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地域資源の発掘・ネットワーク構築

ドキュメント内 平成19年度 (ページ 137-155)

第 4 章  モデル地域 28 地域と

先進地域 10 地域の分析

1. 地域資源の発掘・ネットワーク構築

 地域資源の発掘・ネットワーク構築については、個々のコーディネート団体、

コーディネーターのバックグラウンドや地域の特性など、さまざまな条件によ って、その手順や方法、必要とされる資質・能力には、かなりの差異がある。

そこで、ここでは、(1)実施校の開拓、(2)協力企業の発掘、(3)地域住民の参画 推進・行政等との連携・その他・各アクター共通の3領域に対する資源の発掘・

ネットワーク構築に分け、さらに、上記の3領域をそれぞれ【キーパーソンと の連携】【ニーズの把握・目的意識の共有】【ツールの活用】の手順や方法ごと に、各地域の具体的事例をあげながら、必要とされる資質・能力を分析する。

 また叙述の分類や順番については、手順や方法が個々の事例によって違いが あり、往還的・重層的な構造になっていることから、あくまでも見えやすくす るための具体的事例に沿った便宜上のものとする。

(1)実施校の開拓

【キーパーソンとの連携】(熱意) (学事) (課発)  

■行政機関等(政知)(地政) (地産) (論思) (計画)

●北海道職人義塾大學校のFさんは、市議会議員に陳情した。これにより、市 議会を通して小樽市の「学校教育推進計画」のなかにキャリア教育の実施が明 記されることとなった。 

●大館ネットワークの L さんは、大館市教育委員会派遣社会教育主事の佐藤潔 さんと関係構築した。

●エプソンインテリジェンスの K さんは、諏訪市の教育長に「ユーザー視点の ものづくり」というコンセプトを説明し、教育委員会とタイアップして、市の 全公立学校の全クラスで実施することとなった。

●富山県経営者協会の M さんは、教育委員会主催のイベントに参加し、教委の 人や教員に話をした。

●レベルアップの S さんは、飯塚市の経済部から教育委員会を通して学校を紹 介された。

●鳳雛塾の Y さんは、同塾の社会人向けビジネススクールに参画していた市長 の理解を得て、教育委員会に出向き、キャリア教育のあり方、産業界の意向を 伝えた。「導入は、トップダウンでないと動かない」と横尾さんは言う。

■教員(情探) (価判) (論思) (計画) (学意) (探究)

●ソシオエンジンの H さんは、一般教員の産業界に対する「壁」意識を低くす るべく、キャリア教育に積極的な教員と綿密な打ち合わせをおこなった。一般 教員とのクッションを担ってくれる熱心な教員と密な連携を取ることで、教員 同士での波及を図った。 

●キャリア・起業家教育学会の M さんは、研修会で各学校のキャリア教育を推 進していく中心的な役割を持つ立場の教員(進路指導主事、総合学習の時間の主 任、社会科の主任など)、自分でカリキュラムをつくってチャレンジしている教 員とネットワークを築いた。

■校長(情探) (課発)(計画)

●金融知力普及協会と連携する名護市金融特区室の担当者は、ある学校の校長 を懇親会に誘い、キャリア教育の説明をした。その結果、1年目の校長会で同 校長は「うちでやりましょう」とすぐに手をあげた。

■解説

 キャリア教育実施を目的とし、有効な地域資源の発掘および良好なネットワ ーク構築のためには、キーパーソン(キーセクション)との連携が必要だ。上記 の具体事例のように、その対象は市長や教育委員会などの行政機関、地方議会、

また実施主体の学校と広範囲に及ぶ。

 まず、コーディネーターは「誰(どこ)と連携すれば、目的達成の可能性が高 まるか」ということを認識していなければならない。その意味で、上記の具体 事例から読み取れる必要知識として、「政治的知識」、「地域の政治事情」「地域 の産業(企業)事情」「学校事情(教員の情報や学校の内情等)」があげられる。

 コーディネーターがバックグラウンドとして上記の知識・情報を持っていな い場合は、新たに、これらの知識・情報を獲得していくことになる。この場合、

必要なスキル・ノウハウとして、「情報収集・探索能力」があげられる。その 前提として、「誰(どこ)と連携すれば、目的達成の可能性が高まるか」というこ とを認識していなければならないので、「課題発見力」「計画力」も必要になる。

また、その原動力となる意識として、「探究心」「学習意欲」「熱意」が求めら れる。

 次に、集めた情報に基づいて、関係を構築するキーパーソン(キーセクション) を選択することになる。この場合、最適、有効な人選を可能にするためには「価 値判断力」や「論理的思考力」などの「分析力」が必要とされる。分析なしに、

ただ集めた情報に従って関係構築をした場合、後々、障害が出てくる場合もあ る。

 例えば、ある学校では、校長等管理職が積極的だったが、管理職の強引なや り方に教員が不満を持ち、実施にいたらなかった。これに類似したものとして、

首長や教育委員会を巻き込んだが、学校への関係構築がおろそかだったため、

実施はできたものの、教員の意欲が低く、うまくいかなかったケースもある。 

 これらの事例に対し、別の地域では、同じく管理職や行政機関と関係を構築 し、トップダウン的にことを運んだが、その際、前述のケースと違い、後述す る教員との目的意識の共有など、現場との関係構築も同時におこなったため、

問題を回避できた事例がある。 

 また逆に、ある学校では、キャリア教育に熱心な教員と関係を結ぶことがで きたが、 外部 を入れることに難色を示す校長が反対して実施できなかった。

これも同様のボトムアップ的手法で関係構築した別の地域では、校長や教育委 員会に 根まわし をすることによって実施できた。 

 さらに下記のような複雑な事例もあった。ある地域では、A 大学出身の校長 と非 A 大学出身の校長の2つの派閥があり、A 大学出身の校長と関係構築した ことにより、非 A 大学出身の校長の学校から排除されてしまった。校長会の派 閥にとどまらず、教員でも労働組合関係の対立もあるし、議会や行政機関でも 派閥争いはある。これは非常に困難な問題であり、1人のコーディネーター、

1つのコーディネート団体では解決不可能な場合もあるが、最低限、権力構造 などの地域の諸事情に精通し、個々の事例に合った適切な判断をする能力が求 められる。 

 次に、実際どのようにキーパーソン(キーセクション)と関係を構築したか、

その具体的方法や能力だが、これについては、キーパーソンを含めて以下に詳 述する。

【ニーズの把握・目的意識の共有】(熱意) (他敬) (相扶) (課発) (学事) (教課) (教 文) (傾聴) (働き)

■学校情況(情探)

●キャリアリンクは、兵庫県が「トライやる・ウィーク」実施から9年経過し、

新たな展開を模索していたことや高等学校での職業教育も学校裁量に任される 部分があることなど、ブレークスルーを模索する教育界の問題意識に着目した。

○あるコーディネーターは現役教員であることから、どこの学校に、なにに興 味を持ち、どんな力量を備えた教員がいるかを把握している。また、別の民間 コーディネーターは、上記の学校情報を教育委員会や中核教員等から得ていた。

■コミュニケーション(情探) (発信)

●ソシオ エンジンの H さんは、キャリア教育に積極的な教員と「先生がこのプ ログラムに意義を感じて、やってみようと思ってもらうにはどうしたらいいか」

「先生はどこでつまずきを感じるか」を討議した結果、教員はキャリア教育の 内容が見えていないため、不安や不満を感じていることを把握した。

○鳳雛塾の Y さんは、教員に株式の話をしたり、資産運用の相談にのったりし ながら関係を構築し、顧客が望む提案をする「提案型営業」「御用聞き」を実践 している。

■キャリア教育の意義 (発信)

●羽島商工会議所の W さんは、教員たちとの会議で「さまざまな人間と話すこ とで、自分の価値観や適性と合う仕事を知ることができる」という話をした。 

●ベンチャー・アライアンスは、教員の講習会で「体験学習をおこなうだけで なく、そこから 働くことの大変さ や、 一生懸命働くことの重要性 を認識 させることが重要だ」と話した。 

■学校・教員の自主性の尊重 (柔軟)

●未来図書館の T さんは、何度もキャリア教育の必要性について説明した後、

「私たち未来図書館が無理にやるものではない。子どもの学びのためですから、

今年度はやめて1年間本当に必要かどうか考えられてはいかがですか?」と提 案したところ「是非やらせてください」と実践に至った。

●鳳雛塾の Y さんは、全国一律の大手企業のプログラムを使うことに違和感を 持つ教員たちに「では、このプログラムを佐賀バージョンに切り替えてやりま しょう」と持ちかけた。

●オーシャン 21 の O さんは、将来、県内すべてに広げるためには、教員主体の キャリア教育であるべきだと考え、あえて、学校と教育委員会以外のネットワ ークをつくらなかった。

○鳳雛塾の Y さんは、「前の先生と同じことをしたくない」「前例に囚われたく ない」という教員のニーズに応えて、自由に脚色してもらった。教員とともに いいカリキュラムをつくる。それが口コミで評判になり、翌年につながった。 

■ニーズの掘り起こし (共通能力に同じ)

●羽島商工会議所の O さんは「授業をサボっていた子どもが社会人講師の話で 進路を決めて授業や挨拶をするようになった」という効果を伝えた。

●マイトイの M さんは、多くの学校が「学級崩壊」に直面していることを知り、

このような問題を解決するためにもキャリア教育を推進することが必要と、校 長、教頭に話した。 

●ベンチャー・アライアンスの A さんは「職場体験学習では、教員が企業を探 す手間をコーディネーターが担うことで、低コストで授業ができる」というメ リットを強調して説得した。 

ドキュメント内 平成19年度 (ページ 137-155)

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