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加齢男性性腺機能低下症候群患者に対する柴胡加竜骨牡蛎湯またはテストステロン投与後 のサイトカイン濃度の変化

ドキュメント内 CONTENTS 317 E 2012 BPSD 31 v BPSD i BPSD d BPSD e n c e (ページ 58-69)

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ン,遊離テストステロン,算定バイオ アベイラブルテストステロンには変化 が認められなかった(表1).さらに,

ホルモン補充療法群では投与前に 比べサイトカンに変化は認められな かったが,柴胡加竜骨牡蛎湯群で は

IL-8

IL-13

IFN-

γ

TNF-α

が有意に増加し(図1),有意に減少 したサイトカインはなかった.

考察・結論

LOH

症候群に対する治療として,

男性ホルモン補充療法は短期間で は有用であるが,長期間では身体 組成や骨量に対する影響を除いた としてもその効果はいまだ論争の 的となっている.以前,筆者らは 男性ホルモン補充療法で

LOH

患 者の

AMS

スコアおよび総テスト ステロン,遊離テストステロン,算 定バイオアベイラブルテストステ ロンを有意に改善したと報告した.

しかし,今回の検討では,男性ホル モン補充療法前後でサイトカイン の変化は認められなかった.その ため,

LOH

症状の改善効果は,血 中サイトカインにかかわらず,血 中テストステロンの変化と直接関 係していると示唆した.

しかし,内分泌正常で

LOH

状を有する患者に対し柴胡加竜 骨牡蛎湯を投与したところ,テス トステロンには変化が認められな かったが,

AMS

スコアはホルモン 補充療法と同程度改善した.つま り,柴胡加竜骨牡蛎湯による

LOH

症状の改善にはテストステロン濃 度が関与していないことがわかっ た.さらに,柴胡加竜骨牡蛎湯投 与後,サイトカインの

IL-8

IL-13

IFN-γ

TNF-α

が有意に上昇した

ことが示された.これらのサイト カインを増加させる柴胡加竜骨牡 蛎湯には,抑うつ症状のような精 神症状の改善,体重減少などの体 組成や骨に対する有益な効果もあ る可能性が推測される.

LOH

症状は血中テストステロ ンが低下している患者だけではな く,内分泌正常の患者でもみられ

る.これまでこのような患者に対 しどのような治療をすべきか問題 となってきたが,本研究の結果から,

このような内分泌正常で

LOH

症状 を伴う患者に対する治療の選択肢 の

1

つとして,柴胡加竜骨牡蛎湯を 考慮することができると考える.

1 Tsujimura A, et al. Aging Male. 2008, 11, p. 95-99

Science of Kampo Medicine 漢方医学 Vol.36 No.2  2012(59)149 表1 柴胡加竜骨牡蛎湯投与後のAMSスコア,テストステロンの変化

投与前 投与後 p

AMS 総スコア 52.2±11.8 44.8±12.6 p<0.01

 AMS精神・心理症状 15.9±6.30 12.5±5.70 p<0.05  AMS身体症状 21.5±5.20 18.0±5.80 p<0.05  AMS性機能症状 15.1±4.30 14.3±4.60 NS

総テストステロン(ng/mL) 4.61±1.03 4.69±1.03 NS 遊離テストステロン(pg/mL) 11.2±2.50 10.1±1.70 NS 算定バイオアベイラブル

テストステロン(pg/mL) 1.90±0.51 1.78±0.33 NS 平均±SD,Wilcoxonʼs rank sum test(vs投与前)

男性ホルモン

図1 柴胡加竜骨牡蛎湯投与後の血清中サイトカインの変化(n=15)

平均±SD,Wilcoxonʼs rank sum test(vs投与前)

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上垣 正彦

はじめに

筆者は,第68回日本消化器内視 鏡学会総会(2003年)において演題

「高齢者に負担の少ない大腸内視鏡 検査前処置法の試み」を発表した.

本研究は,洗浄液服用量を減量する ため検査前日に検査食と緩下剤(大 腸刺激性下剤),等張液(クエン酸マ グネシウム製剤)900 mLによる前処 置法を実施し,受容性,安全性,腸管 内洗浄効果を検討したものである.

本処置は高齢者の前処置法としても 有用と考えられたが,緩下剤服用後 のがまんできる程度の腹痛の発症頻 度が高く臨床的に課題が残された.

そこで漢方製剤の下剤で,鎮痙・

鎮痛作用のある 薬などを含む麻 子仁丸を併用し,緩下剤の服薬内 容を工夫して前述の評価項目を再 検討したところ,受容性,安全性お よび腸管内洗浄効果に関して良好 な評価が得られた.本処置は高齢

麻子仁丸併用の有効性

 高齢者の大腸内視鏡検査の前処置に緩下剤として使用する大腸刺激性下剤にはしばしば腹痛が認められ,QOL を低下させる一因となっている.筆者は,前処置に鎮痙・鎮痛作用のある 薬を含む麻子仁丸(TJ-126)を併用し,

受容性,安全性および腸管内洗浄効果に関して良好な評価が得られた.本処置は高齢者の大腸内視鏡検査の前処 置法として有用であると考えられたので報告する.

大腸内視鏡検査,前処置法,クエン酸マグネシウム製剤,麻子仁丸

察が可能)」,「やや不良(残渣が少 し認められるものの吸引や洗浄に より観察に支障を来たさない)」,

「不良」の3段階にて評価を行った.

成績

(1)検査前日の空腹感

「空腹感はなかった」が32例中24 例(75%),「あったががまんできた」

が8例(25%)であった(図1-①).

(2)検査当日の洗浄液の量と味 量に関しては「苦にならなかった」

が32例中28例(87.5%),「多すぎて 大変だった」が4例(12.5%)であった

(図1-②).味に関しては「美味しかっ た」が8例(25%),「苦にならなかっ た」が20例(62.5%),「苦になった」

が4例(12.5%)であった(1-③).

(3)緩下剤服用後の自覚症状の 発現

「がまんできる程度の腹痛があっ た」が32例中12例(37.5%),「腹 痛はなかった」が20例(62.5%)で 者の大腸内視鏡検査の前処置法と

して有用と考えられた.

対象と方法

対象は,当院で全大腸内視鏡検査 を施行した65歳以上の日常生活動作

(ADL)自立の外来患者32例で,内 訳は男性18例,女性14例,平均年 齢は73.4歳(6584歳)であった.

検査前日の昼食・夕食を大腸内視 鏡専用検査食とし,夕食後と就寝前 に,それぞれセンノシド2錠,酸化マ グネシウム3錠,麻子仁丸(TJ-126

2.5 g,さらに 就 寝 前 にはピコスル ファートナトリウム5 mLも服用させた.

検査開始予定時間の3時間ほど 前に,クエン酸マグネシウム製剤1

(50 g)を水道水で溶解し900 mL した等張液を服用させ,(1)検査前日 の空腹感,(2)検査当日の洗浄液の量 と味,(3)緩下剤服用後の自覚症状の 発現,についてアンケート調査した.

また,(4)腸管内洗浄効果につい ては,全結腸において「良好(有形 便がほとんど認められず良好な観

医療法人アンリー・デュナン会 深川第一病院内科(北海道深川市)

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(4)腸管内洗浄効果

「良好」が32例中18例(56.2%),

「や や 不 良」が14例(43.8%)で あった(図1-⑤).

考察

大腸内視鏡検査の前処置として,

等張液1,800 mL投与による腸管内 洗 浄 の 効 果と安 全 性については,

Davisらにより開発されたポリエチレ ングリコール電解質溶液2,000 mL 与の前処置法1)と,ほぼ同等の高い 評価を得ている2).さらに,等張液 はレモン味で飲みやすいため被検 者の受容性は比較的良いとされ る3).しかし,実際に1,800 mLもの 大量の等張液を短時間に服用する ことは,高齢者にはかなりの負担と なっていることも事実である.

そこで第68回日本消化器内視 鏡学会総会(2003年)において,洗 浄液服用量を減量する工夫として,

検査前日に大腸内視鏡専用検査食

(昼食・夕食用)と大腸刺激性下剤,

等張液を用いた前処置法で65歳以 上,平均年齢73.5歳(6584歳)

のADL自立の外来患者42例(男 性24例,女性18例)を対象とする 検討結果を発表した.これは検査 前日の午後9時頃に大腸刺激性下 剤のピコルスルファートナトリウム 5 mL,センノシド4錠,センナ1 g 等張液900 mLを併用する前処置法

(大腸刺激性下剤単独)で,受容性,

安全性ならびに腸管内洗浄効果を 検討したものである(図1右側).

本前処置法は,高齢者の前処置 法としても有用と考えられたが,緩下

剤服用後の「がまんできる程度の腹 図1 麻子仁丸を併用した前処置のアンケート結果と腸管内洗浄効果

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のある 薬などを含む麻子仁丸を併 用し,さらに緩下剤の服薬内容にも 工夫を凝らし,夕食後と就寝前にそ れぞれセンノシド2錠,酸化マグネシ ウム3錠,麻子仁丸2.5 gと,就寝前 にはさらにピコルスルファートナトリウ ム5 mLを併用した等 張 液900 mL の投与による前処置法(麻子仁丸併 用)で上記の評価項目を検討した.

検査前日の空腹感に関しては,

「なかった」と「あったががまんで きた」の割合が100%で,検査食の 用量について被検者から大腸刺激 性下剤単独群と同様の良好な評価 が得られた.

洗浄液(等張液900 mL)の量に 関しては,「苦にならなかった」の 割 合 が87.5%(32例 中28例),ま た味に関しては「美味しかった」と

「苦にならなかった」と感じた割合 が87.5%(28例)で,こちらも同様 に被検者から良好な受容性の評価 が得られた.

緩下剤服用後の自覚症状の発現 に関しては,大腸刺激性下剤単独 群で大腸刺激性下剤の腸管蠕動運 動亢進作用によると考えられる「が まんできる程度の腹痛」の頻度が 61.9%(42例中26例)と高かった.

一方,鎮痛・鎮痙作用のある 薬4,5), 筋弛緩・抗痙攣作用のある厚朴4,6) や平滑筋弛緩作用のある枳実4,7)を 組成として含む麻子仁丸併用群で は,「がまんできる程度の腹痛」の頻 度は,37.5%(32例中12例)と有意 に 減 少 し た(p0.05χ2検 定).

900 mL等 張 液 では,1,800 mL 張液の服用中や服用後にみられるこ ともある悪心・腹部膨満感・腹痛な

献的には問題ないとされている . 腸管内洗浄効果に関しては,麻子 仁丸併用群でも「良好」が56.2%(32 例中18例),「やや不良」が43.8%(14 例)で,大腸刺激性下剤単独群(「良 好」が42例中18例,「やや不良」が 23例,「不良」が1例)に比べて劣ら ない内視鏡観察に適した洗浄効果 が得られた.大腸刺激性下剤単独 使用と同様に洗浄液900 mLの服用 量で,ほぼ良好な腸管内洗浄効果が 得られたのは,検査食による前処置 効 果10,11)とセンノシド,ピコルスル ファートナトリウム,麻子仁丸に含ま れる大黄(麻子仁丸2.5 g中に大黄 の乾燥エキス0.176 gを含有)の大 腸刺激性下剤と塩類下剤の併用,さ らに麻子仁丸の組成中の杏仁・麻子 仁に含まれる脂肪油(オレイン酸な ど)の潤腸通便効果12)とが相俟って 相加的,相乗的に作用し洗浄効果を 向上させたものと考えられた.

以上の結果から,大腸内視鏡専 用検査食と麻子仁丸を含む緩下剤 を併用した等張液900 mLによる前 処置法は,被検者の受容性,安全性 および腸管内洗浄効果において,

良好な成績が得られ高齢者の大腸 内視鏡検査前処置法として有用な 方法であると考えられた.

まとめ

大腸内視鏡専用検査食と麻子仁 丸を含む緩下剤を併用した等張液 900 mLによる前処置法は,被検者 の受容性,安全性および腸管内洗 浄効果に関して良好な成績が得ら れ,高齢者にとって負担の少ない

追記

この要旨は第92回日本消化器病 学会総会において発表した.

● 文献

1 Davis GR, Santa Ana CA, Morawski SG. et al. Development of a lavage solution associated with minimal water and electrolyte absorption or secretion. Gastroenterology. 1980, 78, p.991.

2神長憲宏, 佐竹儀治, 宮津隆志, . マグコロールP等張液による大腸内 視鏡検査前処置. 新薬と臨牀. 1995, 44(10), p.166.

3多田正大, 棟方昭博, 松井敏幸. 化器内視鏡ガイドライン. 医学書院. 東京. 1995, p.85.

4谿 忠人. 枳実と枳殻. 漢方調剤研 . 2000, 8(6), p.14.

5山田光胤, 丁 宋鉄. 芍薬. 生薬ハン ドブック. 1989, p.69.

6雨谷 栄. 薬理講座23 厚朴. 漢方 と最新治療. 2011, 20(3), p.247.

7山田光胤, 丁 宋鉄. 枳実. 生薬ハ ンドブック. 1989, p.31.

8岩下悦郎, 小山 洋, 丹羽寛文. 全な内視鏡検査のために―下部消 化管 前処置法(2)大量マグコロール . 臨牀消化器内科. 1996, 11(10), p.1691-1696.

9桜井俊弘, 宗 祐人, 八尾健史, . マグコロールP等張液による経口腸 管洗浄法の評価. 臨牀と研究. 1995, 72(10), p.213.

10遠藤 徹,安彦隆一, 佐藤孝司, . 等張液を用いた大腸内視鏡検査前 処置法の比較検討. ―有効性及び 被検者の受容性について― 新薬と 臨牀. 2001, 50(4), p.41.

11外間政希, 渡邊 真, 高濱和也, . 大腸内視鏡検査食「エニマクリン CS」併用によるマグコロールP等張 液投与の検討. 日本大腸検査学会雑 . 2001, 18(1), p.202.

12山田光胤, 丁 宋鉄. 杏仁・麻子仁. 生薬ハンドブック. 1989, p.34149.

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