• 検索結果がありません。

( 1)「 和 解 」 と 「 調 解 」 の 概 念

「和解」とは、当事者同士が協議して譲歩し、紛争解決の合意に至る場合を指す。訴訟外で当 事者同士が和解することもあれば、訴訟継続中又は判決が出されたが執行される前に当事者同士 で和解することもある。

これに対して、「調解」とは、第三者が関与して当事者を和解させる場合をいう。裁判官が関与 する訴訟上の調解が典型例であるが、訴訟外で第三者が関与する調解もある。

民事訴訟法9条によれば、人民法院が民事事件を審理する場合には、自由意思及び適法という 原則に基づいて調解を行わなければならない。調解が成立しなかった場合には、速やかに判決し なければならない。同法には「調解」という章もあり、人民法院が可能な限り早い段階から調解 を試みなければならない(86 条)。調解は、審理終結後、判決言渡し前にも試みられ(128 条)、

控訴審でも試みられる(155条)。

この他、当事者の間で、訴訟中、訴訟後から執行開始前及び執行段階のいずれにおいても自ら 和解することができ(51条、207条)、合意した場合には、和解協議書を締結する。

( 2) 特 許 権 侵 害 訴 訟 に お け る 和 解 と 調 解

特許権侵害訴訟において、特許権者が勝訴した場合の人民法院の判決文は、「権利侵害の差止」

という抽象的な文言に止まり、具体的な禁止行為を列挙することは少ない。一部の人民法院の判 決において権利者の金型廃棄の訴訟請求が認められることもあるが、多くの場合、被疑侵害者に 対し権利侵害製品の廃棄や機器、設備の廃棄を判決において直接命じることはない。また、勝訴 判決の中で、被疑侵害者に対し係争特許の無効宣告請求を取り下げるよう命じることもできない。

これらのことは、判決文に記載してもらうことは困難であるが、当事者が合意すれば、和解協議 書に記載することは可能である。

そもそも、特許権者が特許権侵害訴訟を提起する目的は、多くの場合、単に損害賠償の獲得だ

けにあるのではなく、より重要なこととして、権利侵害者が将来再び特許権を侵害しないように することである。そのため、特許権者としては、権利侵害者との間で和解を行い、権利侵害者に 無効宣告請求の取下げを要求し、権利侵害製品及び金型等を廃棄すること等を条件に損害賠償額 を適当に減免する方法を検討することもできる。

以下のサンプルは、終審判決が出されてから執行までの前に、特許権者と被疑侵害者が締結し た和解協議書の例である。

和解協議書の例 和解協議書

甲(原審原告):A株式会社

住所:_______________

法定代表者:○○○○

乙(原審被告):B有限公司

住所:_______________

法定代表者:○○

○○○高級人民法院が 20○○年○○月○○日付けにて出した(20○○)高民終字第○○○○

号民事判決(以下「本件」という)において、乙の上訴を棄却し、原判決を維持することが最終 審として判決された。本件第一審判決((20○○)二中民初字第○○○○号、以下「第一審判決」

という)によれば、乙は、権利侵害製品の生産及び販売を直ちに停止し、かつ 20○○年○○月

○○日までに甲に対し人民元____元の特許侵害に係る損害賠償金及び第一審の訴訟費用人 民元____元、合計人民元____元を支払うべきである。

以上に鑑み、ここに甲乙双方は、合意のうえ、権利侵害に係る損害賠償金、訴訟費用等の支払 及び権利侵害行為の停止等の関連事項について、和解に達し、かつ和解協議書(以下「本協議書」

という)を締結する。

1 生 産 販 売 及 び 許 諾 販 売 の 停 止

1.1 乙は、甲の特許権を侵害した権利侵害製品X型及びY型の生産、販売を直ちに停止し、か つその○○支店に、かかる2種類の型番の製品の販売を停止するよう命じ、かつ今後は権 利侵害製品を生産、販売しないことを保証させる。

1.2 乙のホームページ及びインターネットショップに含まれる権利侵害製品の情報について、

乙は直ちに削除しなければならない。

2 廃 棄

乙は、本協議書の締結日から○○日以内に、権利侵害製品の製造に用いる全ての専用金型を廃 棄し、在庫となっている権利侵害製品の製品及び半製品等を廃棄する。

3 損 害 賠 償 金 等 の 支 払

3.1 乙は、本協議書の締結日から○○日以内に、甲が別途指定する銀行口座に損害賠償金及び

訴訟費用の合計金額人民元____元を一括で支払う。

3.2 上記の金額の為替レートは、送金日に中国人民銀行の公布した人民元対日本円の中間値に

よるものとする。送金に関する全ての費用は、乙が負担するものとする。

4 無 効 宣 告 請 求 の 取 下 げ

乙は、本協議書の締結日から○○日以内に、国家知識産権局専利復審委員会に対して、特許番 号○○○○○○の特許についての立件番号○○○○及び○○○○の無効無効宣告請求を取り下 げる。

5 秘 密 保 持

甲乙双方のいずれの一方も、本協議書及び本協議書の内容を秘密として保持し、相手方当事者 の同意を得ていない場合は、いかなる第三者に対しても開示、漏洩又は公開してはならない。

6 解 除

乙がかかる期間内に本協議書に定める義務を履行しなかった場合、甲は、書面により乙に本協 議書の解除を通知する権利を有し、かつ人民法院に第一審判決の強制執行を申し立てる権利を有 する。

7 準 拠 法

本協議書の締結、効力、解釈、履行及び紛争の解決に関しては、全て中国法を適用する。

8 そ の 他

本協議書は甲、乙双方の授権代表が署名捺印した日より効力を生じる。甲、乙双方がそれぞれ 一部ずつ保有する。

甲:A株式会社(印) 乙:B有限公司(印)

法定代表者:○○○○(署名) 法定代表者:○○(署名)

____年____月____日 ____年____月____日