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共同研究等の研究成果の取扱に関して留意すべき契約事項と判断要素 大学等と企業における共同研究等を行う際に生じる懸念事項を解決するには、それぞれ

の立場や状況、研究成果の活用等の種々の条件を勘案する必要がある。

そのため、本章では共同研究等の契約を行う際に基本的な内容(研究での公表、権利の 帰属、実施許諾、費用負担など)を定めるにあたっては、大学等と企業の共同研究等に対 する目的を踏まえる必要があり、留意して協議すべき事項やその際に必要と思われる判断 要素を示す。

1. 共同研究等の目的に応じた協議事項の違い

(1) 大学等における目的

大学等における共同研究等の目的は「教育・研究17」と「研究成果の社会実装」がある。

「教育・研究」は大学等における組織本来の目的であり、共同研究等においても研究成 果を論文等で発表すること、学生が研究に参加することになどにより、目的の実現を図る。

「研究成果の社会実装」は前者の目的を果たした上で、より広く研究成果が社会で活用 されるため、企業や大学発ベンチャー又は企業以外の第三者へ実施許諾することにより、

事業化されることで、目的の実現を図ることとなる。したがって、大学等において研究成 果の社会実装は、自らが社会に実装するのではなく企業等に事業化を委ねることとなる。

また、大学等が共同研究等をする目的として、研究費、競争的資金や特許収入など外部 からの資金獲得を挙げられる場合もある。本調査では外部からの資金獲得については、研 究費、競争的資金や国や自治体などの受託などによる資金の獲得は教育・研究を実施する ためという整理から前者に含めるものとした。また、大学等が保有する特許の実施許諾収 入等は、研究成果が企業等によって社会実装された結果であって特許の実施許諾収入等を 得ること自体が共同研究等の目的ではないと整理している。

(2) 企業における目的

共同研究等についての企業の目的は、研究成果の活用という観点で見ると「自社で独占 的実施」、「第三者も含めた非独占的実施」、「技術シーズの探索・情報収集・ネットワーク 形成」の 3 つを指摘することができる。これらの目的は単一ではなく、複合的な場合も存 在する。

「自社で独占的実施」は、特許を活用して自社の事業として収益を得ることが目的であ り、専用実施権、独占的実施や大学の持分の譲受けなど、企業が独占的に実施する権利を

17 公的研究機関においては「教育・研究」のうち、研究のみが該当する

確保し、目的の実現を図ることが想定される。

次に、「第三者も含めた非独占的実施」は、研究成果が自社で事業化するために独占的実 施権を確保する意義が低い場合や自己実施の可能性が高くなく、自社以外へも実施許諾す ることを想定しつつ、企業が非独占的実施を締結する場合がある。企業は自己実施できる 権利を確保し、非独占的実施により、大学等への実施料等の費用負担を低減させつつ、第 三者への実施許諾する可能性を残すことができる。企業が非独占的実施を受ける理由とし て、大学の方針や独占的実施権など事業化するまでの判断に時間を要する場合など、様々 な例が想定される。

「技術シーズの探索や情報収集・ネットワーク形成」は、企業が既存事業や新規事業の ために技術シーズの探索や技術動向の情報収集、あるいは大学等との関係構築が目的であ り、研究成果から生じた特許を活用して事業化する意向は低く、共同研究等を行うことで、

目的の実現は図られる。特許の実施権に関する種類の選択については、独占的実施権と非 独占的実施権の二つともが想定される。

(3) 企業と大学等が共同研究等を行う経緯

企業が大学等と共同研究等を実施する目的に加え、共同研究等を始める経緯も考慮する 必要がある。

共同研究等を行うきっかけとしては、企業が大学等の研究に興味を持ち自社事業に寄与 する研究を行いたい場合、大学等が企業の持つ技術等に対して興味を持ち研究を行いたい 場合(企業は当該技術等で事業化は考えていない)、企業や大学等が相手の設備・機器を利 用したい場合などがある。

また、自社で研究開発能力・体制を有する大手企業においては、共同研究等の成果であ る特許の帰属が企業側に確保されない場合、事業化や製品化に近い内容を研究テーマとす ることは避け、事業化からはやや離れた範囲で行う結果となり、結果的に企業にとって事 業化には至らないことになるとの意見があった。

2. 共同研究等の目的の組合せと協議事項

(1) 共同研究等の目的の組合せ

前述のように、大学等と企業における共同研究等の目的は2ないし3つに整理すること ができ、この組合せとなる。下表の右上ほど、共同研究等の成果を事業化する意向が双方 とも高いものと想定している。なお、実際には、企業及び大学等において複数の目的を持っ ている場合、共同研究等を行うこととなった経緯や研究の基本的な要件などの状況によっ て、目的として提示した内容と必ずしも一致しない場合もある。

表 IV-1 大学等と企業の共同研究等の目的と、目的の組合せによる協議事項 大学

企業

教育研究 社会実装

自社での独占的実施 <イ>

研究成果の特許は企業側に利用価値があり、

大学は研究成果の公表等を重要視している場 合、特許出願にあたっての研究の公表範囲や タイミング、あるいは共同出願とするかなど が協議事項となる。

<ロ>

企業も大学も事業をすることを期待する場合 がある。企業が実施できない場合で、第三者 への実施許諾することを視野に入れるときに は、企業の事業化のしやすさが協議事項とな る。なお、企業が事業環境、市場の変化など により、当初の計画通り、実施できなくなる 場合の対応策を協議する必要がある。

第三者も含めた非独 占的実施

<ハ>

企業は自己実施できる状況は確保しつつも、

必ずしも独占的実施による事業化の意向や優 先度が高くないので、大学等が第三者へ実施 許諾する場合、上記と同様に研究の公表範囲 やタイミングに加え、特許の費用負担が協議 事項となる。

<ニ>

企業は自己実施できる状況は確保しつつ、必 ずしも独占的実施による事業化の意向や優先 度が高くないため、社会実装するためには、

大学等の第三者への特許の実施許諾等を協議 事項となる。

技術シーズの探索・情 報収集・ネットワーク 形成

<ホ>

企業は研究成果を活用した事業化の意向は高 くなく、大学は特許化よりも研究結果・内容 をもとに研究利用が確保されれば良い場合、

特許出願するときには、研究の公表範囲やタ イミング、あるいは共同出願するかなどが協 議事項となる。また、特許から収益を得るこ とは難しいため、特許関連費用の負担や特許 として維持するかが協議事項となる。

<へ>

企業は研究成果を活用した事業化意向は高く ない場合に、大学等において第三者への実施 許諾や大学発ベンチャーによって事業化を図 るときには、企業との第三者への実施許諾の 同意、いわゆる不実施補償、特許関連費用の 負担や特許として維持するか、大学による企 業の持分取得などが協議事項となる。

(2) 共同研究等の目的の組合せを踏まえた主な協議事項

大学等と企業における共同研究等の目的を実現するには、大学等と企業のそれぞれがそ の目的を認識し、契約条件等を協議して合意する必要がある。アンケート調査及びヒアリ ング調査を踏まえ、大学等と企業での協議において留意すべき契約事項を抽出した(下表 参照)。下表の契約事項は、いずれも協議して定める事項ではあるが、共同研究等の関心事 項として、留意いただきたい。

表 IV-2 共同研究等の目的の組合せと大学等と企業が関心の高い契約事項

目的の組合せ

産学で関心の高い契約事項

共同出願するか否 研究の公表範囲 権利の属・持分比率 海外出願の対象 実施権種類 実施権範囲や 優先交権の期間 実施料設定(有無や金額) 特許の用負担 第三者への実施許諾の同の要否 第三者への許諾条件収入配分

イ:大学(教育・研究)×企業(独占実施) -

ロ:大学(社会実装)×企業(独占実施) -

ハ:大学(教育・研究)×企業(非独占実施) -

ニ:大学(社会実装)×企業(非独占実施) - ホ:大学(教育・研究)×企業(技術シーズ探索)

へ:大学(社会実装)×企業(技術シーズ探索) 凡例:「○」大学等と企業が関心の高い協議事項

「-」目的の組合せにより決まる項目で協議事項とならない項目 「無印」協議事項だが、必ずしも関心が高くない事項

研究成果を特許出願する場合は、研究の公表の範囲、内容や時期など「研究の公表範囲」

について協議することが好ましい。ヒアリングによると、共同研究等に学生が参画してい る場合、卒業論文等の作成に影響するなどの理由で協議となることもあるため、共同研究 等の開始時に、研究成果の公表には留意する必要があることを認識しておくことが好まし い。

「海外出願の対象国」は、企業が事業化を進める場合、あるいは企業等に事業化の意向 がない場合で大学等(研究者)の意向で広く出願したい場合において、海外出願の対象国、

特許出願及び維持費用の負担と併せて協議することが好ましい。

「実施権の範囲や期間」は、企業が事業化を目的とし、大学等が社会実装を目的として いる場合、企業の独占的実施権を設定する期間あるいは分野等の範囲について協議となる ことも想定される。

「実施料の設定」や「特許の費用負担」は協議すべき事項であり、その他の判断要素と 併せて協議することが好ましい。

「第三者への実施許諾の同意」、「第三者への許諾条件、収入配分」は、企業が広範な実 施若しくは技術シーズ探索を目的とし、大学等において社会実装する意向がある場合には、

大学等が自由に実施許諾できるとするなど、第三者への実施許諾に関する条件を協議する ことが好ましい。