5.1. 特例措置に基づくいわゆる「1人訪問看護ステーション」
2011 年 4 月 22 日、厚生労働省通知により、基準該当居宅サービスに該当す る訪問看護サービスを実施する事業所の人員基準に対する特例措置が講じられ た68。指定訪問看護事業所の人員基準では、保健師、看護師または准看護師は、
常勤換算方法で 2.5 以上必要であるが69、東日本大震災災害救助法適用地域で は(東京都を除く)、2012年2月29日までの間、保健師、看護師または准看護 師の員数は常勤で1人以上とされた70。
この特例措置にもとづき、福島市が2012 年1月 23日に、1人開業事業所の 申請を認可し、2月1日に1人事業所が開設された。
特例措置の期限は、2012 年 9 月 30日まで延長されたが、福島市は、通常の 訪問看護ステーションでカバーする余力があること等を理由として、2月末日で 特例措置を打ち切った71。そのため、当該事業所は福島市の住民にはサービスを 提供できなくなったが、事業認可を得ている飯館村、浪江町と南相馬市に住所 を登録し、福島市で避難生活を送っている人へのサービスは提供できることに なっている。
5.2. 復興特区における医療法の緩和
2011年12月26日、東日本大震災復興特別区域法が施行され、被災3県を始 めとする被災地域のニーズを踏まえ、病院の人員配置に関する特例措置が織り 込まれた。この特例措置の適用を受けるには、特定地方公共団体(道県)が「地 域医療確保事業」を定めた復興推進計画を策定し、それを内閣総理大臣が認 定(厚生労働大臣が同意)する必要がある。
医療分野における復興特区制度における特例措置(概要)
I.医療法施行規則第19条3項
・人員配置基準の算定に当たって、入院患者、外来患者及び取扱処方箋の数に ついて、通常前年度の平均値を用いて計算するところを、地域の実情に応じ、
妥当な方法により計算された数(直近3ヶ月の平均値等)を用いることを可 能とする。
・特定地方公共団体が定める事業期間(最長で施行後5年)
Ⅱ.医療法施行規則附則第50条
・病院における医師配置基準を通常の9割相当まで緩和する(最低数は3人)
・要件
① 他の病院又は診療所との密接な連携を確保する等適切な医療を提供す るための取組を行うと認められる病院であること
② その所在する地域における医療提供施設の整備の状況等からみて、当 該地域の医療を確保する上で当該病院が不可欠であると認められる病 院であること
③ 必要な医師を確保するための取組を行っているにもかかわらず、なお 医師の確保が著しく困難な状況にあると認められる病院であること
・適用開始から3年間(申請は事業期間内に行う必要)
また、東日本大震災復興特別区域法にもとづき、特別養護老人ホームにおける 配置医師要件、老人保健施設における医師要件、訪問リハビリテーション事業 者の開設要件も見直された。
特別養護老人ホームにおける配置医師要件の緩和(2011年12月26日施行)
特別養護老人ホームには、配置医師を置かなければならないが(特別養護老人 ホームの設備及び運営に関する基準第12条第1項第2号)、東日本大震災の被 災地72では、病院もしくは診療所、介護老人保健施設等との密接な連携を確保し、
入所者に対する健康管理及び療養上の世話を適切に行なうと認められるものに ついては配置医師を置かなくても良いという特例措置が設けられた73。
これにともない、病院、診療所、介護老人保健施設または他の特別養護老人ホ ームの医師が定期的に特別養護老人ホームに訪問して医学的健康管理を行なう 場合の診療報酬の請求に関しては、配置医師と同じ扱いとし、初診料、再診料 及び往診料等が算定できないことになった74。
介護老人保健施設における医師数要件の緩和(2011年12月26日施行)
介護老人保健施設における医師は、入所者 100 人に対して 1人以上を置かな ければならないが(介護保険法第97 条第 2項)、東日本大震災の被災地では、
病院または診療所との密接な連携を確保し、入所者に対する看護、医学的管理 の下における介護及び機能訓練などを適切に行なう場合に、実情に応じた適当 数をおけば良いことになった。
訪問リハビリテーション事業者の開設要件の緩和(2011年12月26日施行)
訪問リハビリテーション事業所は、病院、診療所、介護老人保健施設でなくて はならないが(介護保険法)、東日本大震災の被災地では、病院もしくは診療所、
介護老人保健施設との密接な連携を確保した場合に、開設主体が限定されない ことになった75。なお、ただし、介護保険法で定められているように、主治医の 指示がなければ訪問リハビリテーションは実施できない。
以上の特例措置を受けて、岩手県と宮城県では、次のような復興推進計画 が提出された。
(参考)岩手県保健・医療・福祉復興推進計画
1.申請日:2012年1月31日、認可日:2012年2月9日 2.計画期間:認定日から2017年3月末まで
3.計画内容
(1)地域医療確保事業
・配置すべき医療従事者数の計算に当たり、入院患者、外来患者及び取扱 処方箋の数について、前年度の平均値の代わりに直近 3 か月間の平均値 を用いること。
・医師配置標準を通常の90%相当に緩和すること(ただし、3人は下回ら ないものとする)。
(2)薬局等整備事業
(3)訪問リハビリテーション事業所整備推進事業
病院若しくは診療所又は介護老人保健施設との密接な連携を確保し、指 定訪問リハビリテーションを適切に行うと知事が認める者については、特 例命令の規定により、指定訪問リハビリテーション事業所の開設を認める こととする。
(4)介護老人福祉施設等整備推進事業
病院、診療所若しくは介護老人保健施設又は他の介護老人福祉施設等と の密接な連携を確保し、入所者に対する健康管理及び療養上の世話を適切 に行うと知事(地域密着型介護老人福祉施設の場合にあっては、市町村長)
が認める者については、特例命令の規定により、介護老人福祉施設等に医 師を配置しないことができるものとする。
(5)介護老人保健施設整備推進事業
病院又は診療所との密接な連携を確保し、入所者に対する看護、医学的 管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の 世話を適切に行うと知事が認める者については、特例命令の規定により、介 護老人保健施設の医師の配置を実情に応じた適当数とすることができるも
のとする。
(6)介護予防訪問リハビリテーション事業所整備推進事業
病院若しくは診療所又は介護老人保健施設との密接な連携を確保し、指 定介護予防訪問リハビリテーションを適切に行うと知事が認める者につい ては、特例命令の規定により、指定介護予防訪問リハビリテーション事業所 の開設を認めることとする。
(参考)宮城県保健・医療・福祉復興推進計画 1.申請日:2012年3月16日
2.計画内容
(1)医療復興推進事業
・ 病院の人員配置標準の算定に当たっては、通常前年度の平均値を用いて 計算するところ、東日本大震災の影響により入院患者の数等が変動した ことに伴い、前年度の平均値を用いて計算した配置すべき医療従事者の 員数が現在の入院患者の数等に比して多く計算されてしまう場合、病院 からの申し出により、直近3か月の平均値等を用いて計算した数値を配 置標準とすること。
・ 病院からの申請により、一定の条件を満たす場合、医師配置標準を通常 の9割相当まで緩和してその定員を許可すること。(最低数は3人)
(2)薬局等整備事業
(3)医療機器製造販売業等促進事業
(4)高齢者福祉復興推進事業
・ 指定(介護予防)訪問リハビリテーション事業所整備:開設主体を病院、
診療所及び介護老人保健施設に限定しない。
・ 指定介護老人福祉施設等整備:医師の配置基準の緩和
・ 介護老人保健施設整備:医師の配置基準の緩和