目的最適設計におけるサーフェスモータの設計パラメータ

適化を行う際に各推力を単純に合計し評価値とする方法では,望む推力特性の形状を設計 することができない。そのため,評価方法の検討が必要となる。

図4.6: サーフェスモータの推力算出方法

複数個ある評価点を単一に評価するには,各評価点を単純合計する方法や,優先度順に 重みづけを行い合計する方法など,様々な方法が存在する。単純合計を評価値とする方法 では,設計者が望むような推力特性をもつ形状を得ることができないという点や,優先度

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順に重みづけを行う方法では,細かい重みづけを決定する必要があり扱いづらいという点 が考えられる。また,重みづけを行う方法ではトルクリプルが発生するなどが確認されて いる[20]。

そこで本研究では,目標とする推力特性を設け,その目標特性を目指すように評価を行っ た。具体的には,最小二乗法を用いて,各点の評価値と目標特性において各点に相当する 位置の評価値との差の2乗和を評価値として扱うとした。設計形状における各評価点の推 力をFi,目標曲線における各評価点の推力をT ai,評価点の数をnとすると,評価値yは 式4.1により導出される。

y = n

i=1

(T aiFi)2 (4.1)

これにより,推力特性の設定は必要であるが,細かい重みづけを必要とせず,また設計者 が望む推力特性を得ることが可能であると考えた。

4.2.3 制約によるペナルティ付加方法

本研究のサーフェスモータのように,推力と吸引力というトレードオフ関係が成立する 目的に明確な優先順位が存在する場合,優先順位が高い目的を制約とし,単一目的最適設 計問題として扱うことが可能である。その際,制約を逸脱した形状に与えるペナルティを 考慮する必要が生じる。ペナルティの付加方法としては,制約を逸脱した形状の評価値に 一定の大幅なペナルティを与え,良い形状候補とならないようにする方法が考えられる。

しかしペナルティを与えることにより,RBFNにより生成される応答曲面において,制約 を逸脱したサンプル点の影響力が大きくなり,応答曲面と実際の問題構造に大きくかい離 が生じる可能性や,制約付近の形状を得ることが困難になるということが考えられる。

そこで,応答曲面への影響を踏まえ,制約を逸脱した割合により付加するペナルティを変 化させ応答曲面に変化を与えることにより,制約付近の解の探索向上を狙うとした。具体 的な方法として,始動位置から停止位置まで推力と同じ評価点数の吸引力を算出する。そ して,吸引力が最大の点をその形状の吸引力とし,制約と比較する。制約を超えていなけ れば推力にはペナルティを与えずに,そうでなければ吸引力が制約を超えている割合を計 算し,一定ペナルティに加算する。これにより制約を逸脱した形状へ付加するペナルティ

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に変化を与えた。

また,本研究で提案するペナルティの付加方法がモータ汎用最適設計システムに影響を及 ぼすのかを検証した。制約を逸脱した形状に一定のペナルティを与える単純な方法をM1, 制約を逸脱した割合により,ペナルティ付加量を変化させる提案する方法をM2として簡 単な比較検証を行った。サーフェスモータの設計箇所は単一目的最適設計問題と同様に図 4.5とし,ペナルティの検証ということから,推力の評価方法は評価点の単純合計とした。

具体的には,サンプル点を500点撒き,その中で制約を逸脱した形状に対してM1,M2の 方法でペナルティを付加し,それぞれ応答曲面を生成した。そしてその応答曲面上におい てAPSOのTmax= 100,Particle数m= 20とし,100回試行した解をシミュレータに戻 して得た評価値の平均値,最良値,最悪値,及び標準偏差を下記の表4.1に示す。またこの 問題は最小化問題となっており数が小さいほど良い解となる。表4.1を見てみると,平均

表4.1: 制約付加方法の検証結果

値,最良値,最悪値全ておいてM1を提案した方法であるM2が上回る結果となり,モー タ汎用最適設計システムではM2のペナルティ付加方法が適していることがわかった。本 研究では,M2の方法を用いるとした。