第 5 章 偶発的同時計測の測定 26
5.1.2 入力パルス幅を変化させた場合
次に偶発的同時計測による計数率の h1, h2 に対する依存性を確認するための実験を 行った。計測回路は図19の回路を用いた。
まず、h1を変化させた場合について、偶発的同時計測の測定を行った。Discriminator 1 とDiscriminator 2 のスレッショルドを−10 mV で固定し、Discriminator 4 の出力 パルス幅を 6 ns に固定した状態で、h1 を10, 20, 30, 40, 50 ,60 ns にそれぞれ変化さ せた時の計数率を測定した。h1 = 10,20,30 ns の時は1800秒間、h2 = 40,50,60 ns の 時は3600秒間測定した。この時、PMT1とPMT2 の計数率はそれぞれR1 ∼1580 Hz, R2 ∼145 Hz でほぼ一定であった。
(21)式におけるパルス幅の項 h1+h2−2h3 ns (以下のグラフと表では、この項をまと めてWidth と呼ぶことにする)に対する R1, R2, Rcoin のそれぞれの計測値と、(21)式 から計算したRaccの値は表7のようになった。横軸を h1+h2−2h3 (ns)、縦軸を計数 率 (Hz) として、R1, R2, Rcoin をプロットすると図21のようになり、Rcoin とRacc を プロットすると図22のようになった。
表7 h1 を変化させた場合の、(21)式におけるパルス幅の項 h1+h2−2h3 ns (=
Width) に対するR1, R2, Rcoinのそれぞれの計測値と、(21)式から計算したRacc の値。
Width (ns) R1 (Hz) R2 (Hz) Rcoin (×10−3 Hz) Racc (×10−3 Hz) 10 1551.5±0.7 143.8±0.2 1.9±0.7 2.230±0.003 20 1626.9±0.7 146.3±0.2 5.6±1.2 4.760±0.007 30 1567.0±0.7 142.2±0.2 5.6±1.2 6.69±0.01 40 1559.7±0.9 141.1±0.3 11±2 8.81±0.02 50 1580.3±0.9 142.6±0.3 11±2 11.3±0.2 60 1583.4±0.9 143.8±0.3 19±7 13.7±0.3
R1 とR2 の値はほぼ一定であるが、統計的なばらつきにより、全く同じ値にはなって いない。従って、パルス幅の項以外の計数の値も測定ごとに微妙に変化しているので、図 22にプロットしたRcoinとRaccの比較から、単純にRaccの変化はパルス幅h1の変化に よるものであると言うことはできない。そこで、(21)式を次のように変形する。
Racc
R1·R2 =h1+h2−2h3 (23) (23)式の右辺と左辺をそれぞれ横軸と縦軸とすると、正比例のグラフが得られる。そこ で、横軸をh1+h2−2h3 ns、縦軸を Rcoin/(R1·R2) nsとした時に、各測定点が正比例
Width (ns)
0 10 20 30 40 50 60 70
Counting Rate (Hz)
10-4
10-3
10-2
10-1
1 10 102
103
104
図 21 h1を変化させた場合の、それぞれのパルス幅の項における PMT1の計数率 R1(黒点)とPMT2の計数率R2(青点)と偶発的同時計測による計数率Rcoin(赤点)の 値。R1とR2は、R1∼1550 Hz,R2∼450 Hz でほぼ一定である。
の直線に乗るかどうかを見ればよい。得られた測定点をプロットしたものは図23のよう になった。図中の黒線は正比例のグラフである。この図を見ると、各点は誤差の範囲で正 比例の直線に乗っていることが分かる。これより、(21)式におけるRaccのh1 に対する 依存性は成り立っていると言える。
Width (ns)
0 10 20 30 40 50 60 70
Counting Rate (Hz)
10-4
10-3
10-2
10-1
図22 h1を変化させた場合の、それぞれのパルス幅の項における(21)式から計算し た偶発的同時計測の予測値Racc(黒点)とPMT1とPMT2の信号による偶発的同時計 測の計数率Rcoin(赤点)の値。Rcoin は、図21のデータと同じものである。Rcoin は Raccと誤差の範囲で一致している。
Width (ns)
0 10 20 30 40 50 60 70
Racc/(R1*R2) (ns)
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
図23 2本の光電子増倍管の計数率と入力パルス幅h2を6 nsで一定にして、入力パ ルス幅h1のみをそれぞれ10 nsから60 nsまで変えて測定した同時計測の計数率と2 本の光電子増倍管の計数率の積の比(赤点)とRacc/(R1·R2)(黒線)の比較。赤点は、
誤差の範囲でグラフ上に乗っていることがわかる。
次に、上記とは対称的に、h2 を変化させた場合について、偶発的同時計測の測定を 行った。Discriminator 1 とDiscriminator 2 のスレッショルドを −10 mVで固定し、
Discriminator 3の出力パルス幅を 10 ns に固定した状態で、h2 を6, 16, 26, 36, 46, 56 ns にそれぞれ変化させた時の計数率を測定した。h2 = 6,16,26 ns の時は1800秒間、
h2 = 36,46,56 ns の時は3600秒間測定した。この時、PMT1とPMT2の計数率はそれ ぞれR1 ∼1550 Hz, R2 ∼145 Hz でほぼ一定であった。
(21)式におけるパルス幅の項 h1+h2−2h3 [ns]に対するR1, R2,Rcoin のそれぞれの 計測値と、(21)式から計算したRacc の値は表8のようになった。h1 を変化させた場合 と同様にして、横軸を h1+h2−2h3 (ns)、縦軸を計数率 (Hz) として、R1, R2,Rcoin を プロットする図24のようになり、RcoinとRaccをプロットすると図25のようになった。
表8 h2 を変化させた場合の、(21)式におけるパルス幅の項 h1+h2−2h3 ns (=
Width) に対するR1, R2, Rcoinのそれぞれの計測値と、(21)式から計算したRacc
の値。
Width (ns) R1 (Hz) R2 (Hz) Rcoin (×10−3 Hz) Racc (×10−3 Hz) 10 1551.6±0.7 143.8±0.2 1.9±0.7 2.230±0.003 20 1548.2±0.7 150.9±0.2 4.4±1.1 4.673±0.007 30 1563.9±0.7 147.3±0.2 5.8±1.3 6.91±0.01 40 1468.9±0.9 135.8±0.3 9.4±2.3 7.98±0.02 50 1625.1±1.0 150.7±0.3 12±3 12.2±0.2 60 1625.1±1.0 150.7±0.3 16±3 14.7±0.3
h2 を変化させた場合も、R1 とR2 の値は統計的なばらつきによって全く同じ値には なっていないので、単純に図 25 から (21) 式の h2 に対する依存性を評価することは 出来ない。そこで、h1 を変化させた場合と同様に、横軸を h1 +h2 −2h3 ns、縦軸を Rcoin/(R1·R2) ns としてプロットした偶発的同時計測の計数率とPMT1とPMT2の計 数率の積との比Rcoin/(R1·R2)が、(23)式に従って正比例の直線に乗るかどうかを見れ ばよい。各測定点をプロットすると図24のようになり、確かに誤差の範囲で正比例の直 線に乗っていることが分かる。これより、(21)式におけるRaccのh2 に対する依存性は 成り立っていると言える。
以上の実験から、(21) 式における偶発的同時計測の計数率 Racc のパルス幅の項 h1+h2−2h3に対する依存性は成り立つことが確認できた。
Width (ns)
0 10 20 30 40 50 60 70
Counting Rate (Hz)
10-4
10-3
10-2
10-1
1 10 102
103
104
図 24 h2を変化させた場合の、それぞれのパルス幅の項における PMT1の計数率 R1(黒点)とPMT2の計数率R2(青点)と偶発的同時計測による計数率Rcoin(赤点)の 値。R1とR2は、R1∼1550 Hz,R2∼450 Hz でほぼ一定である。
Width (ns)
0 10 20 30 40 50 60 70
Counting Rate (Hz)
10-4
10-3
10-2
10-1
図25 h2を変化させた場合の、それぞれのパルス幅の項における(21)式から計算し た偶発的同時計測の予測値Racc(黒点)とPMT1とPMT2の信号による偶発的同時計 測の計数率Rcoin(赤点)の値。Rcoin は、図24のデータと同じものである。Rcoin は Raccと誤差の範囲で一致している。
Width (ns)
0 10 20 30 40 50 60 70
Racc/(R1*R2) (ns)
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
図26 2本の光電子増倍管の計数率と入力パルス幅h1を10 nsで一定にして、入力パ ルス幅h2のみをそれぞれ6 nsから56 nsまで変えて測定した同時計測の計数率と2 本の光電子増倍管の計数率の積の比(赤点)と、Racc/R1R2(黒線)の比較。赤点は誤差 の範囲で実線上に乗っていることがわかる。