第4章 調査方法
第2節 分類による動物概念の調査
小学生から中学生まで、いくつかの動物に直接触れるなどの直接経験をふま えた探索活動を取り入れた後に、いくつかの動物を自由な分類を行えるような 調査問題を作成し調査を行う。
調査の流れ
1:直接経験を取り入れた探索活動を行う。
ヘビ、カエル、カメ、メダカに触れる。
2:動物分類活動を行う。
質問紙に仲間だと思う動物を囲み、理由を書く。
図8 調査の流れ
調査にあたって、留意した点は、
・子どもの持っている様々な観点により、自由な仲間分けをする。
・全体を一つの仲間としてもよい。
・それぞれの動物が、どのように関わってもよい。
・観点に関連した動物を新たに加えてもよい。
とした。
また、調査するときに留意した点としては、
課題を「生き物の仲間分けをしよう」とした。これは、動物という言葉を用い ないで、課題に取り組ませた。小学校3年生には、生き物とは別のもの(お菓 子)を用いて、簡単な練習を行った後に課題に取り組ませた。
調査時期は、平成10年4月〜平成10年6月
調査対象は、岐阜県内の小学生 3年生 97名 5年生 76名
岐阜県内の中学生 3年生 112名
第1項 調査問題
14種類の動物を取り上げ、それぞれの動物を子どもが自由に分類をするよ うな調査問題(図9)を作成した。
なお、調査問題作成には、Bell,B。F. and Berker(1982)が行った認識調査53を参考 にした。
取り上げた動物は、ヒト、ライオン、イヌ、スズメ、ペンギン、カニ、ハエ、
チョウ、カブトムシ、カエル、ヘビ、カメ、メダカ、イルカの14種類である。
それぞれの動物を取り上げた理由は、
ヒト:子どもはヒトに属するが、ヒトと動物とは違うものだと考えて いる子どもがいると考えた。「ヒトはヒトであって動物とは違 う。」という言葉もあるぐらい、ヒトを動物に含めない子ども をとらえることができると考えた。確かに、子どもとって自分 はヒトであって、イヌやネコのような動物とは様々な点におい て違うことをたやすく述べることができる。ヒトは服を着たり、
学校へ行ったりするがイヌやネコはしない。ヒトを動物と言う かもしれないが、かなり特別な動物であると考えている子ども が多いと思われる。
ライオン:「動物ってなに。」と質問すると、動物園にいる動物を答 えることが多い。動物園にいる生き物が動物だと考えている子 どもが多いと思われる。動物園の動物という言葉からも用意に 推測ができる。それに対し、水族館にいる生き物は魚であると 考えている。
イヌ:子どもにとって身近な動物の一つである。ペットとしても多く 飼われていることがあるので、イヌの生態については多く知っ ている。ヒトと同じように食べたし排出したりするだけでなく、
時には感情も出すことを知っている。子どもにとってヒトと近 い存在であると考えられる。
スズメ:よく見ることができる動物であるが、実際にさわったりした
ことは、ほとんどないと思われる。また、ヒトと大きく違う点
として、「飛ぶ」という行動をすることができる。飛ぶことに より、ヒトよりも昆虫の中で飛ぶことのできる動物と近い存在 であると考える。
ペンギン:スズメとペンギンは同じ鳥類であるが、ペンギンはヒトに 近い動物と考えていると思われる。その理由は、スズメと違っ てペンギンは飛ぶことができない。また、二本足で歩く。さら にペンギンが卵生であることもほとんど知らない。
カニ:子どもが中学生になり、分類を学習しても、子どもが学習した もののどれにも属さない生き物としていると思われる。すなわ ち、動物を大きく分けた場合、カニは脊椎動物と無脊椎動物に 分けられ、無脊椎動物の昆虫には属さない動物になる。このよ うに分類を学習するなかで取り上げない動物の一つとしてカニ を取り上げた。
ハエ:ハエもよく知っている生き物であるが、ハエは生き物であるが、
動物だとは考えていないと思われる。むしろ飛ぶということか ら、スズメなどに近い生き物だと考えていると思われる。また、
ハエは嫌われる生き物である。ハエを見たらすぐたたいたりし て、殺してしまおうとする。この点から、次のチョウやカブト ムシとは違った観点を持っていると思われる。
チョウ:チョウもよく知っているし、学校でもチョウを扱う。昆虫の 中で学校において扱う生き物として取り上げた。
カブトムシ:誰もが名前を知っているが、子どもにとって人気のある 生き物であり、不思議な生き物であると考える。この人気のあ る動物をどのように見ているのか知ることができる。
カエル=カエルは中学校において取り上げられるが、好きという子ど もと嫌いという子どもに分けられる。嫌いという子どもはとて も触ることもできないし、ましてや近づくことさえ嫌がる子ど もがいる。
また、数匹のトノサマガエルやアマガエルを触ったりできる ようにした。
ヘビ:嫌われる生き物の代表である。好きという子どもはほとんどい
ないし、ましてや触ったことのある子どもはいない。しかし、
ヘビを見たことはあるし、ヘビにまつわるお話などもたくさん ある。このようなヘビをどのように見ているのか知ることがで
きる。
馴らしたシマヘビを子どもに触らせた。特にヘビに触るとい うような経験はほとんどないため、分類にも影響が表れると考
えられる。
カメ:ヘビとカメはは虫類で同じ仲間なのであるが、このように考え ていない子どもはほとんどだと思われる。カメは家や学校で飼 つたりしているし、カメを嫌うような子どもは少ないと思われ る。
ゼニガメを触ったりできるようにした。
メダカ:メダカも学校で取り上げるので、よく知られている。メダカ は魚類に入るが、水の中にいるという点で次のイルカに近い存 在だと思われる。
学校ではヒメダカを用いることが多いが、近くにいたやセメ ダカを展示した。
イルカ:イルカはほ乳類であるが、水の中で生活しているために、魚 だと考えていると思われる。水族館などで見ることができるが、
イルカが胎生であることは知られていないと思われる。
名 前
イヌ スズメ
ペンギン
力二
ヒト ライオン
ハエ
次の生き物を、仲間分けしましようe
1:仲間だと思う生き物を○で囲みましょう。2:囲んだ理由を書きましょう。
3:さらに知っている生き物を加えてみましょう。
紙に書いてはってもいいです。
イルカ
メダカ
カメ
ヘビ
力エルカブトムシ
チョウ
図9 動物分類の調査問題
また、それぞれの動物を絵ではなく文字とした。その理由は、文字にするこ とで抽象的になり、子どもがイメージしたものにより分類が行われると考えた ためである。絵や写真にすると、どんな絵や写真にしても子どものイメージが 絵や写真に引っ張られてしまう。絵や写真から受ける印象によって分類が行わ れてしまうからである。例えば、それぞれの動物のシルエットにしても、シル エットにした動物の向きや動きなどによって分類されてしまうからである。右 を向いている動物という理由で仲間分けをされても意味がなくなってしまうか
らである。
それぞれの動物の配置は、形態の似ている動物を配置した。このことにより 子どもが考えやすいし、意図があることを子どもが知ることもできるが、自由
に分類するときに、それぞれの動物に含まれる概念を引き出しやすいと考えた。
第2項 直接経験を行わせる動物
直接経験を取り入れた動物は、カエル、ヘビ、カメ、メダカの4種類とした。
特に、ヘビなどは触ったことがない子どもがほとんどである。ヘビは嫌いとか、
こわいという気持ちを持っている。今までに、青少年のための科学の祭典など で、ヘビに触ってみようという活動を行ってきたが、はじめは怖がっていた子
どもが、 「思ったよりも冷たい。」 「ぬるぬるしている」なども感想を得てい る。そのため、実際に触ってみるとヘビに対する気持ちがずいぶん変わり、今 回の分類調査にも大きな影響を与えると考えられる。
分類前に、できるだけ多くの希望者にヘビを触らせたり、手の上にのせたり させる。他のカエルやカメ、メダカなども自由に取り出して見たり、触ったり できるようにする。
Bell,BF.の調査でも、ヘビやカエルを動物と回答した割合が、80%から50%
であり、イヌやライオンよりも低く、チョウやカニよりも高い回答率に位置し ている。そのため、直接経験を行うことで、さらに高い回答率になると考えた。
直接経験させる動物のうち、ヘビは飼い慣らしておき、強くつかんだりしな
ければ、噛み付いたりしないように飼育しているものを用いる。その他のカエ
ルやカメ、メダカは近くで捕ってきたものを用いる。
ドキュメント内
子どもの動物概念の形成とその変容 : 創造的思考の観点からみた動物分類の分析を通して
(ページ 33-39)