5.3 適応 H ∞ 視覚フィード バック制御則
5.3.1 受動性に基づく視覚フィード バック制御則
マニピュレータの受動性に基づく制御により, 適応H∞ 視覚フィード バック制御則を導 出するために,重要な補題を2つ示す.
5.3. 適応H∞視覚フィード バック制御則 47
補題 5.1 つぎの微分方程式を考える.
M(q) ˙ξ=−C(q,q)ξ˙ −K1ξ+k2JpT(q)R(q)f+ν f˙=−sλα
zwoRT(q)Jp(q)JpT(q)R(q)f− sλ
zwoRT(q)Jp(q)ξ−RT(q) ˙R(q)f (5.9) ここでM(q), C(q,q)˙ はそれぞれ性質2.1, 2.2および 2.4を満足する. K1は正定対称行列, k2とα, s, λ, zwoは正のスカラ, RはSO(2)の元, Jpは正則行列とし,すべてのqに対して その特異値は有界であると仮定する. またνはシステムψの出力であり,システムψは入 力−ξから出力νにおいて,一階微分可能な正定関数Vψに関して受動性を満足している.
ならば, ξ ∈L2∩L∞かつ, f ∈L2∩L∞であり, t → ∞のときf →0となる. またνが有 界ならば,ξはt→ ∞でゼロへ漸近的に収束する.
証明 : つぎの正定関数を考える.
Wψ =V +Vψ (5.10)
ここでV は,
V = 1
2ξTM(q)ξ+ k2zwo 2sλ kfk2
である. ここでV を式(5.9)の解軌道に沿って時間微分すると,
V˙ =ξTMξ˙+ 1
2ξTM ξ˙ +k2zwo sλ fTf˙
=−ξTK1ξ−k2αfTRTJpJpTRf +ξTν +k2ξTJpTRf −k2fTRTJpξ+ 1
2ξT( ˙M −2C)ξ− k2zwo
sλ fTRTRf˙ ここでM˙ −2CとRTR˙ の歪み対称性を利用すると,
V˙ =−ξTK1ξ−k2αfTRTJpJpTRf +ξTν (5.11) となる. またシステムψが−ξ→νにおいて,一階微分可能なVψに関して受動性を満足し ているので,受動性の定義2.2より,
V˙ψ ≤ −ξTν (5.12)
が成立する. 以上よりWψの式(5.9)の解軌道に沿った時間微分は, W˙ψ≤ −ξTK1ξ−k2αfTRTJpJpTRf +ξTν−ξTν
48 第5章 視覚フィード バックシステムの適応H∞制御
=−ξTK1ξ−k2αfTRTJpJpTRf
=− ξT fT
K1 0 0 k2αRTJpJpTR
ξ f
≤0 (5.13)
となり, 準負定関数となる. ここでWψはその時間微分が正にならないことから非増加 関数であり, Wψ(0)の有界性を仮定すれば Wψ ∈ L∞となる. V および Vψは正定関数で あるので, V ∈ L∞, Vψ ∈ L∞であり, V は[fT ξT]T の二次形式で与えられることから [fT ξT]T ∈ L∞ となる. ξの定義とJpの有界性を利用すると, ˙q ∈ L∞となる. よって式 (5.9)からf˙∈L∞となる. つまりfは一様連続である. つぎに式(5.13)を0からT まで積 分すると,
−Wψ(0)≤Wψ(T)−Wψ(0) ≤Z T
0
W˙ψdt つまり,
Z T
0 (kξk2+kfk2)dt≤ Wψ(0)
max(σM(K1), k2ασM(Jp)2) <∞ (5.14) となる. このことからξ∈L2, f ∈L2が成立する.
その上ξ∈L∞も性質2.1, 2.4とJpおよびψの有界性の仮定から確認することができる.
よってξも一様連続であることが証明された.
最後にL2に属し一様連続な信号はt→ ∞で0へ収束すること[22]で証明は完了する.
(Q.E.D.) 補題 5.2 入力r= [dT bT]T から出力z = [fT ξT]のシステム
M(q) ˙ξ=−C(q,q)ξ˙ −K1ξ+k2JpT(q)R(q)f +d+ν f˙=−sλα
zwoRT(q)Jp(q)JpT(q)R(q)f − sλ
zwoRT(q)Jp(q)ξ−RT(q) ˙R(q)f + sλ zwoRTb
(5.15) を考える. ここでM(q),C(q,q)˙ はそれぞれ性質2.1, 2.2および2.4を満足する. K1は正定 対称行列, k2とα, s,λ, zwoは正のスカラであり, K1,k2とαに関してはつぎの行列
P =
K1− 12I− 2γ12I 0
0 k2αJpJpT − 12I− sγk222I
(5.16)
を準正定にするように選ばれている. RはSO(2)の元, Jpは正則行列とする. また ψ :
−ξ →νは, 微分可能な正定関数Vψに関して受動性を満足する. 以上の仮定のもとでシス テム(5.15)はγ以下のL2ゲインを有する.
5.3. 適応H∞視覚フィード バック制御則 49
証明 : 定理4.2の証明から行列Pを正定にするようにゲインが選ばれているならば,ν= 0 の場合に正定関数V = 12sTM s+ k2sλzwokfk2 の解軌道に沿った時間微分は,
V˙ +1
2kzk2−γ2
2 krk2 ≤0 を満足する. しかしν 6= 0ならば上式は,
V˙ + 1
2kzk2− γ2
2 krk2 ≤ξTν
となることは簡単な計算から明らかである. また−ξ → νは正定関数Vψに関して受動性 を満足する仮定から,
V˙ψ ≤ −ξTν が成立する. そこで,
Wψ =V +Vψ としてその解軌道に沿った時間微分を求めると,
W˙ψ +1
2kzk2− γ2
2krk2 ≤ξTν−ξTν = 0 (5.17) であり, この式は供給率 γ22krk2 − 12kzk2, 蓄積関数Wψとしたときの微分消散不等式であ る. よってシステム(5.15)はγ以下のL2ゲインを有する.
(Q.E.D.) この2つの補題は 2. 4 節で紹介した定理2.1を視覚フィード バックシステムの制御へ拡 張したものである. この2つの補題を利用して以下では適応H∞視覚フィード バック制御 則の提案と解析を行う.