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多様な自立支援の流れ図、緊急から自立支援、地域ネットワークの中へ

ドキュメント内 二つの公共性と官、そして民 (ページ 143-200)

第9章  ボランティアができること、NPOができること

2   多様な自立支援の流れ図、緊急から自立支援、地域ネットワークの中へ

(1)ボランティアからNPO、まちづくりまで 

自立支援システムの成功のためには、就労自立支援のための幅広いネットワークを構築する必要が あり、それぞれの地域にそのための資源がどのように存在し活用の可能性があるかについて、調査を する必要がある。他方で、自立生活への意向のある者は、就労意向者「能力・人材バンク」(表現が 妥当でないかもしれないが)などにより登録システム化・データベース化が図られなければならない。 

 

表9−5 ボランティア活動からまちづくりまで 

 活動内容  様々なリアクション 

1 支援の開始  ←ニーズの想定 

2 規模の拡大、定期化  ←ニーズの把握 

3 メニュー・プログラムの拡大、活動場所の固定化  ←運動としての安定性 

4 活動・事業実施の頻度を高める、拠点化、体系化  ←緊急支援から自立支援へ、点・線から面 へ 

5 行政との連携、住居・就労への展開、施設への展開  ←事業化  6  地域福祉、ネットワーク、まちづくり、インクルージョン・

インテグレーション 

←地域資源の把握 

 /対象の拡大、エリアの拡大・・・  ←NPO・ボランティア組織の強化   

 ボランティア活動を開始する段階から、その地域社会を拠点にしてまちづくり運動を展開するまで に、いくつかの局面がある。まず、支援の開始する、当然、ニーズの想定をしつつ、有効な意義のあ る活動を組織化していく。次に、活動の規模を拡大したり、活動を定期化したりする。この場合、

ニーズの把握を行いつつ、それに対応する活動を展開していく。次に、活動の中で編成していく「メ ニュー・プログラム」を拡大し、活動場所を固定化(安定化) させると、一連の活動は運動としての 安定性を確保するようになる。活動機会や事業実施の頻度を高めると、拠点化、体系化の度合いが高 まり、緊急支援から自立支援へ、点・線から面への支援が、可能になってくる。さらに、支援活動が 安定し、組織が安定化すると、行政との連携、住居・就労への展開、施設への展開など、事業化への 途が開けていく。こうしたことの総仕上げとして、地域福祉、ネットワーク、まちづくり、インク ルージョン・インテグレーションなどの全体的、システム的な活動の重要な使命を担っていくことに

なる。ここまでくると、活動団体としての対象は拡大し、活動エリアも拡大していくのである。 

 

(2)貧困者、不安定居住者の事実上の住居 

ドヤは、旅館業法上は「簡易宿所」であり、住居ではない素泊まりの寝場所・滞在場所である。ド ヤは住居ではないが、住民票や戸籍がなくとも、泊まれるミニアパートのような場所なのである。こ こに居住する生活保護受給者が増えている。ただし、ドヤでの居宅保護を認めている東京23区や川 崎市、横浜市と、認めていない名古屋市、大阪市などでは、対応が異なる点もみられる。 

 ボランティア・支援団体が実施している越年支援活動(越年炊き出しシェルター/越年・越冬闘 争)期間の間、このイベントにやってくる人は野宿している人が多いが、ドヤ(簡易宿所)から越年 イベントに参加している人もいる。 

ホームレスの広い意味では、みなホームレスだが、①ドヤに住んでいる人、②越年までは、飯場な ど、寝る場所があった人、③越年の前から野宿であった人、などの多層化がみられた。ホームレス問 題が深刻になるにつれて、飯場からという割合は減り、野宿が常態の人が増えてきた。(ドヤ居住の 人がやってくるのは、このイベントを楽しみに来るからである。越年はドヤ住まいも含めたイベント であったが、このイベント自体が緊急支援の意味合いが強くなってきたために、生活保護受給者が参 加しずらい雰囲気に変容してきた。) 

 

(3)地域のイベント、行事<越年シェルターか越年闘争か> 

先に述べた山谷における支援の一大イベントも、時代とともに意味づけが変わってきたといえるし、

多様化してきたともいえる。それぞれの支援団体は、その意味付けを踏襲することに価値を置いたり、

発展的な転換をはかったりするのである。 

ふるさとの会は、野宿者への緊急支援と地域文化創造のお祭りと位置づけ、山谷争議団ならびに山 谷日雇労働組合は越年・越冬闘争と位置づける。また、公園シェルターで2000年以後の現在も活 動をしているのは、山谷日雇労働組のみである。 

 

表9−3 越年・越冬闘争―越年シェルター・給食事業に取り組んだ諸団体  越年3団体 

(下記2団体は1995年11 月に分裂した。) 

会場(かつてはみな玉姫 公園で実施) 

支援内容 運動的側面 

ふるさとの会 水神大橋近くの東京都 有地を臨時借用 

炊き出し、物資配給、健 康相談、アウトリーチ・調 査 

舞台イベント、のど自慢

山谷争議団 城北福祉センター前 炊き出し、物資配給、健 康相談、人権パトロール

闘争  山谷日雇労働組合 玉姫公園  炊き出し、物資配給、健

康相談、人権パトロール

闘争   

3 ホームレスのボランティア活動の現状と意義 

― 調査結果踏まえ、直接サービス主体となること、数々の具体化 

(1)団体の意義付けと個人的な意義付け 

  活動に取り組む目的は個人の次元での目的と団体の目的とでは一致する場合もあれば曖昧な場合も ある。 活動に参加する個々の人の興味の持ち方も、ボランティア活動対象への興味、団体への興味、

体験志向も多様でありうる。日本の最底辺を知りたい、そうした人と接してみたい、そうしたことに 取り組んでいる人と知り合いたいなど様々な面をもっている。少なくともかなりマイナーな志向が多

いだろうか。 

  ちなみに、ホームレスという対象を嫌悪する人もいるだろうし、ちょっとボランティアに加わって 失望する人もいるだろう、さらには、被害経験のある人もいるだろう。こうした人は、ホームレスボ ランティアの社会的意義を否定するだろう。 

 

(2)ホームレスボランティアの意義 

  ホームレスボランティア活動の系譜からいうと、社会運動あり体制変革運動、労働運動の分野で あった。これらの活動に、人権保障(権利行使代行)や反差別の活動が加わり、最近に至って福祉 サービス提供や自立支援事業といった活動が注目されるようになってきた。ボランティアと自己規定 する団体も増えてきた。 

 

表9−4 担い手としての市民セクター(ボランティア団体、運動団体など) 

a・直接のサービス主体となる局面 

b・施設をつくるアクション局面:設計図、人員配置図  c・就労、雇用の創出 

d・地域福祉の局面 

e・体系化、サービスを受ける側の流れ図、生活構造図   

ボランティア団体としての緊急支援は、従来のボランティア団体の枠組みを超えて活動が活性化し、

社会変革運動団体、権利行使支援団体、緊急支援団体の枠組みを超える可能性があるのである。活性 化したボランティア活動の特徴は、サービス供給主体となること、施設運営、就労支援、在宅サービ ス、街頭相談を実施するなどの事業を一部収益化し、専門の職員を雇用することである。 

 こうしたボランティア団体は、社会情勢を認識したり、自ら調査を実施しニーズを把握したりする ことにより、支援活動の充実、拠点化・頻度化・恒常化、直接事業化などの必要性を痛感するように なり、ただたんに直接事業者となるのみならず、ニーズ把握に基づいて必要なメニュー・プログラム を構築し、体系化していったのである。 

かくしてボランティア団体は、行政との連携を深め、必要に応じては行政に制度・運用の提案をし ていくようになった。こうして発展してきた団体は、地域福祉の枠組みを充実させるのに寄与し、

ネットワークや諸団体や、ボランタリー・アソシエーションや、伝統的団体との協力・連携を充実さ せるようになる団体の一部がNPO団体となり、NPO団体が制度上の趣旨から情報公開性を高めて いく責務も担っていく。またNPOが事業団体として成長するにつれて、団体の活動内容に注意を注 ぐオンブズマン、第三者評価・外部評価に取り組む社会活動・運動も活性化するようになる。 

これまでの一連の活動展開のなかから、いくつかのボランティア団体やNPO団体のタイプがうま れ、事業者として発展していくとともに、新たな新規参入的事業者を、地域社会は迎え入れていくこ とになり、トータルな意味での地域福祉ネットワークの構成へと進むことになる。 

 

表9−5 市民セクターの展開過程・類型 

従前 経過 その後の展開 

支援団体 

=  従前を維持 

ボランティア団体  支援団体  ボランティア団体 → 

発展・展開、併設 

NPO(A) 

無関係 新規 NPO(B) 

⇔  相互乗り入れ 

新規事業法人NPO  ボランティア団体 

伝統的福祉法人   

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