第 1 章 の参考文献
2.2 基礎方程式
2.2.1 単相流の基礎方程式および二相界面における跳躍条件
図2.2.1に示す面積Aの界面に隔てられた不浸透の二相n,pを考える.両相の体積の
和はΩで,その表面積はS である.各相の体積についてΩn+ Ωp = Ωが成り立つ.下付 添字 n,pは各々相 n,pを意味する.図中nはΩn の界面における外向き法線ベクトルで ある.どちらの相に対して外向きであるかを明示的に書く場合には,nn のように下付添 字を付す.Ωp の界面における外向き法線ベクトルは,np =−nn である.Ωが界面を含ま ず,相nあるいは相pのみが存在する場合,Ω内で以下の連続の式および運動方程式が成 り立つ[12].
∂ρk
∂t +∇ ·ρkuk= 0 (2.2.1)
ρk
"
∂uk
∂t +uk· ∇uk
#
=∇ ·Tk+ρkfk (2.2.2)
Ω S
up dS
dS n
interface A phase n
phase p
図2.2.1 界面に隔てられた不浸透の二流体
ここで,ρは密度,tは時間,uは速度,T は応力テンソル,f は体積力である.下付添字 kはnあるいは pをとる.
界面において成立する質量および運動量の跳躍条件を以下に示す[13–15]. X
k=n,p
ρk(uk−uint)·nk =0 (2.2.3)
X
k=n,p
Tk−ρkuk(uk−uint)
·nk =∇σ−σn (∇ ·n) (2.2.4)
ここで,σは表面張力である.下付添字intは界面を意味する.
2.2.2 一流体近似による二相流の基礎方程式
本研究で開発する体積追跡法を基礎とする界面追跡法では,一流体近似に基づく基礎方 程式を用いる.以下,一流体近似に基づく基礎方程式を導出する.
位置 xを占める相を記述する変数として,相定義関数χk(x,t)を用いる[16]. χk =
( 1 if x∈Ωk
0 otherwise (k=n,p) (2.2.5)
各相内で成立する基礎方程式(2.2.1), (2.2.2)にχkを掛けて以下の式を得る.
∂χkρk
∂t +∇ ·(χkρkuk)=−ρk(uk−uint) nkδk (2.2.6)
/〆 f ♂-~~--
‑ ‑ 日 一
∂χkρkuk
∂t +∇ ·(χkρkukuk)=∇ ·(χkTk)+χkρkfk+
Tk−ukρk(uk−uint)
·nδS (2.2.7) ただし,式変形に以下の諸式を用いた.
∂χk
∂t +uint · ∇χk =0 (2.2.8)
∇χk= −nkδS (2.2.9)
ここで,δS はデルタ関数である.
式(2.2.6), (2.2.7)を各々k = n, pについて加え合わせたのち,跳躍条件(2.2.3), (2.2.4) を考慮することで,以下の一流体近似に基づく連続の式および運動方程式を得る.
∂ρ
∂t +∇ ·ρu= 0 (2.2.10)
∂ρu
∂t +∇ ·(ρuu)= ∇ ·T +ρf +[∇σ−σn (∇ ·n)]δS (2.2.11) ここで,
ρ= X
k=n,p
χkρk (2.2.12)
u= P
k=n,pχkρkuk P
k=n,pχkρk
(2.2.13)
T = P
k=n,pχkTk
P
k=n,pχk
(2.2.14)
f = P
k=n,pχkρkfk
P
k=n,pχkρk
(2.2.15) である.一流体近似に基づく式(2.2.10), (2.2.11)は,単相流の式(2.2.1), (2.2.2)と似てい るが,相定義関数χk により位置 xを占有する相の物理量が選択される.また,運動方程 式に表面張力項が現れる.
2.2.3 一流体近似に基づく基礎方程式と跳躍条件の整合性
計算セルサイズを無限小に縮めていくとき,一流体近似に基づく基礎方程式が元の跳躍 条件に一致することを示す.
図2.2.2(a)に示す界面を含む計算セルを考える.セルの界面法線方向の高さをhとす
る.連続の式(2.2.10)を体積Ωについて積分する.
Z
Ω
∂ρ
∂tdΩ + Z
S
ρu·dS=0 (2.2.16)
Ωn
A
Ωp phase p
phase n dA
n
h 0 h
interface Ω
Ωp
dA -n dSp
Ωn
dA
dSn
n
dSn
dSp
h 0 : dSn/ |dSn| −n dSp/ |dSp| n
(a) (b)
図2.2.2 界面を含み,各相側に突出した計算セル
ここで,dS は面積要素ベクトルで,Ωに対して外向きである.セルを無限に小さくした
ときの式 (2.2.16)の挙動を示すために,セル高さhに対して 0の極限にとる.h → 0に
応じて,上式中体積積分が面積積分よりも先に0になる.さらに,側面のセル表面の寄与 も0になるから,界面を上下から挟む2表面上の面積分と界面の寄与のみが残る.この とき,相n側セル表面dSn および相p側セル表面dSp の外向き法線は,h→ 0の極限で 各々−n, nに一致する.図2.2.2(b)に示すように,各相体積Ωn, Ωp ごとに分割して考え て,界面速度uint を導入すれば,式(2.2.16)は,
X
k=n,p
ρk(uk−uint)·nk =0
となり,質量の跳躍条件(2.2.3)に一致する.同様の手順により,一流体近似による運動 方程式(2.2.11)から跳躍条件(2.2.4)が導かれる.
2.2.4 仮定・構成式
本研究では相変化がないと仮定する.この場合,質量の跳躍条件(2.2.3)より,界面法 線方向の速度成分はすべて等しい.
un· n=up·n=uint· n (2.2.17)
速度の接線方向成分にはすべりがある,すなわち界面エントロピー生成があると考えられ ている [13].しかしながら,このことに関する実験的な知見[17]は非常に少なく,すべ
りなしと仮定することが多い.本研究でも,既存の界面追跡計算と同様に,すべりはない と仮定する.したがって,
n×(up−un)=0 (2.2.18)
運動量の跳躍条件に nを外積した次式,
[n×(up−un)]ρp(up−un)·n−n×[(τp−τn)· n]= n× ∇σ (2.2.19) において,表面張力σが一定と仮定すると次式を得る.
n×[(τp−τn)·n]= 0 (2.2.20)
ここで,τは粘性応力テンソルである.本研究では表面張力を一定とする.また,応力テ ンソルT が次式で表わされるニュートン流体のみを扱う.
T =−pI+µ
"
∇u+(∇u)T − 2
3(∇ ·u) I
#
(2.2.21) ここで,pは圧力,I は単位テンソル,µは粘度である.また,扱う流体はすべて非圧縮 性流体,体積力は重力ρgのみとする.以上の仮定により,以下の連続の式および表面張 力項を含む運動方程式を得る[3, 18].
∇ ·u= 0 (2.2.22)
ρ
"
∂u
∂t +u· ∇u
#
= −∇p+∇ ·h µ
∇u+(∇u)Ti
+ρg−σn (∇ ·n)δS (2.2.23)