第4章 保護者への質問紙調査
第4節 保護者の意識に関する日中比較
8,箸使いと大脳の発達について(問7)
幼児期から箸を使うことは幼児の大脳と協調性の発達に促進できると思いますかという 項目の答えについて,無回答が3人おり,答えた人の全てが促進できると答えた。
9,幼児の箸使いに気が付いたことについて(問8)
94人(66%)の保護者は,幼児の箸使いに対する考えを書いている。全体から見ると,
保護者たちは,幼児期から幼児に箸使いを習得することに対して賛成の意見を持っている。
保護者は,箸を使うことが中国の伝統的な食文化として次の世代に伝承されていくはずで,
中国では基本な生活習慣なので小さい頃から習得すべきであり,できるだけ幼児に箸を使 わせる,と述べている。また,手先が器用になり,幼児の脳の発達によい影響があると考 える保護者も多い。
幼稚園でも幼児たちに箸使いの機会を与えたいと述べた保護者もいる。幼稚園の保育者 が幼児に箸の持ち方や箸使いのマナー等を伝えてほしい。家庭でも幼稚園でも一緒に箸使 いを促すなら,幼児は速く習得できると考える。
また,保護者たちはいろいろな意見を述べた。例えば,練習箸やキャラクターがある箸 を幼児に買ったら,幼児が箸使いに興味を持つようになる,練習箸を使えば普通の箸が使 いにくくなる,幼児専用の箸があったらいい,大人が正しい模範を示せば,幼児によい影 響を与える,家庭で箸使いを習ったことがあるが,諦めた等である。
一方,安全面の配慮による,幼児が好きになる時使わせればいいという意見もあった。
表4−5保護者の意識に関する日中比較
項目 日本 中国 考察
母親と父親。母親による 母親が72%を占めている。 日本でも中国でも家庭で 質問紙に 回答の割合は96%であ 主に母親が幼児の教育等
答える人 る。 を担う。中国より日本は
この傾向が強い。
1人以外,ほとんどの幼 使う経験がある幼児は 箸を使う経験について中 幼児は箸 児は箸を使ったことがあ 93%で,2歳や3歳から使 国より日本のほうが多 使いの経 る。年齢については2歳 つたのが8割以上である。 く,ほぼ全ての幼児が経 験がある と3歳が最も多く,77%を 験している。日本の幼稚
のか,何歳 占める。 園のお弁当日が,大きく
からのか 影響していると考えられ
る。
2/3の幼児は家庭で教え 家庭で教えられた幼児は 中国の幼児が食事の時に られたことがある。母親 8割以上に達している。教 箸を使う機会は家庭だけ に注意されるのが一番多 える人について母親が である。母親の他に,教 誰かに教
く 42%,次いでは父親 43%,次いで父親(25%), える人は父親,祖父母,
えられる
(26%),祖父母(26%), 祖母(23%),祖父とおば おばさんであり,ほとん のか
きょうだいと友達(6%) さん(9%)である。 ど大人である。日本では
の順である。 きょうだいや友達等,子
供同士の影響もある。
「模範を示す」が45%, 「親が模範を示す」,「幼 中国の幼児は普通の箸を
「練習箸を使う」で30%, 児が自分で模倣する」を 使う方が多いので, 「練
「言葉で教える」で17%, 答えた人数はほぼ同じ 習箸」ではなく, 「教材 箸使いを
「子どもが自分で使え で,それぞれ44%と45% 補助」の項目を設ける。
教える方
る」で8%である。 である。 「教材補助」と 結果から,両国ともよく 法
「言葉で教える」のが 使っている方法は「模範 ll%しかない。 を示す」である。日本で は練習箸に頼る傾向が十
える。また,幼児が自分 で真似して習得する場合 は中国より少ない。
幼児期か 96%の保護者は幼児期か ほぼ100%の保護者は幼 日本も中国も保護者たち ら箸を使 ら幼児に箸使いを習得す 児期から箸使いを習得す は同じ意見である。
わせる必 る必要があると答える。 る必要があると考えてい
要性 る。
幼児に何 3歳や3歳以前と答える人 3歳や3歳以前と答える人 日本と中国はいっしょで 歳頃使っ が76%を占めている。 が76%である。 ある。3歳までに幼児に使
でほしい わせる。
脳の発達 84%の保護者は賛成して 答えた人は全部で,促進 中国の保護者は,日本よ
に促進で いる。 できると答える。 り脳の発達に与える影響
きるのか を強調している。
教え方等について不明 伝統的な食文化だから, 日本の保護者も中国の保 で,幼稚園でも教えてほ 習得することは当たり前 護者も家庭だけではな 幼児の箸
しい,幼児の箸使いの変 である。手先と脳の発達 く,幼稚園でも箸を機会 使いにつ
化に驚き,これからちゃ を促進できる。幼稚園と を設け,保育者に教えら いて気が
んと教えていきたい等を 一緒に箸使いを教えてほ れたいようである。この ついたこ
と 述べている。 しい等。 ように,家庭と幼稚園の
A携が必要だと考えられ
る。
【考察】
日本と中国は箸を使って食事する国である。箸使い,箸に関わるマナー等を伝統文化の 一つとして,しっかりと幼児たちに伝えることは当たり前とみなされている。それでは,
どのように幼児に箸使いに興味を持たせるのか,どのように教えればよいだろうか。日本 と中国の保護者にインタビューの結果から以下の示唆を得られる。
1,家庭で幼児に箸使いを教えることを基に,家族揃って一緒に食事をし,幼児のために 箸使いの雰囲気と真似する機会を作る。
2,できるだけ,1日の3回の食事のときを利用して幼児に箸使いの練習をさせる。幼稚
園でも箸を使えれば,さらに早く習得できる。特に中国の幼稚園では食事をする機会が多 いので,箸を提供すればよいのではないか。
3,幼稚園で食事することを通して,保育者や他の幼児から箸使いの刺激をもらえること ができ,幼児の箸使いの習得に対して役に立っている。
4,保護者自身が箸を正しく使えない場合や,どのように伝えればいいのか迷っている保 護者がいるので,幼稚園の保育者が正しい持ち方を教えることが望ましい。
5,日本側は幼稚園における箸使いの機会が増えた方がよい。例えば,お弁当日の回数の 増加や,遊びの時に箸を取り入れる等である。中国側は幼児の手の大きさに合う箸を準備
し,遊びの時だけではなく,実際に幼児たちに食事するときにも箸を練習させる。
このように,日本の幼稚園では幼児たちが自分の箸を持ち,箸で食事する機会がある。
また,幼稚園に入るまでに箸を使うことを促し,箸で食べる経験を持つことができる。幼 児は幼稚園で周囲からいろいろな刺激を受けながら箸使いを習得できる。中国の幼稚園で は,幼児たちが遊びのコーナーを利用して箸使いを練習することができる。遊びを通して 幼児たちは,箸使いの楽しさを体験でき,箸使いの意欲を高める。残念なことは,幼稚園 に実際の食事場面で箸を使う機会がないことである。したがって,幼稚園における幼児の 箸使いの習得を研究するために両国の幼稚園における箸使いの経験を参考にして,適切な 方法を考える必要がある。ただの箸使いの伝え方だけではなく,重要なのは幼児が箸のマ ナーを知り,箸使いの面白さや楽しさを感じさせ,箸という伝統文化を続けて守ることが できることである。