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協同記録作成を基にした対面議論への参加支援

ドキュメント内 コラボレーション支援に関する研究 (ページ 55-59)

3.5 本研究の位置づけ

3.5.3 協同記録作成を基にした対面議論への参加支援

議事録とコンセプトマップ型との比較検討を行った結果,ホワイトボード型ならびにコ ンセプトマップ型のツールは,複数人のユーザが同時に書き込むことができる一方,以下 の点で問題があると考えた[17].

• 論点が要約して示されない

このため,文脈が明示的に見えにくい.項目の相互関係について方向性を示すもの もあるが,マップ全体での論旨が明示されない.このため,単体では結論にあたる ものは示されず,単に参加者の意見が集積されただけにすぎないものになる可能性 がある.

• 再利用可能性と編集可能性が低い

議論の蓄積と継承を行うにあたっては,画像のままの形では情報の集約度が低い.

簡潔に記述し精練された状態で残すためには,文章の形で整形する必要が生じる.

• 画面領域による制約を受ける

項目の拡張方向は指向性を持つものではなく四方八方に延伸してゆき,議論の結果 を反映させて項目を増やしていくと俯瞰が難しくなる.

チャットやIM(インスタントメッセンジャー)などのツールは遠隔コミュニケーション のツールであるが,記録作成のために対面の議論に持ち込むことも可能である.議論の経 過を忠実に記録することができる反面,時系列順に記録されるため重要な発言が全体の中 に埋もれてしまったり,議論が発散しやすいという性質を持つ.さらに,有効に再利用す るためには議論の後に発言の重要性や話題,文脈などに配慮して記録を再編集する必要が ある.このため,本研究が提案している用途には適さない.

電子白板のうち,協調作業ウィンドウを投影するタイプのものを用いて,エディタを複 数のユーザで共有することも可能である.この場合も,共有しているアプリケーションを 同時に操作することができるのは一人であり,他のユーザが操作するには操作権の取得が 必要となる.

いずれも対面議論での利用を前提としていないが,これらの研究で指摘された排他制御 などに関する知見については,本研究において参加を促すために考慮すべき点であると考 えられる.

Dynacs[50, 95]は,いずれも,操作権を取得したユーザが独占的に操作する方式のため,

本研究の目的であるメンバーが同時に編集できることによる参加促進については対象と していない.

ShrEdit[11]は円滑な共同での文書編集そのものを目的としており,そのために必要な アウェアネスに関する機能を実装している.しかしながら,本研究は対面会議への参加支 援に焦点を当てており,その実現手法として議事録の協同作成を取り上げている.各ユー ザが個別に操作し,同時に編集できるという点を始めとして,本研究で提案するツールと

ShrEditが共通して持つ機能もある.しかし,ShrEditには参加支援という観点から必要

な機能が不足しているため,我々は参加支援に必要なアウェアネス機能を検討し,参加を 最大限支援するために特化した記録の協同作成ツールを設計した.具体的な設計に関する

ShrEditとの差異については,第6章で詳述する.

3.6 まとめ

実空間コラボレーション支援におけるアウェアネス情報は多岐に渡るだけでなく,対象 となる協調作業やその支援手法により,アウェアネスの機能に求められるものも異なる.

本研究ではアウェアネス情報は遍在すべきものと考える.すなわち,遍在するセンサやデ ジタルデバイス,アプリケーションやデータ空間といったものの状況情報が,協調作業の ために利用されることである.ユビキタスコンピューティングやセンサネットワークの研 究は多いが,本研究ではその次の段階として,ユビキタスなアウェアネス情報を利用して 状況察知を行うコラボレーション環境をデザインすることを目的としている.

その上で,本研究は実空間コラボレーションの支援環境を構築するため,従来の対面会 議などの活発なコラボレーションだけではなく,対面会議の場に至るまでの空間や場の状 況を含めた支援を行う.また,対面会議における参加者の理解を促進し,創造性を高める ための手法について検討を加える.このような複合的なコラボレーションの場面を支援 するための一貫したアプローチとして,アウェアネス情報の収集と提示,ならびにコラボ レーション場における距離と接近の概念を取り上げ,状況察知の必要性について述べた.

これらのアプローチは,これまでの協調作業支援の研究による知見のみならず,ユビキ タスコンピューティングに関する技術の発展により実現が可能となったものである.本章 では,遍在するデジタルデバイスを活用した実空間コラボレーション支援手法のビジョン を示した.次章以降において,それぞれの実空間コラボレーションのフェーズにおける支 援内容について具体的に述べる.

ンタラクション支援

CollaboGate, ThermoSpheric Gate & AtmoSpheric Gate

4.1 はじめに

本章では,出入り口空間におけるインタラクション支援サービス,活動度情報の収集・

提示手法の評価と応用方法について議論する.

これまで,ユーザは能動的にコンピュータとインタラクションを行ってきた.実空間に おけるアウェアネスを考慮したコラボレーション支援もまた,メンバーが一ヶ所に集まる 同期対面環境を対象とした会議支援システムの研究を中心に行われてきた.しかし,ユビ キタスコンピューティングの浸透により,コンピュータはユーザのいる物理的環境に埋め 込まれ,日常生活とシームレスに統合されつつある[3].ネットワークに接続されたデジタ ルデバイスが,グループでの活動のあらゆる場面に遍在するようになった.また,協調作 業空間のみならず,多くの人が集まる「場」を対象とした情報提示サービスが,美術館や ショッピングモール等の場所で提供されている.これらは訪問者をRFIDなどの無線デバ イスを用いて識別し,携帯端末や場の周辺に存在するディスプレイ(Peripheral Display) に場所や各ユーザの嗜好に応じた情報を提示したりしている.また,それらの情報をユー ザ間で共有することで場のコミュニティ構築を支援するという試みもある[81].これらの 研究では,事前に個人のプロフィールを収集したり,事後に電子メールなどを用いて関連 情報を配信する等の付随的サービスを提供している.

しかしながら,これらのサービスは一般的にある1つの空間内で完結しており,外部空 間との関連性や連動性について検討されていることは少ない.ユーザが空間を移動する際 に無線通信をどうローミングするか等の技術的課題についての検討はされているが,我々 は空間の移動というユーザの行為に対してどのようなサービスが必要であるかを検討す る必要があると考えた.

そこで,まず協調作業空間にアプローチする「出入り口」をインタラクションの場と 捉え,出入り口空間におけるグループの支援環境を構築する.出入り口空間での活動は,

その内容や所要時間などの点において従来の協調作業空間とは異なる特性を持つ.まず,

センサを組み合わせたことによるアウェアネス情報の収集と,集めた情報の蓄積・提示を 行うインタラクション支援システムであるCollaboGateの提案を行う.CollaboGateは,

RFID等のセンサを用いたアウェアネス情報の収集部分,集めた情報の蓄積・管理部分,

ディスプレイ部分等の出力インターフェースによる情報提示部分から構成される.

次に,オフィスや研究室等の作業空間の出入り口に接近したユーザに対して,空間内部の 雰囲気情報およびその推移を出入り口空間において直感的に提示する手法を議論する.出 入り口空間において,これから移動する空間の内部がどのような状況にあるかを認識する ことは難しい.また,仮に内部を覗くことによりその場の現況を認識することはできても,

現在までの作業空間内の状況推移を瞬時に把握することは不可能である.このため,イン タラクションの契機を逸する可能性がある.そこで,CollaboGateが収集した情報をもと に,場の雰囲気はどのような要素から推測されるかを検討する.人の活動度とその推移等

の外から見えない空間内部の状況の推移を,色表現や3次元表現を用いてCollaboGateの 表示インタフェース上に提示し,グループにおけるインタラクションの支援を行った.ま ず,映像と音声をもとに雰囲気を検知するプロトタイプシステムTS-Gate(ThermoSpheric

Gate)の設計と実装,評価結果を行った.その結果必要と考えられたユーザの行動履歴や

属性等の情報を追加し,雰囲気情報を伝達するシステムAS-Gate(AtmoSpheric Gate)を 提案する.

これらのシステムを用いた評価実験から,ユーザが作業空間に入る前に内部の雰囲気を 察知できるようになることで,グループの作業効率化やコミュニケーションの活発化を促 進する可能性を見出した.

以下,まず4.2 節において,出入り口空間と雰囲気情報について詳述する.4.3節で 出入り口空間におけるグループ支援環境CollaboGateについて述べ,4.4 節に実装した CollaboGateのシステムを説明する.

次に,4.5節で対象とする作業空間と,その雰囲気を決定する要素について議論する.ア ウェアネス情報の収集と雰囲気情報の算出ならびに効果的な提示手法について検討し,4.6 節で,カメラ・マイクと色相を用いたプロトタイプシステムの実装について説明する.4.7 節で述べた評価実験の内容と結果から,雰囲気の伝達に必要なアウェアネス情報にユーザ の行動履歴や属性等の要素を追加した.4.9節で雰囲気の伝達に必要なアウェアネス情報 を収集・提示するアプリケーションAS-Gateの詳細を述べるとともに,4.10節において 実際の作業空間での評価実験と,その結果明らかになった事項の検討を行い,4.11節でま とめとする.

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