• 検索結果がありません。

基礎・基本の確実な習得

ITを活用した学習の視点と教材例

1  基礎・基本の確実な習得

 

児童・生徒の理解や習熟の程度に応じて、繰り返し指導などによって「つまずき」を克服したり、課 題にじっくり取り組ませたりするなど、個に応じて、きめ細かな指導を行うことにより、基礎・基本を 確実に身に付けさせることが求められています。 

特に、授業の中で、理解が難しいとされる抽象的な概念をシミュレーションなどにより視覚的に示し たり、データ分析などの作業の効率化を図ったりするなど、ITは、学習内容の理解や考察を深める上 で、新たな教育効果をもたらします。 

(1)抽象的な概念や思考過程の視覚イメージ化(子どもたちのつまずきを克服する。)

定理や法則、数式や記号等で表された抽象的な概念や思考過程などは、児童・生徒にとってイメ ージ的に理解することが困難な場合があり、時として、単なる暗記に陥ってしまい、さらには、理 解が不十分なまま、学習を終えてしまい、その教科への苦手意識やつまずきに至ってしまうことが あります。

このような学習において、論理的な思考力や想像力を養うことは重要で、そのためには、学び方 や考え方の習得を図る中で、ITの活用は、わかりにくい抽象的な概念や思考過程を、シミュレー ション機能などによってイメージとして示し、これにより、児童・生徒の思考を助け、学習内容の 理解を深めることができるなどの効果を発揮します。

たとえば、

① 国語の学習において、読解教材の情景や古典の時代的背景など、経験や環境などによってば らつきがちなイメージを写真や動画などで示すことにより、文章の主題の理解を深める。

② 算数・数学の学習において、表現の難しい図形の変化や空間的概念、関数とそのグラフの関 係などを、シミュレーションなどによって表現することにより、難解な概念の理解を深める。

③ 音楽の学習において、コンピュータのサウンド機能の利用により、音階や音色を確認しなが ら学習し、楽譜の意味の理解や創作活動の意欲を高める。

などの活用が考えられます。

78

【数学での例/関数とそのグラフの関係の学習】

関数とそのグラフの関係の学習において、生徒が数式から図形的なイメージを創出することが 困難な場合、コンピュータによるグラフ描画のシミュレーションは、生徒の図形的なイメージの 創出に大いに貢献します。

特に、関数のグラフ描画を行うソフトウェアは、正確なグラフの描画など、関数とそのグラフ の関係の学習において非常に有効なものと

され、多くの市販ソフトウェアやフリーソ フトウェア(注1)が発表されており、ま た、それらを活用した実践事例も多数発表 されています。しかし、これらのソフトウ ェアの多くは、非常に高機能で、その操作 には十分な習熟が必要であり、生徒や不慣 れな指導者が簡単に操作できるものではあ りません。

そこで、ここでは、陽関数の単純な描画 に機能を絞った関数のグラフ描画ソフトウ ェアとともに、その活用アイデアの事例を 紹介します。

ここで紹介する関数のグラフ描画ソフト ウェアは、本センターで独自に開発したも

ので、本センターのWebページ(http://www.edu-ctr.pref.kanagawa.jp/it/)から利用すること ができます。

このソフトウェアは、入力した陽関数のグラフを画面内の 座標軸上に描画するのみ(5つまでのグラフを重ねて表示で きる)の単純な機能のもので、初めて利用する生徒にとって も、本来の目的のために何の戸惑いもなく利用することがで きるものです。また、独自の機能として、黒板表示モードを 持っており、プロジェクタで黒板に投影しても十分な視認性 を確保するように工夫されています。

この黒板機能を利用することで、

① 生徒が黒板に描いたグラフを正確なグラフと比較す る。

② 指導者がグラフの特異点や範囲、閉領域の図示などの 板書を行う。

③ 座標軸のみを投影し、グラフを板書した後、プロジェ

クタを移動する(座標軸を動かす)ことで、グラフの平行移動を示す。

など、今まで不可能であった活用が可能になり、互いに関連しながら変化するという、関数の概 念の理解や方程式や不等式と関数のグラフの関係の理解に役立てることができます。

(注1)高機能関数グラフ・図形表示ソフト FunctionView(http://hp.vector.co.jp/authors/VA017172/)が有名 関数グラフ描画ソフトウェア

黒板表示モード

79

(2)一人ひとりの理解度等に応じたきめ細かな指導(基礎・基本の確実な定着を実現する。) 基礎・基本は、理解や習熟の程度に応じた個別指導やグループ別指導など、「個に応じた指導」

をきめ細かく行うことにより、確実に児童・生徒に定着させる必要があります。

この実現のためには、ドリル型の教材等を用いた個別学習指導への取組など、一人ひとりの児 童・生徒の学習履歴や到達度に基づいて最適な教材コンテンツを提示できるようにすることが求め られます。

また、蓄積された教材コンテンツを活用して、欠席した児童・生徒や繰り返し学習の必要な児童・

生徒に対して、補充的な指導をすることも必要です。

(3)データ分析など時間のかかる作業の効率的な実施(子どもに考察させる授業を実現する。) 作業的な活動や観察・実験では、授業時間の制約で、データの測定や収集に終始してしまったり、

収集データが少なく不完全な考察に終わってしまったりする場合があります。また、機器の操作や 実験方法の難しさから思うような結果の出ない場合もあります。

このような場合、ITの活用は、表計算機能によるデータ収集・分析の効率化や測定機器をシミ ュレーションするソフトウェアにより実験の実施を容易にし、考察や発表などの時間を確保するこ とを可能とします。

たとえば、

① 算数・数学の学習において、細かい作業を伴う作図をITの活用で、正確かつ簡単に行わせ ることや図形を連続的に変形させること、また、大量のデータの統計処理を行わせることな どにより、多数の具体例からその性質を学ぶ。

② 理科の学習において、実験データ収集や分析を効率化することで、実験結果に対する十分な 考察を行う。

また、離れた学校との間で同時刻に気象観測し、ネットワークを介して観測データを共有し、

空間的な広がりを持った観測結果の分析を行う。

③ 地理や地学の学習において、デジタル化された地形図の活用や地形図から読み取った情報の デジタル処理により、地形に関する多面的な学習を行う。

などの活用が考えられます。

80

【理科での例/振り子の実験】

小学校における振り子の学習内容は、「糸につるしたおもりが1往復する時間は、おもりの重 さなどによっては変わらないが、糸の長さによって変わること」と示され、おもりを使い、おも りの重さや動く速さなどの条件を変えて物の動く様子を調べ、物の運動の変化とその要因との関 係をとらえ、その規則性を追究する能力を育てることがねらいとされています。このねらいを達 成するためには、児童が主体的な測定活動を通して、振り子の規則性について感じ、考え、理解 を深めていくことが重要です。

しかし、ストップウォッチの使い方や始点・終点をおもりが通過するタイミングをつかむこと などは、限られた実験時間の中で十分に習熟することが困難です。そこで、全体で測定方法を確 認したり、個々に練習したりしながら、振り子の周期を正確に測定する操作技術等の習熟を図る ためには、振り子の振動映像をコンピュータなどの機器を使い提示するという、ITの活用が効 果的です。

児童は、操作技術等を身につけることによって、正確な実験結果を求めることができます。そ の実験結果をもとに、振り子の周期を変化させる要因を予想し、その予想を確かめる学習活動を 通して、おもりの重さ、振れ幅、糸の長さ、振り子の動きの規則性についての理解を深めること が可能になります。

(振り子の学習におけるITの活用例)

学習の流れ

1. 学習課題を知る。

2. 実験の方法を考える。

3. 実験をする。

4. 実験結果をまとめる。

5. 分かったことをまとめる。

「3.実験をする」

実験を始めると、振り子の動きをとらえること の難しさや1往復にかかる時間の測定値にばら つきがあることに気付き、児童は、正確に測定す る方法を考えることになります。

・  1往復では時間が短すぎる。

・  ストップウォッチを押すタイミングが難し い。  など

ここで、あらかじめ用意した振り子の振動映像を活用する。

・スクリーンに映した画像で測定方法を確認する。

・個々にストップウォッチの操作や押すタイミングを練習する。

・実験結果を練習前と比較する。(10往復の時間を測定する)

※測定方法の確認 や 練習時間は、5~10 分 程度とする。

このようにして、操作技術等の習熟を図ることによって、正 確な実験結果を求めることができるとともに、実験にかかる時 間を短縮することができます。このことは、振り子の周期を変 化させる要因を予想したり、関連付けたりして考えることなど に時間をかけることができ、振り子の動きの規則性についての 理解を深めることにつながると考えます。

おもりの重さ、振れ幅、糸 の長さの実験のうち、いず れかの時間で活用する。

プログラムによる、振り子のシミュレーションのページ

http://www.bekkoame.ne.jp/ kitamula/javasoft/pendulum71.htm