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4. SBT の設定:全スコープの主な検討事項

4.1 分野横断的な検討事項

がある。

基準年を選択するためには、3つの検討事項が重要である。

一つ目に、スコープ1,2,3排出量の検証可能なデータが基準年にあることで、データは利用 可能な直近年を基準年として選ぶことが推奨される。

二つ目に、基準年は企業の典型的なGHG情報を代表しているものであるべきである。経年 的にインベントリと事業の活動水準を比較することで、代表的なものであるかを検証でき る。代表的な一年を特定することが難しい場合は、排出量の異常な変動を除いた代表的な基 本期間を設定するため、代わりに連続した数年の GHG データを平均化することが望まし い。例えば、気候が異常だった年(例えば、2017年)、農業生産者の排出量は変化するだろ う。この場合、当該企業は2016年から2018年の排出量の平均をとることができる。こう すると、目標は「2025年までに、2016年から2018年期の平均排出量から40%削減する」

となる。

三つ目に、目標が今後の野心を高く持つよう、基準年を選ぶべきである。企業のこれまでの 進捗は高く評価されるが、イニシアチブの目的は、まだ達成していない活動を推進し、すで に実績のある企業が今よりもさらに高い目標を目指すよう後押しすることである。SBTiは、

過去の実績を除いた今後の野心を評価するために、目標がイニシアチブに提出された年(あ るいは直近でGHGインベントリを完了した年)を使用する。

最後に、持続的にSBTの妥当性を確保するために、様々な要因が基準年のインベントリ(及 びSBT全体)の再計算を必要とするだろう。この点についての詳しいガイダンスは第8章 を参照のこと。

目標年の選択

気候変動の影響は、今後長期に及ぶだろう。長期的なSBTの設定(例えば、2040年あるい は2050年まで)は、気候変動に関連する長期的なリスクと機会を管理する計画を促進する。

これには、新たなサービスや市場の創出、GHG排出量削減の利点を提供する大規模な設備 投資のニーズが含まれるだろう。しかし、長期目標だけでは、多くの企業が定めた目標範囲 に合わず、のちに非効率的な設備を段階的に廃止することも求められるかもしれない。中期

標を設定するべきである。

また、この期間以上の長期的な目標を定め、5年間隔で中間的な節目を設けることが推奨さ れる。中間目標と長期目標を含め、すべての目標は、産業革命以前の気温と比べ、地球の気

温上昇を1.5℃あるいは、最低でも2℃を十分に下回るように抑えるために必要な脱炭素の

水準と合致するべきである。

1つ以上の目標が設定された場合、中期目標の取組期間の目標全て、および長期目標の取組 期間の目標全てに同じ基準年と目標年を使用するべきである。共通の目標期間は、データの 把握や目標に関するコミュニケーションを簡略化するだろう。しかし、バリューチェーンの データの入手が難しいときは、スコープ 1,2 目標がスコープ 3目標の基準年と異なってい ても認められる。

企業の取組:短期及び長期目標を策定し、コミュニケーションする

・ファイザーは、2℃の経路にとどまるために、2000年の排出水準から2050年までに 自社の排出量を60~80%削減する必要があると判断。そのためには、2012年水準か

ら2020年までに20%削減する必要があった。2050年目標だけでは、取組期間が長

く、不確実なため、厳しいだろう。そこで同社は、短期(2020年)目標を使用する が、2050年目標を目指す軌道にあることをはっきりとコミュニケーションした。

・ネスレは、2050年目標に照準を合わせた2020年のコミットメントを策定。短期目 標には大きな意味があり、2020年にも同社に在籍し、責任感を感じるであろう従業 員に当事者意識を持たせると考えている。

・マースは、2025年、2040年の二つの目標を掲げており、現在実施している効率化推 進活動を念頭に年間3%削減に基準を合わせている。短期目標は大きな説明責任が伴 うと考えているが、長期目標は、短期戦略が2025年以降の低炭素経路から逸脱する 投資や決定に走らないことを確かにしている、

目標のバウンダリはGHGインベントリのバウンダリと確実に一致させる

GHGプロトコルは、企業の GHG インベントリの組織的なバウンダリを決定するため、3 つの異なるアプローチを定義している。

1. 経営支配:経営方針を導入し、実行する完全な権限を持つ事業活動からの排出量を 100%算定する。権益は持つものの、経営支配を持たない事業活動からの排出量は算定 しない。

2. 財務支配:財務及び事業活動から経済的利点を得る目的で、指揮できる当該事業活動か らの排出量を100%算定する。

3. 出資比率:事業活動の出資比率に沿って事業活動からのGHG排出量を算定する。出資 比率は経済的利益を表し、事業活動から生じるリスクや報酬に対して持つ権利の範囲 を指す。

企業はSBTのバウンダリとGHGインベントリのバウンダリを一致させることが望ましい。

そのためにインベントリとSBTに、企業特有の様々な検討事項を基に一つのアプローチを 選択し、そのアプローチを企業構造全体に一貫性をもって適用しなければならない。温室効 果ガス(GHG)プロトコル事業者排出量算定報告基準(WRI&WBCSD 2004)で詳しいガイダ ンスを提供している。

また、SBTとインベントリが、UNFCCC/京都議定書で対象となっている7種類のGHGあ るいは GHG 類に関連する排出量全てを網羅するようにしなければならない。GHG とは、

二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、ハ イドロフルオロカーボン類(HFCs)、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3)をいう。

子会社の対応法を決定する

複合的事業関係(子会社、共同ベンチャー等)は、GHGインベントリと目標のバウンダリ の引き方を複雑にする。親会社は選択した組織のバウンダリのアプローチに則って、子会社 にSBT を設定することが望ましい23。組織のバウンダリのアプローチによって認められた 時、親会社は子会社の事業活動からの排出量を親会社のSBTに含めなければならない。し かし、子会社が事業的及び経営的独立性を持っている場合、直接、目標を設定することは認 められる。親会社と子会社がどちらもSBTを設定した場合は、目標が重複しないようコミ ュニケーションを慎重に行わなければならない。

タリス:子会社の目標を設定する

鉄道の世界大手タリスは、フランス国鉄(SNCF)、ベルギー国鉄(SNCB)、ドイツ鉄道によ って設立された。SNCFが一部出資しているものの、経営は独立している。同社は、2008 年を基準年として、2020年までにスコープ1,2,3のGHG排出量を人キロ当たり41.4%

削減するSBTを設定している。SNCFもSBTの設定を宣言したが、タリスの土地の一 部に管理義務を有するため、同社の目標とSNCFの新たな目標は区別しなければならな い。24

合算したスコープの目標に必要な野心の水準に注意する

企業はスコープを合算した目標を設定してもよい(例えば、スコープ 1+2 またはスコープ

1+2+3目標)。スコープ1と2を合算した目標やスコープ1,2,3を合わせた目標は、1.5℃あ

るいは 2℃を十分に下回るシナリオに則る、スコープ 1 と2 の排出削減量の統合につなが

るべきである。加えて、スコープ1,2,3を合算した目標が設定された際には、スコープ3部 分もまた関連する野心的な認定基準(第6章)を満たすべきである。

オフセットの使用を除外する

オフセットは、他の場所でGHG排出量を補完するために使用された別のGHG削減量であ る。オフセットを生む緩和プロジェクトがなかった場合に排出量がどのようになっていた か、という仮説的シナリオを表すベースラインと比較して算定される。

オフセットはSBTを達成するための削減に含まれるべきでない。そうではなく、自社の事 業活動、あるいはバリューチェーン内の直接活動から生じる削減量を算定すべきである。し かし、SBT 以上にさらに排出削減量を調達したいと考えている企業にとっては、選択肢と して有効だろう。

削減貢献量を除外する

ある企業の製品が同等の機能を提供する他社製品と比べて、ライフサイクルのGHG排出量 が低ければ、排出量を回避したことになる。この削減貢献(回避)量は、製品のライフサイ クルインベントリの範囲外、つまり企業のスコープ1,2,3のインベントリの範囲外でも起こ る。例えば、ある企業が、市場で販売されている比較可能なモデルよりも、よりエネルギー 効率の高い電化製品を製造するかもしれない。この場合、当該製品は使用段階で排出量を回 避するが、このメリットはライフサイクルインベントリ内には含まれない。

企業のGHGインベントリと削減貢献量の算定に異なる手法が使用されるため、削減貢献量 はスコープ1,2,3の排出量とわけて報告されなければならず、スコープ3目標を含め、SBT に算入するべきでない25

間接使用段階からの排出にどう対応するかを決める

間接使用段階からの排出は、予測されるライフサイクルの使用段階でエネルギーを間接的 にしか消費しない製品から発生する。例えば、衣服の洗濯や染色、食料品の調理や冷蔵がこ れに該当する26。間接使用段階からの排出が多ければ、この排出量を算定し、削減するため

25 削減貢献量に関しては、https://www.wri.org/publication/estimating-and-reporting-comparative-emissions-impacts-products を参照。

26 詳しい情報は企業のバリューチェーン(スコープ3)算定報告基準the Corporate Value Chain (Scope 3)