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剛体モードの排除と座屈による不安定形状の判定理論

ドキュメント内 目次 (ページ 56-61)

第 4 章で示した通り,構造動解析においては剛性マトリクスの固有値を観測すれば座屈による不安 定状態を検出できる.しかしながら,動解析においては 0 や負の固有値が出たからと言ってそれが座屈 モードとは限らない.それは,構造物の剛体的な並進運動や回転運動も 0 や負の固有値を取るためであ る.本章ではまず5.1節にて剛体的な並進や回転が0以下の固有値を取りうることを確認する.次に5.2 節にて運動する構造物において剛体運動のモードを定義する手法を提案する.そして5.3節にて運動中の 構造物の各モードが剛体運動のモードであるかを判定し,固有値判定と併せて,座屈モード,即ち不安 定形状であるかどうかを判定する手法を提案する.

5.1. 剛体運動のモードと剛性マトリクスの固有値

式(2.67)をマトリクス形式で書くと,

11 12

21 22

33 33

33 33

1 ( ) 1 ( )

1 ( ) 1 ( )

elast

EA EA

L l L l

EA EA

L l L l

K K

K K K

e e I e e e e I e e

e e I e e e e I e e

(5.1)

となるが,Fig. 5-1 に示す各種剛体運動について具体的に f elastKwを計算してみる.ここで, f

1 2

[ x x]T

f f f で表される等価節点力, w w [w1 w2]Tで表される剛体運動のモードである.並進 の場合,

11 12

1

21 22

2

11 11

1 11 22 12 21 11

1 2

11 11

1

( , , )

K K w

f K K w

K K w

w w K K K K K

K K w 0 0 0

(5.2)

となって,式(2.63)に倣うと外力0で運動することのできるモードだと分かる.即ち,この時ヤコビアン

の弾性項elastKの固有値は0となっている.同様に回転の場合,

11 12 1

21 22

2

33 33

33 33

1 1

( ) ( )

1 ( ) 1 ( )

( { | })

2

EA EA

L l L l

EA EA

L l L l

with EAl

EAl K K w

f K K w

e e I e e e e I e e

v

e e I e e e e I e e v

v w w e v

v

( (e e v) (e v e) 0)

(5.3)

となって,もし要素の歪 が0 であれば

f 0

となるし, 0の圧縮状態であれば

f

の方向は wの方 向となり,elastKの固有値は負となり,負の外力で動くモードとなってしまう.ヒンジの回転も同様に,

11 12

1

21 22

2

33 33

33 33

1 1

( ) ( )

1 ( ) 1 ( )

( { | })

EA EA

L l L l

EA EA

L l L l

with EAl EAl K K w

f K K w

e e I e e e e I e e

0

e e I e e e e I e e v

v w w e v

v

(5.4)

となり,ヒンジの通常の開閉運動は 0であるので,

f 0

となることが確認できる.言うまでもなく

0であればelastKの固有値は負となる.以上に挙げたような剛体運動のモードを,以下剛体モードと呼

ぶ.

Fig. 5-1 各種剛体運動

Hinge Rotation

Translation Rotation

x

y z

② ②

5.2. 運動する構造物において剛体モードを定義する手法

5.1節で確認した通り,剛性マトリクスelastKxxabおよびそれを構造物全体に渡って重ね合わせた全体剛 性マトリクスelastKxxの固有値を見るだけでは,固有値が0の時に座屈モード剛体モードの区別ができず,

また,固有値が 0 でない時に剛体モードである場合もある.即ち,elastKxxそのものからは剛体モードを 定義することができない.本節では,運動する構造物がどのような剛体モードを有しているかを調べ,

剛体モードを定義する手法を提案する.

剛体モードの個数には限りがある。例えばトラス要素で構成される構造物においては,1つの要素の 剛体モードは並進・回転それぞれx y z, , 方向に剛体運動ができるため,最大で5個の剛体モードを有する.

しかし,拘束条件によって,表れ得ない剛体モードが存在する.例えばFig. 4-1に示したようなトラスア ーチであれば,いずれの方向へも剛体運動をすることができないので,剛体モードは表れない.また,

構造形状が時々刻々変化するため,剛体モードの成分も変化していく.そこで,運動する構造物がどの ような剛体モードを有しているか調べるために,ある時点での構造物に対し,その構造形状で部材の歪 が0であるという自由長状態を考える.即ち,ある時点での1つの要素のヤコビアンの弾性項が式(2.67) で得られたとして,式(2.67)において 0,L lと置くことを考える.このとき,式(2.67)で表される要 素剛性マトリクスは,

0

elast ab a b

elast ab l

EA

xx l

xx

K e e

K

(5.5)

となって,幾何剛性項が消え,部材剛性項のみが残る.これを構造物全体に渡って足し合わせた全体マ トリクスをelastlKxxとおく.いま,構造は自由長状態にあるため,部材の内力が存在していない状態であ る.この状態で外力 0 で節点変位を生じさせることができるのは,等速運動をしている剛体運動のみで ある.即ち,等速剛体運動であれば,歪エネルギの増分も運動エネルギの増分も 0 で変位することがで きる.従って,elastlKxxの固有ペアを調べ,固有値が 0 である固有ベクトルが剛体モードであると定義す ることができる.剛体モード

q

iの定義を次式に示す.

{ |

elast

}

i i l xx

q w w K w 0

(5.6) また,

q

iによって構成される空間を剛体モード空間と呼び,次式の通りQと定義する.

[ 1 ... n]

Q q q (5.7)

5.3. 運動中の構造物の各モードから座屈モードを得る手法

運動中の構造物のモードは,式(2.73)で示されるヤコビアンKxxabを構造物全体に渡って足し合わせた 全体ヤコビアンKxxの,弾性項の固有ベクトルであり,系の一般化座標の個数N個分だけ存在する.こ れまで述べてきたとおり,ヤコビアンの弾性項,即ち剛性マトリクスが非正の固有値を持つ固有ベクト ルは剛体モードあるいは座屈モードのいずれかである.従って,まず剛性マトリクスの1 つ1つの固有

ベクトル i (i 1, 2,..., )N について5.2節にて得られた剛体モード空間Qに含まれるかどうかを調べ,剛

体モード空間Qに含まれなかった場合,その固有ベクトル iは剛体モードではないと判定することがで

きる. iが剛体モードではない場合, iは変形を含むモードである.即ち,完全な変形モードあるいは 剛体運動と変形が混在するモードである.そこで, iが剛体モードではない場合, iの変形成分を取り 出し,その変形に要する仕事を計算して,それが 0 以下の値であれば座屈モードと判定することができ る.また, iが剛体モードである場合には,対応する固有値 iを調べ,正であれば引張回転の剛体モー ド,0であれば並進の剛体モード,負であれば圧縮回転の剛体モードと判定することができる.

ある固有ベクトル iが剛体モード空間Qに含まれているかを調べるためには,次式にて,剛体モー ド空間に対する直交成分ベクトル i*を計算すればよい.

*

1

( )

( )

n

i k

i i k

k k k

q q

q q (5.8) そして, iQに対する直交度を

| *|

| |

i i i

(5.9) と定義し, i 0であれば iは剛体モードとみなせる.Fig. 5-2に式(5.8)の概念図を示す.なお,Fig. 5-2 では剛体モード空間を2本の基底で張る平面のように図示しているが,実際はN個の成分を持つ0本以 上のベクトルで構成される形而上的な空間である.

Fig. 5-2 固有ベクトルが剛体モード空間に含まれているかどうかの検証

最後に,式(5.9)による判定で iが剛体モードではなかった場合に,変形に要する仕事

w

dを次の式で

計算する.

*

(

*

)

d i xx i

w   K

(5.10) そして,

w

d0または負であれば座屈モードであると判定する.Fig. 5-3に安定性とモードの評価手順 を示す.直交度の判定は,数値誤差によって完全な 0 となることは考えにくいため,今回の計算は収束 半径からおおよその誤差見積もりを出し,

10

5 未満の値で剛体モード空間に含まれるとみなすものとし た.実際の計算プログラムはこのフローチャートに従って作成した.

剛体モードベクトル

剛体モードベクトル 検証するベクトル

検証するベクトルの 剛体空間に対する直行成分

Fig. 5-3 安定性とモードの評価方法

5.4. 本章のまとめ

本章では以下に示す結果を得た.

 動解析において,不安定形状状態以外にも,剛体的な並進運動や回転運動をしているとき剛性マト リクスに0以下の固有値が現れることを確認した.

 運動する構造物において剛体運動のモードを定義する手法を提案した.

 運動中の構造物の各モードが剛体運動のモードであるかを判定する手法を提案し,変形に要する仕 事の判定と併せて,座屈モード,即ち不安定形状状態であるかどうかを判定するアルゴリズムを提 案した.

Type23: 安定

Type21: 安定,引張の回転剛体モード

Type13: 不安定,座屈モード

Type11: 安定,圧縮の回転剛体モード

Type01: 安定,並進または無歪回転剛体モード

Start

Type=3 Type=1

Type

= 21

Type

= 11

Type

= 01

Type

= 13 Type

= 23

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