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地域再生・地域活性化に対する地域金融機関の活動の全体像

地域再生や地域活性化は地域発展をもたらすためにある。地域発展は、すぐれて社会経済的なものであり、経済的 現象と社会的現象の二つの視点からみることができる(岡本(2009))。本章でははじめに、地域の経済成長は地域の 付加価値の増加のことであり、それは生産額増加やイノベーションを通じた生産性向上によってもたらされることを 記し、それに対して地域金融機関がどのように働きかけてきたのかの全体像を俯瞰する。あわせて、経済成長を支え る社会的要素には地域におけるアクター間の信頼関係があり、それに対して地域金融機関がどのように働きかけてき たのかについても触れる。続いて、地域金融機関は地域の他のアクター、言い換えれば利用者によって支えられても いることに着目し、利用者が地域金融機関による事業再生・地域活性化の行動をどのように評価しているのかを公表 されたアンケート結果をもとにして把握し、地域金融機関が有している課題を示す。最後にこうした全体像をもとに して、今後の章において考察すべきポイントを掲げることとする13

4.1 地域の経済成長と地域再生・地域活性化

地域の経済成長とは、地域の付加価値が増えることである(岡本(2012))。基盤産業を育てて地域外に財やサービ スを移出し、あるいは海外市場へ輸出することで地域の売上高を高め、それによって地域の付加価値を増やすことが できる。また、財やサービスをより低いコストで生産することによっても地域の付加価値を高めることができる。

2章でも述べた通り、地域の経済成長にはいくつかのポイントがある。まず、地域外の需要動向をよく観察し、

絶え間なく変わる需要の変化に対して地域が柔軟に対応できることが必要である。次に、地域資源を発見・活用して、

他地域に移出できる基盤産業を創造することも肝要である。さらに、地域内で消費が行われ、地域外へ資金の漏出が ないことも望まれる。最後に、付加価値の増加は生産性の向上によっても生じることから、そのためのイノベーショ ンを促進することも課題となる。

地域の経済成長、換言すれば付加価値の増加は、以上で述べた通り生産額の増加や生産性の向上によってもたらさ れるのである。地域再生や地域活性化は、生産額増加やイノベーションの促進による生産性向上を具体的に支えるも

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地域再生や地域活性化は地域の生産額やイノベーションを通じた生産性の向上によってもたらされるとするなら ば、次に問題となるのは、そこにおいて地域金融機関はどのような位置づけにあるかということである。地域金融機 関は地域に密着して金融を円滑にすることが重要だと言われる。そこで、地域再生や地域活性化において地域金融機 関が地域の付加価値を高める活動をこれまでどのように行ってきたのかを俯瞰することとしたい。また、序論で述べ た通り、地域の経済成長は地域の社会的要因に規定されてもいる。特に地域のアクター間に信頼関係があることが重 要である。信頼関係は初めからあるのではなく、アクター間の相互作用を通じて形成されるものである。地域金融機 関は信頼関係を形成するために何かを行ってきたのであろう。その何かとは、地域の持続可能性を高めるための営み であったかもしれない。以下では、地域金融機関が地域の持続可能性を高めるために行なってきたことをあわせて示 すこととしたい。

4.2 地域の付加価値を高める活動の実績

地域の付加価値を高めるために地域金融機関が行っている活動は、生産額の増加に貢献するもの、生産性の向上に 役立つもの、地域の持続可能性に貢献して地域における信頼関係の形成に資するものに大別することができよう。

図4-1地域の付加価値増加のために地域金融機関が行う活動(出所:筆者作成)

4.2.1 生産額増加への貢献

ビジネスマッチング

新しい販路の開拓は、イノベーションの一つである。新しい販路の開拓ができれば、事業者は売上を増やすことが できる。地域金融機関は、地域外の情報を有している。地域金融機関は情報の結節点として地域外の情報を活用し、

生産額の増加

• ビジネスマッ チング

• 創業・新事業 支援融資

• 動産・債権譲 渡担保融資

生産性の向上

• 経営改善計画 策定支援

持続可能性強 化と信頼形成

• 事業承継

M&A

• 企業再生ファ ンド

• 償還方法の緩

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地域の事業者に新しい販路を提供できると期待される。小さな見本市のような販売促進会を主催し、あるいは地域の 事業者を地域外の事業者に個別に紹介する「ビジネスマッチング」活動を行うことがよくみられる。

これまでどれほどのビジネスマッチング活動を地域金融機関が行ってきたのかを下記の図に示す。

図 4-2 地域金融機関のビジネスマッチング件数(出所:金融庁資料をもとに筆者作成)

金融庁が統計を公表している2003年度から2009年度の間、地域金融機関全体ではビジネスマッチング活動は約6 倍に増えた。ビジネスマッチング活動は継続的に行われていると解してよいだろう。地域銀行(106行)と信用金庫

(272金庫)・信用組合(159組合)で分けると、圧倒的に地域銀行の割合が高い。2009年度(2009年4月から20103月末までの1年間)では、実数にして地域銀行は約2万7千件、信用金庫・信用組合で約6千件、地域金融機関 の計約33千件にのぼる。

その後のデータを入手することができなかったので、代替的に全国地方銀行協会のデータに基づいて地方銀行(64 行)のビジネスマッチング活動を2008年度から2012年度まで追ってみた。その結果が下記の図である。この間、約 2倍に増えた。地方銀行でみると、継続的にビジネスマッチングは進められている。このような動きは後にみるよう に他のアクターからもよい評価を得ている。

但し地域のアクターにとって地域金融機関のビジネスマッチングが直ちに売り上げの急拡大に結びついているか どうかについては検証ができておらず、この点についての留保は必要であろう。

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図 4-3 地方銀行のビジネスマッチング成約件数(出所:全国地方銀行協会資料をもとに筆者作成)

創業・新事業支援融資

創業を目指すものや新事業開拓を目指すものがそれぞれ地域金融機関から必要資金を借り入れ、それを原資に営業 資産を取得し、営業収益によって返済が進めば理想的である。そうであれば今日問題視されている開業率廃業率逆転 に表れる問題の解決が容易になるかもしれない。

地域金融機関にとって創業・新事業支援融資は実は簡単なものではない。地域金融機関は取引先との長い取引履歴 を基礎とした関係に依拠した融資に慣れている。言い換えれば過去からの取引先の返済履歴(track record)を信用判 断の基礎においている。この点からすると、営業履歴のない創業支援融資は、本来的な得意分野ではない。また取引 先が新しいビジネス分野を開拓するときに提供しうる新事業支援資金も、営業収益の履歴がないという意味において 得意な分野とは言えない。

しかしそれにもかかわらず地域の経済成長には創業や新事業を後押しする融資は必要であり、そうしたニュービジ ネスが成長すれば新規貸出の増加によって地域金融機関の経営状況も安定し、取引先とともに成長することができる。

こうしたインセンティブがあるために、地域金融機関は創業・新事業支援融資に応じる意味がある。そのための具体 的な仕組みを地域金融機関がどのように備えておけばよいのかについては、後掲の章において述べる。

創業・新事業支援融資の経過は下の図のとおりである。

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図 4-4 創業・新事業支援融資(件数) (出所:金融庁資料をもとに筆者作成)

2003年度から2006年度の間にかけて件数は3倍に増えた。特に2005年度と2006年度は金融庁の施策である「地 域密着型金融新アクションプログラム」の実施年度であった効果が大きい。

実行金額でみると下記の図のとおり、件数と同じ傾向を示している。

図 4-5 創業・新事業支援融資(金額) (出所:金融庁資料をもとに筆者作成)