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6. SBT の設定:スコープ 3 の排出源

6.1 スコープ 3 インベントリの実施

企業は、排出の多い箇所、削減機会、バリューチェーンの上流や下流のリスク範囲を特定す るために不可欠となる、完全なスコープ3インベントリを作成するべきである。GHGプロ トコル企業のバリューチェーン(スコープ3)算定報告基準(WRI&WBCSD, 2011)は、スコ ープ 3の算定ガイダンスと共に、スコープ3インベントリを完成させる方法について、詳 細なガイダンスを提供している。スコープ3基準は、上流と下流の排出源を15のカテゴリ で定義し(表6-1を参照)、排出量やカテゴリに及ぼす影響のレベルといった基準に基づい て、すべての関連カテゴリをインベントリに含むよう求めている(表6-2)。通常、企業は、

GHG排出量の削減に影響を持つ可能性のあるスコープ3排出源からの排出量を計算すべき だが、スコープ 3 排出全体に大きく寄与すると思われる活動はどんなものも除外すべきで ない。詳細は、スコープ3基準の第7章を参照。

スコープ 3 排出量を計算する有益なアプローチは、まず大まかなのスクリーニングインベ ントリを計算することである。そのようなインベントリは、目標を直接設定したり、より正 確なデータが必要となる影響力の高いカテゴリを特定したりする際に使用できる。企業は、

目標への進捗を把握しやすくするため、徐々に完全なインベントリを策定し、影響の大きい カテゴリのデータ品質を向上する努力(例えば、一次データの取得)をするべきである。ス コープ3排出量を毎年算定できない場合は、スコープ 3排出量合計に大きな変化がないか を確認するため、2~3 年に一度は算定するべきである。あるいは、より正確なデータを入 手するまで、目標の設定を見送ることもできる。

ボックス6-1では、スクリーニングインベントリを構築する際に有益なツールである、スコ ープ3算出ツールについて記述している。

表6-1. スコープ3カテゴリ

上流のスコープ3排出

1 購入した製品・サービス 報告対象年に報告事業者が調達、あるいは購入した 製品やサービスの資源採取、生産及び輸送で、カテ ゴリ2~8に別途含まないもの

2 資本財 報告対象年に報告事業者が調達、あるいは購入した

4 輸送、配送(上流) ⁻ 報告対象年に報告事業者が費用負担する、一次 サプライヤーから自社への製品の輸送及び配送

(報告事業者が所有あるいは管理しない車両や 施設に係る)

- 報告対象年に報告事業者が購入した輸送及び 配送サービス。調達物流、出荷物流(販売した 製品など)、企業内の施設間の輸送/配送(報告 事業者が所有あるいは管理しない車両や施設 による)を含む

5 事業から出る廃棄物 報告対象年に報告事業者の製造活動で発生した廃 棄物の処分/処理(報告事業者が所有あるいは管理 しない施設に係る)

6 出張 報告対象年の従業員の事業関連活動に係る移動(報 告事業者が所有あるいは運用しない車両による)

7 雇用者の通勤 報告対象年の従業員の自宅と職場間の移動(報告事 業者が所有あるいは運用しない車両による)

8 リース資産(上流) 報告対象年に報告事業者(賃借人)からリースされ た資産の稼動で、賃借人が報告したスコープ1,2に 含まれないもの

下流のスコープ3排出

9 輸送、配送(下流) 報告対象年に報告事業者が販売した製品の、自社か ら最終消費者までの輸送及び配送(報告事業者が費 用負担していないもの)。販売や保管を含む(報告 事業者が所有あるいは管理しない車両や施設に係 る)

10 販売した製品の加工 報告対象年に下流企業(製造業者等)によって販売 された中間製品の加工

11 販売した製品の使用 報告対象年に報告事業者によって販売された製品 やサービスの最終的な使用

12 販売した製品の廃棄 (報告対象年に)報告事業者によって販売された製 品の使用後の廃棄処分/処理

13 リース資産(下流) 報告対象年に報告事業者(賃借人)が所有する資産、

および他の主体にリースしている資産の運用で、賃 借人が報告したスコープ1,2に含まれないもの 14 フランチャイズ 報告対象年のフランチャイズ運営で、フランチャイ

ズ本部が報告したスコープ1,2に含まれないもの 15 投資 報告対象年の投資運用(株式/債券投資、プロジェク

トファイナンスを含む)で、スコープ1,2に含まれ ないもの

出典:スコープ3基準(WRI&WBCSD 2011) カテゴリの詳細は、スコープ3基準を参照

表6-2. スコープ3インベントリに含まれる、関連するスコープ3カテゴリを特定する基

基準 スコープ3活動の説明

規模 予想されるスコープ3の全排出量に大きく影響する

影響 企業が実施する、または影響を受ける可能性のある潜在的な排出 削減をもたらす

リスク 企業をリスクにさらす(財務や規制、サプライチェーン、製品と顧 客、訴訟、風評リスクといった気候変動関連リスク等)

ステークホルダー 主要なステークホルダーが不可欠と考えている(顧客やサプライ ヤー、従業員、投資家、市民社会等)

外部委託 以前は社内で行われていた外部委託された事業活動、あるいは報 告事業者のセクター内で、他社が通常社内で行っている、報告事業 者によって外部委託された事業活動

セクターガイダンス セクター別ガイダンスで重要とされている

その他 企業やセクターが作成した妥当性を確認する追加基準を満たす 出典:GHGプロトコル スコープ3基準(WRI&WBCSD 2011)、表6.1より

ボックス6-1:スコープ3算定ツール

GHGプロトコルは、コンサルタント会社 Quantisと共同で無料のスコープ 3スクリー ニングツールを開発した。組織の種類や規模に関わらず、利用者がスコープ 3 インベン トリの概算を把握できる簡易な算定ツールである。製品やサービスの購入、燃料の使用、

材料の輸送等といった組織構造や事業活動に関する一連の質問を通して、ユーザーを導 く。

産業連関とプロセスのライフサイクルインベントリデータの組み合わせにこのような情

evaluator を参照。

スコープ3データの品質

スコープ 3 排出源は報告事業者の所有または管理下にないため、これらのデータの収集や 品質を確保する際、課題に直面することが多い。課題には以下の点が挙げられる。

・バリューチェーンパートナーにデータの提供を頼る(購入した製品やサービスからの排出 量を計算するためなど);

・データ収集及び管理方法に関する影響力が弱くなる;

・データの種類、出所、品質についての知識が少なくなる;

・二次データのニーズが広まる(すなわち、企業のバリューチェーンに特化しないデータ)

また

・想定やモデル化のニーズが広まる(販売した製品の使用による排出量の計算等)

通常、企業は技術、時間、地理の観点から、最も完全で、信頼性が高く、代表的なデータを 選択するべきである。企業は、GHG排出量削減に最も関連が高く、的を絞ったと思われる スコープ 3 の活動に対して、サプライヤーやその他バリューチェーンパートナーから、品 質の高い(「一次」)データを収集するべきだ。企業のマーケティング及び営業部門も、製品 の使用段階と廃棄活動に関する一次データを提供できる。二次データは認められるが、進捗 を把握する能力は限られる。従って、二次データは、あまり排出量の多くないスコープ3カ テゴリに適する。スコープ3基準の第 7章で、データ品質の問題を取り上げており、詳し いガイダンスを提供している。

スコープ3排出量が、スコープ1,2,3 の排出量全体の40%を超えている場合、スコープ 3 排出量の相当部分を網羅する野心的で定量的なスコープ 3 目標を策定すべきである。本章 の以降の項で、その推奨事項について詳述する。