第 4 章 UFSfOM を用いたモデル作成 40
4.2 意思決定モデル
4.2.2 作成されたモデルの概要
PWC Editorを用いて,各要素をFUとして作成・設定する.
前述の六つの機能を実現するための,
図 4.6 オークションモデルのPWC
1 入札情報の認知,2 需要の認知,3 価値の評価,4 入札意志決定,5 入札処理 のFUの他に,
6 入札環境を提供する,7 経過時間をカウントする,8 入札金額を決める 9 入札処理のうち最大のものを選ぶ
というFUを用意した.
後半で提示した7 経過時間のカウントは,シミュレーションステップと実際のオーク ションでの時間経過の調整のための機能である.8 入札金額の決定は,本来,価値評価と 入札行動とに含まれる要素だが,CBRF以下のモデルの複雑化を避けるために分離したも のである.9 最大の入札額を選択する機能も,本来は入札処理に含まれるが,モデルが大 型化するため既存のCBRFであるALLMAXを利用して分割している.
入札者処理のCBRFもまた入札処理に含まれる機能の一部で,モデルが複雑化するため CBRFを分離しており,自身が現在の最大入札者である場合追加の入札を行わないように する処理を行っている.
さらに,エージェント自身が現在の最高額入札者である場合,追加の入札を行わない機 能をもったCBRFも,モデルの複雑化をさけるために別に用意した.
2 需要の認知のCBRFは,図4.7のように組まれている.ここでは嗜好と予算というパ ラメータから一つ目の推論を,必要度と商品イメージというパラメータから二つ目の推論 を行い,それぞれの推論結果から最終的な推論を行うというモデルになっている.需要を
構成する要素は多岐にわたり,ここで取り上げている要素はその一部分でしかない.それ らを考慮した場合このモデルはより複雑になるだろう.そのように複雑化した推論構造に おいて,CBRF構造はモデルの各推論が何を評価しているのか,を視覚的に示しているた めどのような過程で意志決定,判断がなされたのかを理解することが容易である.
モデル作成者の経験則によってモデルを作成し,その関係を視覚的な手法で表現するこ とができれば,様々な改変によってより高精度なモデルを探索する際のユーザの理解・共 有性を確保できる.
さらに,CBRFはFUに対してインスタンスに適用されるため,部分モデルであるCBRF を改変したとしても,モデル全体の内で変更する箇所は,そのCBRFが関与するFUのみ に限られる.そのため様々な推論を組み合わせたモデルを試作し,それらのCBRFを入れ 替えながら比較検証することで,最適なモデルの探索ができるであう.
3 対象の価値を評価する機能は,定価の値を元に需要要素と時間要素に基づいて算出し ている.需要要素は2 需要の認知において算出された値であり,需要のCBRF出力情報 と内的価値計算のCBRF入力情報がPWCによって接続されていれば,需要のCBRFの内 容が変更された場合でもモデルの設計変更は必要ない構造となっている.
時間による入札特性は,エージェントが入札の時間ごとに最も評価するタイミングの変 化を利用したものである.この値は時間経過の度合いと入札者の特性からFuzzy推論によっ て計算しており,入札確率CBRFにおいて算出された値を流用している.
時間経過による入札度は図4.8のようになっており,入札者の特性に応じてもっとも評
図 4.7 需要認知CBRF
図 4.8 時間経過特性FIU 価が高くなる時間が変化する.
なお,このモデルは精緻に検証したものではなく,既に知られている学説や,モデル作成 者の経験則にもとづいてモデル化されたものであるため,モデルの妥当性は未検証である.
しかし,簡単な経験則からこのようなモデルを作成し,実装レベルのスクリプトから処 理構造を視認化することで,モデルの理解・共有性を高め,かつモデルの改変によってよ り適切なモデルへと改善することが容易となっている.