第 6 章 ミューオンの寿命測定 43
6.4 両側読み出し回路によるミューオンの寿命測定
図48 ブロック型シンチレータからの信号を両側読み出しで同時計測し、それを#2 の信号とするミューオンの寿命測定回路。TACのStart信号として#1∩
#2∩#3¯ を入力し、Stop信号として#2を入力している。
図49 両側読み出し回路で用いるブロック型プラスチック・シンチレータとライトガ イドの寸法。両側にライトガイドを2個接着する事により、信号を両側から読み出す 事ができる。
図50 両側読み出し回路のプラスチック・シンチレータの配置図。実験台と平行にな るように配置する。
図51 両側読み出し回路によるミューオン寿命測定の実験装置。
6.4.2 実験結果
TACの設定を20µs にして約18時間(65000秒)ミューオンの寿命測定を行った結果、
図52のような時間スペクトルが得られた。フィットの範囲は 1.0 µs ∼ 20 µs である。
フィットにより得られたミューオンの寿命はτµ= 1.60±0.15µs、1ビンのバックグラウ ンドはn0 = (1.10±0.28)/(0.48µs)となった。得られたバックグラウンドを計数率RBG
に変換すると、RBG = (7.0±1.8)×10−4 Hzである。この実験におけるSTART信号と STOP 信号の計数率 RST ART, RST OP と、予想されるバックグラウンドの計数率Racc は表18のようになった。
表18 両側読み出し回路によるミューオン寿命測定のSTART信号とSTOP 信号の 計数率RST ART、RST OP と予測されるバックグラウンドの計数率Racc。
信号 計数率 (Hz) RST ART 0.98±0.10
RST OP 32.35±0.57 Racc (6.8±0.7)×10−4
得られたミューオンの寿命 τµ は、文献値τµ = 2.20µs[3]よりも小さな値となってい るが、得られたバックグラウンドの計数率RBGは、予測されるバックグラウンドの計数
µ s) Time (
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
Counts per channel
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
図52 両側読み出し回路による、崩壊時間が20 µs以内であるミューオン崩壊イベ ントを約 18時間測定した時間スペクトル。フィットの範囲は1.0 ∼ 20µsで、寿命 τµ= 1.60±0.15µs、バックグラウンドnBG= 2.28±0.58/µs。
率Raccと誤差の範囲で一致している。フィットにより正しいミューオンの寿命が得られ ないのは、統計量が少なくなっているためだと考えられる。1.0∼ 20µs の範囲における ミューオンの崩壊数を調べると、(181±22)個であった。すなわち、ミューオン崩壊の計 数率Rµは(2.8±0.2)×10−3 Hzである。片側読み出しのブロック型プラスチック・シン チレータを用いたミューオン寿命測定におけるミューオン崩壊の計数率(4.3±0.2)×10−3 Hzと比較すると、両側読み出し回路の装置で測定されたミューオン崩壊の計数率は 2/3 程度になっている。バックグラウンドの計数とミューオン崩壊数がいずれも減少している ため、各測定点におけるイベント数が少なくなって誤差が大きくなり、正しくフィットが 出来ていないのだと考えられる。
約18時間の測定では、統計量が少なくなってしまうことにより、正しいフィット結果 が得られなかった。そこで、統計量の多いデータを取るために、約84時間(30万秒)の間 ミューオンの寿命測定を行った。時間スペクトルは図53のようになった。実験の結果、
得られた寿命スペクトルは図53のようになった。フィットの範囲は 1.0 µs ∼ 20 µs で ある。フィットにより得られたミューオンの寿命はτµ = 2.09±0.11µs、1ビンのバッ クグラウンドはn0 = (3.54±0.49)/(0.48·µs)となった。得られたバックグラウンドを 計数率RBG に変換すると、RBG = (4.9±0.7)×10−4Hzとなった。この実験における START信号と STOP 信号の計数率 RST ART、RST OP と予測されるバックグラウンド の計数率Raccは表19のようになった。
得られたミューオンの寿命 τµは、文献値 τµ = 2.20µs[3]と誤差の範囲で一致してお り、得られたバックグラウンドの計数率RBGは、予測されるバックグラウンドの計数率
µ s) Time (
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
Counts per channel
0 50 100 150 200 250 300
図53 両側読み出し回路による、崩壊時間が20 µs以内であるミューオン崩壊イベン トを、約84時間測定した時間スペクトル。フィットの範囲は1.0 ∼ 20µsで、寿命 τµ= 2.09±0.11µs、バックグラウンドnBG= 7.34±1.02/µs。
表19 両側読み出し回路によるミューオン寿命測定のSTART信号とSTOP 信号の 計数率RST ART、RST OP と予測されるバックグラウンドの計数率Racc。
信号 計数率 (Hz) RST ART 0.88±0.05
RST OP 32.27±0.23 Racc (5.4±0.6)×10−4
Raccと誤差の範囲で一致している。これより、長時間測定をして十分な統計量があれば、
ミューオン崩壊の時間スペクトルが得られることが分かった。
フィットの範囲1.0∼ 20µsにおけるミューオンの崩壊数を調べると、(732±19)個で あった。すなわち、ミューオン崩壊の計数率Rµ は、(2.44±0.06)×10−3 Hzである。
RBGと比較すると、Rµ :RBG ∼5 : 1である。