A.3 ラサールの不変定理
ラサールの定理とは−V˙ の正定性が成立しない場合でも漸近安定性を保証する定理の 一つである. ラサールの定理は時不変システムにのみしか適用できないが, オイラーラグ ランジュの運動方程式であらわされる機械システムの制御では重要な役割をもつ. 以下で は初期時刻t0において初期状態x0からのシステムx˙ =f(x)の解軌道をs(t, x0, t0)と表記 する.
定義 A.8 集合M ⊂Rnが正の不変集合であるとは,すべてのy∈Mかつt0 ≥0に対して,
s(t, y, x0)∈M, ∀t≥t0 (A.5)
を満足する場合をいう.
この不変集合を利用してラサールの定理はつぎのように与えられる.
定理 A.3 正定関数V に対してコンパクト集合Ωc ={x∈Rn:V(x)≤c}上でV˙(x, t)≤0 として,ここでS:={x∈Ωc : ˙V(x) = 0}とする. またMをS内の最大不変集合と仮定す る. ならばt→ ∞で解軌道は集合M内へ収束する.
第 B 章
剛体の運動
ここではカメラモデルやマニピュレータの運動学の基礎となる剛体の運動に関する概要 を示す. 各性質の証明などは省略するが文献[47]が非常に詳しくわかりやすい良書である.
B.1 回転運動
剛体の運動の表現においてもっとも取り扱いに注意しなくてはならない運動が回転運 動である. 図B.1のように実線の軸で基準座標Aを破線により対象座標系Bをあらわす.
xab, yab, zab ∈ R3はそれぞれAからみたBの各軸座標をあらわしている. この3つのベク トルをならべたつぎの3×3行列
Rab =
xab yab zab
は回転行列と呼ばれる.
B.1.1 回転行列の性質
すべての回転行列Rは行列式が+1で直交行列となる. この2つの性質を満足する3×3 行列すべての集合はSO(3)の元である. 本研究ではSO(3)とSO(2)(平面上の回転)が非 常に重要となる. またSO(n)は行列の積に関して群をなしていることに注意する1. つま りSO(n)はn次元回転群とも呼ばれる.
1SO(2)は可換でもあるのでアーベル群である.
106
B.1. 回転運動 107
q
x
y z
abA
B y
z
x
ab
ab
図 B.1: Rotation of a rigid object
回転行列R ∈SO(3)は, 座標変換においても重要な役割を有している. 図B.1のように
点qを考える. この点qのBからみた座標をqb = [xb yb zb]T とする. このときqのAにお ける座標は,
qa =xabxb +yabyb+zabzb
で与えられることは図B.1より明らかである. これを行列表現すると,
qa =
xab yab zab
xb yb zb
=Rabqb
となる. つまり回転行列RabがBからAへ点qの座標変換をあらわしている. また同様の 変換でつぎの関係も導出できる. RabをAにおけるBの回転行列とし, RbcをBにおける Cの回転行列とする. ならばAにおけるCの回転行列は,
Rac =RabRbc (B.1)
で与えられる. またSO(3)は行列の積に関して閉じていることから, Racもまた回転行列 である.
回転行列に対してはつぎの重要な補題が成立する.
補題 B.1 回転行列R ∈SO(3)とベクトルv, w∈R3を考える. つぎの性質がある.
R(v×w) = (Rv)×(Rw) (B.2)
RwRˆ T = (Rw)∧ (B.3)
108 付 録B 剛体の運動