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剰余項のさまざまな表示

ドキュメント内 2009 IA I 22, 23, 24, 25, 26, a h f(x) x x a h (ページ 42-45)

この右辺にさらに部分積分をしましょう。今度は、

g(t) =f′′(t), h(t) = (x−t)

です。このようなh(t)として何を取るべきかはもうだいたい予想がつくでしょう。(x−t)の冪が 欲しいのですから、

h(t) =−1

2(x−t)2 がよいでしょう。すると、

x a

f′′(t)(x−t)dt=1

2f′′(x)(x−x)2+1

2f′′(a)(x−a)2+

x a

f′′′(t)(x−t)2 2 dt となります。前段落の式とあわせて移項整理すれば、

f(x)−f(a)−f(a)(x−a)−f′′(a)

2 (x−a)2=

x a

f′′′(t)

2 (x−t)2dt となります。つまり、これの右辺がR3(x)の表示を与えているわけです。

この変形を繰り返すことで、

剰余項の積分表示

Rn+1(x) =

x a

f(n+1)(t)

n! (x−t)ndt

の成り立つことが分かります。これを剰余項の積分表示と言います。

この表示は曖昧さのないキッチリした表示であるところが優れていますし、f(n+1)(x)がひどく 暴れていたとしても、積分でならされておとなしくなるということもあり得ます。しかし、如何せ ん積分なので、f(n+1)(x)についての情報が得られても、それを簡単に Rn+1(x)の評価に結びつ けられないという難点もあります。

とおくということです。φ(t)0 という条件が付いていたので、x > aとしましょう。x < aでn が奇数の場合はφ(t) =−(x−t)n とおけばよいだけなので、x > aで考えておけば十分です。よっ て、以下x > aと仮定します。

「重み付き」積分の平均値定理の結論は「重み」の積分∫x

a φ(t)dtで割る形になっていますが、

欲しい結論にあわせるために全体にこれを掛けて分母を払っておきましょう。すると、

Rn+1(x) =

x a

f(n+1)(t)

n! φ(t)dt= f(n+1)(c) n!

x a

φ(t)dt (a <∃c < x) となります。積分を実際に計算すると、

x a

φ(t)dt=

x a

(x−t)ndt= [

(x−t)n+1 n+ 1

]x a

= (x−a)n+1 n+ 1 となります。これを代入すると

Rn+1(x) =f(n+1)(c)

(n+ 1)! (x−a)n+1 となって、予想通りラグランジュ表示が得られました。

ところで、積分の平均値定理には「重み」のないものもありました。それを適用しても積分記号 がはずれるはずです。やってみると、

Rn+1(x) =f(n+1)(c)

n! (x−c)n(x−a) (a <∃c < xorx <∃c < a)

という表示が得られます。これをコーシー表示と言います。(別に名前を憶えて欲しいわけではな くて、それぞれに名前が付けられているくらい「剰余項を具体的に表示する」ということは重要な ことなのだということです。)

注意. ラグランジュ表示は(x−t)n全部を「重み」と見なした場合、コーシー表示は(x−t)0 を「重み」と 見なした場合と言えますので、その中間の(x−t)k, k= 1,2, . . . , n1を「重み」とする表示も得られるは ずです。そのようにして得られる一連の表示をシュレーミルヒ表示と言います。

実際に計算してみましょう。結果の式をきれいにするために、mn+ 1以下の自然数として、

φ(t) = (x−t)m1 とおきます。すると、

Rn+1(x) =

x a

f(n+1)(t)

n! (x−t)ndt=f(n+1)(c)(x−c)nm+1 n!

x a

(x−t)m1dt

=f(n+1)(c)

n! (x−c)nm+1(x−a)m m

が得られます。(もちろん「この式の成り立つca xの間に存在する」という意味です。)m= 1なら コーシー表示、m=n+ 1ならラグランジュ表示になっています。★

注意. 剰余項のコーシー表示やもっと一般的なシュレーミルヒ表示も、ラグランジュ表示と同様に積分を使わ ず微分だけで導くことができます。時間の都合でここに書くことができませんが、たとえば東大出版会の解 析入門Iなどには載っていますので、興味のある方は見てみてください。★

7 剰余項の表示の応用

「関数の値」という視点から見た場合、多項式の特徴は

変数の値を具体的に与えると関数の値をキッチリ計算できる

というところにあります。一方、剰余項は「関数と多項式の差」です。ということは、剰余項の値 の評価が得られれば、テイラー近似多項式で計算したキッチリした値を使って元の関数の値をある 程度の精度で計算できるようになるわけです。これが剰余項の表示を得たことの「第一の御利益」

です。

以下、いくつか具体例を見てみましょう。

7.1 e の近似

exの 0におけるテイラー近似とラグランジュの剰余項を用いて、eの値を小数点以下第3位ま で決定してみましょう。第4回の問題8です。

4回問題8

eの値を小数点以下第3位まで決定せよ。ただし0< e≤3であることは使ってよい。

何次まで展開すべきであるかという試行錯誤の部分はとばして、いきなり答を書きます。

解答. ex を0のまわりで7次までテイラー近似すると、

ex= 1 +x+x2 2 +x3

3! +· · ·+x6 6! +ecx7

7!

となります。「この等式を成り立たせるcが0とxの間に存在する」という意味です。これにx= 1 を入れてeの値を近似してみます。0< e≤3はわかっているのですから、0< c <1から

1

7! =e0·17 7! <ec

7! < e1·17 7! 3

7!

と不等式で挟めます。つまり、

1 + 1 +1 2 + 1

3!+· · ·+ 1 6!+ 1

7!< e <1 + 1 +1 2 + 1

3!+· · ·+ 1 6!+ 3

7!

が成り立ちます。左辺と右辺を具体的に計算すると、この不等式は 2.718253· · ·< e <2.718650· · · となります。これでe= 2.718· · · であることが示せました。 □

n= 7で小数点以下第3位まで値が決定されると結論できるのは実際に近似値を計算してからで あって、誤差項R7(1)の値が0.001未満だからというだけでは不十分です。詳しくは第4回問題7 の解答の後(46ページ)を見てください。

ちなみに、

e= lim

n→∞

( 1 + 1

n )n

でもあるので、各nに対する(1 + 1/n)n の値を計算してみましょう。すると、

n= 1 2 8 2.5657845139· · ·

2 2.25 9 2.5811747917· · ·

3 2.3703703703· · · 10 2.5937424601 4 2.44140625 20 2.6532977051· · · 5 2.48832 30 2.6743187758· · · 6 2.5216263717· · · 50 2.6915880290· · · 7 2.5464996970· · · 100 2.7048138294· · ·

で、小数点以下第3位まで決定することなど電卓での計算ではとてもできません。テイラー近似多 項式の方がずっと近似の精度がよいのです。

O logy

O x y

x n= 0

n= 1 3 2

ex

1 1

ex

7 6 5 4 3 2 1 n= 0 1

loge= 1

図6: exのテイラー近似。

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