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は牛車腎気丸,

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牛車腎気丸による改善効果

トップ 3 は牛車腎気丸,

薬甘草湯,大建中湯

2012127日に開催された

「三豊・観音寺地域医療講演会」で

は,三豊総合病院の漢方薬の使用 状況が初めて報告された(57ペー ジ参照).その調査をまとめた薬 剤部の向井栄治先生(部長),加地 努先生(副薬剤部長),加藤友那先 生(漢方薬・生薬認定薬剤師)に聞 いた.

「今回の漢方講演会を開催する にあたり,院内で漢方薬がどの程 度用いられているか,白川院長から 調査依頼がありました.そこで電子 カルテシステムを導入した2006 2010年度までを対象に,院内の使 用動向を調査しました.また,当院 医 師(90人中46人回答:回答 率 51.1%)にアンケート調査を実施し,

使用の背景を調査しました.当院 では現在,院内で27品目,院外処 方も含めると73品目の漢方薬が使 用可能です」(向井栄治先生).

加地先生は漢方講演会で,その 使用動向調査を初めて報告した.

5年間のグロスでの漢方薬の使用 動向では,およそ1.6倍の増加傾 向にあったという(図2).

「科別にその使用量を見ると,増 加傾向にあるのは内科,皮膚科,神 経内科,耳鼻咽喉科でした(図3).

使用量は内科が最も多く,トップ3 は大建中湯, 薬甘草湯,六君子湯

加藤 友那

三豊総合病院 漢方薬・生薬認定薬剤師 加地  努

三豊総合病院 副薬剤部長 向井 栄治

三豊総合病院 薬剤部長

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Science of Kampo Medicine 漢方医学 Vol.36 No.2  2012(55)145 でした(図4).特に使用率が顕著

に増加したのは皮膚科です.これ は皮膚科内に「女性外来」が開設 されたためで,トップ3は柴胡加 竜骨牡蛎湯,白虎加人参湯,抑肝 散です(図5).皮膚科医に処方意

図を尋ねたところ,一番は脱毛で す.意外に多いのが抑肝散で,理 由はかゆみで眠れないためでした.

また,過去5年間の処方量動向 を見ると,トップ3は牛車腎気丸,

薬甘草湯,大建中湯の順(図6)で,

牛車腎気丸の処方割合は泌尿器科

(54%),内科(17%),外科(13%),

薬甘草湯は整形外科(53%),内 科(34%),神経内科(6%),大建中 湯は内科(59%),外科(26%),神 経内科(8%)などの順でした.さ

三豊総合病院(香川県観音寺市)

2 三豊総合病院の漢方薬使用量の推移 (加地 努) 3 三豊総合病院の漢方薬使用量(診療科別) (加地 努)

2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 1 牛車腎気丸 牛車腎気丸 薬甘草湯 牛車腎気丸 牛車腎気丸 2 薬甘草湯 薬甘草湯 牛車腎気丸 薬甘草湯 薬甘草湯

3 大建中湯 大建中湯 大建中湯 大建中湯 大建中湯

4 当帰 薬散 当帰 薬散 桂枝茯苓丸 当帰 薬散 抑肝散 5 桂枝茯苓丸 桂枝茯苓丸 当帰 薬散 加味逍遙散 六君子湯 6 釣藤散 六君子湯 加味逍遙散 補中益気湯 補中益気湯 7 加味逍遙散 大黄甘草湯 六君子湯 抑肝散 加味逍遙散 8 大黄甘草湯 加味逍遙散 大黄甘草湯 六君子湯 麦門冬湯 9 葛根湯 釣藤散 釣藤散 桂枝茯苓丸 当帰 薬散 10 十全大補湯 葛根湯 葛根湯 葛根湯 柴胡加竜骨牡蛎湯 図6 三豊総合病院における処方数の多い漢方薬(20062010年度)

(加地 努)

4 内科における漢方薬の使用状況(2010年度)

(加地 努)

5 皮膚科における漢方薬の使用状況(2010年度)

(加地 努) 図7 使用量の増えた漢方薬の処方動向 (加地 努)

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(56)Science of Kampo Medicine 漢方医学 Vol.36 No.2  2012

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らに,顕著に使用量の増加が見ら れた漢方薬は抑肝散,補中益気湯,

柴胡加竜骨牡蛎湯(図7)でした」

(加地努先生).

8 割近くが漢方製剤の 効果を実感

医師に対するアンケート調査で は,これまで漢方製剤を処方した 経験がある医師は41名(89%)に 及び,経験のない医師は5名(11%)

に留まった(図8-①).処方経験が ない医師は,本来処方数の少ない 外科,眼科,形成外科などだった.

「漢方薬の選択については,“ど ちらかと言えば西洋医学的” とい う答えを含めると80%以上の医 師が西洋医学的に選択しており,

東洋医学的に証を診て選択してい ると答えた医師は4名に留まりま した(図8-②).当院では西洋医学 の文脈の中で処方を選択している 傾向が明らかでした.そこで西洋 医学的観点から理解しやすいエビ デンスが揃えば,さらに漢方製剤の 使用量が増える印象を受けました.

また,治療効果については,“現われ ている”,“少し現われている”を合わせ

ると,81%の医師がその効果を実感 していました(図8-③)」(加地先生).

最近,漢方薬の臨床効果を報告 した文献が蓄積されつつある.新 たなエビデンスの出現により,漢 方製剤の使用状況も大きく変化し ており,また院内医師からはその エビデンスを求める声も多いと加 地先生は指摘する.

「当院では西洋医学的観点から 漢方製剤を処方する医師が多く,

またその種類も限定される傾向に あります.そこで,漢方薬・生薬認 定薬剤師を中心に,コンサルテー ションや処方提案を行うことによ り,薬剤師がよりよい漢方治療に 貢献することができると考えてい ます」(加地先生).

エビデンスを創る役割を 薬剤師がカバーする

漢方薬・生薬認定薬剤師の加藤 友那先生は,漢方製剤のエビデン ス重視の処方動向に対して,漢方 本来の治療効果を高める工夫も必 要なことを指摘する.

「私たちはエビデンスがある処 方を提案するだけでなく,患者さ

んのカルテから検査値などのデー タを見せていただき,そのケース に合うと考えられる漢方薬を医師 に提案させていただきますが,や はりまず聞かれるのはエビデンス があるかどうかです.12週間,

患者さんが服用して効果がなけれ ば,服用中止というパターンが多 いのです.そこで経験値をもう少 し増やしていき.エビデンスだけ でなく漢方医学的病態(証)を診 て提案する機会を増やしていくべ きではないかと思っています」(加 藤友那先生).

また,漢方薬の服薬指導につい て,加藤先生はよりきめ細かい戦 略を立てている.

「薬剤師の服薬指導が十分でない と,処方された漢方薬を患者さんはお 茶や水で服用していたりして,効果が 出にくかったり飲みにくいと訴えたりし ます.今,私は,単に患者さんが服用 しやすいだけでなく,たとえば漢方薬 の主な構成生薬の効果をわかりやす く説明し,また服用時の注意事項を記 した用紙を渡し,患者さんにとって本 当の意味で必要な服薬指導をしてい きたいと思っています」(加藤先生).

日常臨床の中で,漢方治療を適 8 三豊総合病院の医師を対象にした漢方薬に関するアンケート結果 回収率51.5%(46名/90名) (加地 努)

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Science of Kampo Medicine 漢方医学 Vol.36 No.2  2012(57)147 切に活かしていくために,向井先

生,加地先生に,薬剤師の立場か らアプローチできることを聞いた.

「これまで積み上げられた多くの エビデンスは,医師が臨床試験など を行って確立してきましたが,漢方 薬の場合,薬剤師がカバーしてエビ デンスを創れる機会も多いと思いま す.疾患本態への治療効果は別と して,患者さんの不快な症状を改善 する目的で漢方薬を処方するケー スもあります.こういう場合,エビデ ンスを創る役割を薬剤師が担い,こ こから適切な使用を拡大していく 道もあると思います」(向井先生).

「現在,西洋医学で難渋している 症状が多くあります.病棟でも不定 愁訴を訴える患者さんが多く,地域 医療では特に認知症の患者さんも多 くなってきています.冷え症や食欲不 振,疼痛,精神不穏などに漢方治 療が有用なことが多く,そういう症 状に,薬剤師が漢方治療を提案し

ていけば,患者さんのQOL改善に つながると思います」(加地先生).

病診・職種間での 共有が大切

向井先生に,今回開催した漢方 講演会の意義を聞いた.

「今回は広く門戸を開放し職種 を問わず参加者を募りました.そ こに大きな意義があると思います.

一人ひとりの患者さんをシームレ スに診ていく地域医療の立場から,

病病連携,病診連携,病薬連携,薬 薬連携などがきわめて重要です.

各職種スタッフ間でまず顏の見え る関係になること,同時に情報・

意識の共有が大事です.このよう な講演会はこれから地域連携には 重要な役割を果たしていくでしょ う」(向井先生).

三豊総合病院薬剤部では,地域 の薬剤師会と共催で「薬薬連携セ

ミナー」を開催している.病院薬 剤師と地域の保険薬局薬剤師との 連携,情報・意識の共有を目指す.

「漢方治療についても,こうした 薬薬連携を図りたいと思います.

漢方薬は処方箋だけからでは処方 意図が読み取りにくい部類の薬で す.病院薬剤師から保険薬局薬剤 師へ,処方意図や副作用,服薬指 導のポイントなどを伝え,共通の 情報・意識を持つことが,漢方治 療の有用性を引き出すことにつな がると思います」(向井先生).

地域医療では,なによりも地域 に点在する各施設,各職種間の緊 密な連携と情報の共有が必要だ.

三豊総合病院と地域医師会・薬剤 師会共催による漢方講演会は,そ の1つの意義深い試みとなった.

今,わが国固有の漢方という医療 資源の活用が,地域医療の現場で も求められている.

三豊総合病院(香川県観音寺市)

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