n n+ 1 x 1
n y= 1
x
図 8: 面積比べ。
発散することがわかっている級数と比較する
積分を微分の逆演算として定義している以上、定積分がグラフの囲む部分の面積になっているこ とを使ってしまったら証明とは言えない、と思う人もいるでしょう。冬学期に積分を面積の一般化 として定義し直すと上の証明はキッチリ正当化されますが、たしかに現時点ではその批判は当たっ ていると思います。そこで、もっと初等的な証明も紹介しましょう。
第2n+ 1項目から第2n+1 項目をすべて1/2n+1 に変えた無限級数を考えます。具体的には、
1 +1 2 +1
3+1 4+1
5 +· · ·+1 8 +1
9+· · ·+ 1 16+ 1
17+· · · を
1 +1 2 +1
4+1 4 +1
8 +· · ·+1 8 + 1
16+· · ·+ 1 16+ 1
32+· · ·
と作り替えます。すると、各項はもとの調和級数の対応する項以下であり、第2n+ 1項目から第 2n+1 項目までの和はすべて1/2です。よって、
1 + 1 2 +1
3 +1 4+1
5 +1 6 +1
7+· · · ≥1 + 1 2 +1
4 +1 4+1
8 +1 8 +1
8+· · ·
= 1 +1 2 +1
2 +1 2+1
2 +1
2· · ·= +∞ となって示せました。 □
です。α自然数のときは
( α n
)
= αCn
で、これはn > αで0ですので、テイラー級数はただの多項式になるので収束し、普通の二項定 理になります。もちろん |x|<1もいりません。任意のxでO.K.です。
証明. 剰余項のコーシー表示を使いましょう。
Rn+1(x) = f(n+1)(hx)
n! x(x−hx)n= ( α
n+ 1 )
(n+ 1)(1 +hx)α−n−1xn+1(1−h)n となる1より小さい正実数hが存在します。これを
Rn+1(x) =α
∏n k=1
(α−k k
)
(1 +hx)α−1
( 1−h 1 +hx
)n
xn+1
と変形します14。今、|x|<1 で考えているので 1−h
1 +hx <1
です。また、0< h <1なので
α >1⇒(1 +hx)α−1<(1 +|x|)α−1, α <1⇒(1 +hx)α−1<(1− |x|)α−1 となっています。そこで、
g(x) = (1 +|x|)α−1+ (1− |x|)α−1 とおけば、常に
(1 +hx)α−1< g(x) が成り立ちます。よって、
|Rn+1(x)|<|αx|g(x)
∏n k=1
( 1 +|α|
k )
x となります。xに応じて
( 1 +|α|
m )
x <1 となる mをひとつ取ると、
|Rn+1(x)|<|αx|g(x)
m∏−1 k=1
( 1 +|α|
k )
x ·
( 1 +|α|
m )
x n−m+1 となるので、
nlim→∞Rn+1(x) = 0 が証明できました。 □
14∏n
k=1ck=c1·c2· · ·cnのことで、いわば∑n
k=1のかけ算版です。
注意. 今収束を証明した(1 +x)α の0を中心としたテイラー級数
∑∞ n=0
( α n
) xn
のことを二項級数と言います。ニュートンが微積分学を開発したときの具体的な発想の源がこの二項級数だっ たそうで、別名ニュートン級数とも言うそうです。★
このほかtanxや逆三角関数など、「式1本」で書けるような関数はすべて任意の点のまわりの テイラー級数が元の関数の値に収束します。証明は、級数の一般論などと絡めて冬学期に紹介する ことになるでしょう。
10 C
∞級という性質とテイラー展開可能性
10.1 テイラー展開不可能な関数とは
ここまではテイラー展開可能、すなわち、f(x)から作ったテイラー級数がもとのf(x)に収束す る、いわば「幸せ」な例ばかり見てもらいました。しかし、実際にはテイラー展開不可能な C∞ 級関数も存在します。
「テイラー展開不可能」という言葉は二つの意味に分かれます。一つは テイラー級数は収束するが収束先がもとの関数の値でない
という比較的大人しいもの。もう一つは
そもそもテイラー級数が級数として収束しない という病的なものです。
この節では、このような関数の例をそれぞれ紹介します(ただし、後者の例は証明抜きです)。
10.2 テイラー級数は収束するが元に戻らない例
φ(x)を
φ(x) =
{ e−x12 x̸= 0
0 x= 0
で定義します。この関数はC∞級で、0におけるテイラー級数は実数全体で収束しますが、x̸= 0 での収束先は φ(x)に一致しません。
証明. 時間やページ数の関係で証明はアウトラインだけにし、数学的帰納法によってキチンとした 証明を完成することは皆さんにお任せします。
x̸= 0 のところではC∞級関数の合成関数に過ぎないのでC∞級ですから、φ(x)がC∞級で あることを示すには、x= 0で何回でも微分できることを示せばよいことになります。
xlim→0e−x12 = 0 ですので、φ(x)は x= 0で連続です。
lim
x→0
e−x12 −0
x = 0