第 2 章 :マイクロ流路内垂直多孔メンブレン集積法
3.2 多孔メンブレンと 3 次元ポーラス構造集積法の原理と
3.2.1 原理
提案集積法には、前章に続き、厚膜感光性材料であるSU-8(Microchem)を用い て、その感光部と未感光部のガラス転移温度の違いと、露光量を調整した裏面露光 法を用いる。SU-8のガラス転移温度は、未感光部と感光部で異なる。ガラス転移温 度差を利用することで、流動部と非流動部を同時に利用できる[13]。裏面露光法は 基板の裏面から露光光を照射する手法である。提案する手法では、あらかじめ感光 光を透過できるガラス基板上に微細なパターンを転写し、転写したパターン上に SU-8を成膜する。成膜したSU-8を、裏面露光を用いてパターニングする。この時、
成膜した SU-8 層の中間部分まで露光量を調整することで感光する。現像前に接着 させるポーラス構造を配置し、ガラス転移温度以上に熱し、SU-8 の流動を利用し 構造内に浸透させる。さらに、接着層として用いる SU-8 に再度感光光を照射し、
配置した構造とあらかじめ基板上に作製していた微細なパターンを接着する。
提案手法の原理図を図3-1に示す。提案手法では、その露光量を調整し、感光性 材料内に感光部と未感光部の両部を、高さ方向に共存する状態を作る。従来の SU-8を利用した研究においても、露光量を調整し、SU-8層内の高さ方向に感光部と未 感光部を共存させる加工法について述べられている[14]。従来手法では上面露光を 使用するので、コンタクトギャップによる露光光の拡散を理由に高精度な構造を安 定して作製できない。本章の提案手法では、裏面露光法を利用するので、コンタク トギャップは発生せず、安定して微細な構造を作製できる。さらに、露光量調整に より高さ方向に未感光部を残存させ、55 °Cから100 °Cの再加熱により未感光部の みを流動化し、接着層として利用する。本手法での接着は、界面での共有結合など は利用せず、ポーラス構造内に浸透した SU-8 によるアンカー効果を利用する。界 面における化学的な結合を利用しないので、接着力は共有結合を利用する陽極接合 などには劣る一方、接着する対象の材質や形状に対応できる。また、接着材料を高 温、高電圧、あるいはプラズマを用いる必要はないという利点を有する。
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(a) 露光量を調整した裏面露光 (b) ポーラス構造の接着 図3-1 露光量調整と浸透による接着の原理
3.2.2 提案する原理により作製する構造
本章で構築を目指す生体構造は、組織関門とその周辺の構造である。人体、ある いは、動物体内では、組織関門と臓器細胞が隣接して配置されている。組織関門の 一つである毛細血管とその周辺の細胞の模式図を図3-2に示す。毛細血管は中空構 造をとり、組織関門として機能している。中空構造のジオメトリを展開すると、2 次元の組織関門とその下に積層される細胞組織となる。境界を明確とすることで、
不定形である生体組織形状を意図的に設計し、組織関門とその下の細胞組織部分の 境界を2次元の多孔メンブレンにより明確に区別することができる。一方で、細胞 の代謝物は、細胞間で伝達されるので、その境界を透過しなければならない。そこ で、細胞を含有できる構造と細胞を透過しないポーラスの構造を集積し、細胞播種 操作のみで疑似的な細胞構造を作製できる微細構造を作製する。
本章で作製する構造の構成を図3-3に示す。本章で作製する多孔メンブレン集積 スカフォールドは、細胞を透過しない微細な孔を有するメンブレンと細胞を含有で きる 3 次元のポーラス構造を集積した形状である。細胞を透過しない微細な孔は、
細胞の大きさと、製作工程中の作製誤差の発生を考慮し、格子部分を4 m、孔部分 を5 mに設計したパターンを利用する。多孔メンブレン集積スカフォールドは、
SU-8 からなる 2 次元多孔メンブレンと空洞率 90 %のポーラス構造である Alvetex
Scaffold (AVP004-3、Alvetex)からなるスカフォールド部を有している。両材料とも
に従来研究にて細胞培養に用いられた実績を有するので、これらの材料を利用して 細胞培養用のスカフォールドを作製する[15, 16]。
SU-8 Cross-linked
SU-8 Cr UV
Porous structure
Glass
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図3-2 毛細血管と生体内の構造とそのジオメトリの展開の模式図
(a) 俯瞰 (b) 断面
図3-3 作製する多孔メンブレン集積スカフォールド模式図
多孔部
接着部
Alvetex Scaffold
多孔部
Alvetex Scaffold 接着部
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