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第 4 章 除染事業の実施

4.4 仮置場

4.4.1 仮置場の確保

除染を進めるにあたり、除染により生じた除去土壌等を仮置きする場所が必要不可欠であっ た。仮置場の確保は、地権者や地域住民の理解を得て進めていく必要があったが、当初そもそ も仮置場がどのようなものかを十分に説明できてなかったため、住民からは、仮置場の周囲の 空間線量率が上昇したり、集積した除去土壌等が漏れて飛散したりするのではないかという安 全性に対する不安の声が上がっていた。また、仮置きの期間が長期化し処分場になってしまう のではないかという心配や、他の地域で発生した除去土壌等を保管することへの不安等も示さ れていた。

仮置場確保にあたり、収集する除去土壌等を置くのに十分な面積があること、アクセス道路 があることなどの観点が必要であった。1つの仮置場で必要な面積を確保できない場合は、複 数の仮置場を確保する必要があり、また、土地が平坦でない場合は造成工事を行うことが必要 となることもあった。

また、必要面積についても、除染方法などが変わると除去土壌等の発生量が変わってくるた め、事前に除去土壌等の発生量を正確に予測することは困難であった。除染事業にあわせて段 階的に仮置場を増設していったが、仮置場の整備が間に合わず、事業の進捗に影響を与える場 合もあった。

汚染状況重点調査地域では、住民が生活し、農地などの多くの土地も利用されている中で、

仮置場を確保する必要があったが、これは非常に難しいものとなった。仮置場を確保できない 場合は、現場保管を行うこととなった。住宅の庭で現場保管を行う場合は、保管の期間が長期 化するにつれ、増改築や売買等により保管されている除去土壌等の移設が必要となることがあ った。

(2) 仮置場確保のための取組

仮置場の必要性について丁寧に説明を行うとともに、地元での仮置場の確保に理解を求め、

行政区長・町内会長などの協力を得て、現実的な解決策を地元と共に模索するように努め、行 政区単位で候補地を選定した。

また、仮置場の設置イメージの説明や、遮へい土の配置や仮置場設置後の管理方法の説明を行 い、仮置場の安全性に対する不安の解消・緩和に努めた。

仮置場は、作る際に除染や整地を行うため周囲よりも空間線量率が低く、また、遮へい土を設 置することで空間線量の上昇は防がれる。これらの工夫や、敷地境界での空間線量率を測定し地 元に情報共有することや、これらを現地で見学したり、住民自らが空間線量率を測定して確認す ることなどで、安全性の理解が進んでいった。自治体によっては、住民自らが仮置場を監視する 体制を構築することで、住民が安全を実感できるようにする取組もあった。

また、除染作業が一部の地域で始まると、仮置場が早く確保された地域は、除染作業が早く進 んでいくことや、仮置場の安全性や仮置場用地の汚染の心配もほとんどないことについて、理解 が進んだと思われる。

仮置場の設置が困難な場合は、現場保管のままでの運用とするなど、仮置場を絶対要件とする のではなく、地域事情に応じて柔軟な対応を行った。特に福島県外の地域や福島県内の都市部で

は、大規模な仮置場を確保することが困難であり、速やかに除染を開始する必要性から、仮置場 の設置ではなく除染を行った住宅の庭や、公園などに現場保管を行い、安全性やその後の搬出な どの説明を丁寧に行い、理解を求め、除染を進めた自治体も多数あった。

また、仮置場に搬入する除去土壌等の量を減らすため、発生した除染廃棄物についてはできる だけ裁断・破砕・圧縮・焼却するなどの減容化処理を行い、容積を減らすようにした。

(3) 仮置場の用地確保

仮置場は、基本的に地権者と賃貸契約により確保している。契約期間は3年間が多く、1年 契約や、搬出までの契約の場合がある。契約延長が必要な場合は地権者と協議を行っている。

図4-27 仮置場での保管から返還までの流れと保管期間の延長

コラム 「仮置場の確保について」 福島地方環境事務所

仮置場は、除染を開始する前に確保する必要があり、同意取得と並び除染を開始するための 前提条件となっていた。仮置場は、平坦で一定の広がりがあるアクセスのよい土地に設置する ことが、作業、管理、除去土壌等の運搬などの観点では重要であった。一方で、仮置場確保に あたっては、仮置場の土地の地権者からの了解はもちろんのこと、周辺の地域住民の了解を得 た上で設置を行うことが必要であった。

仮置場の場所に関しては、中間貯蔵施設への効率的な輸送を意図し、はじめは、仮置場を自 治体内に集約する方針としていたが、多くの自治体では、場所の選定を含めて地域住民との協 力関係を模索する中で、行政区ごとに仮置場を設置する例が増えていった。仮置場の確保に向 け、単に地図上から適地を探すのみならず、福島環境再生事務所(現:福島地方環境事務所)

の職員が現地を駆け回って、仮置場に適していると考えられる適地を見つけて、地権者等と調 整を行った。また、ある自治体では、森林の中に仮置場を設置することとしたが、起伏が激し いことや十分な面積を確保することが困難であったことから、行政区ごとに農地に一時的な仮 置場を設ける方針として地権者等と調整を行った。

説明会においては、と住民の怒りや不安が強く、説明できる雰囲気ではなく、何度も説明会 を開催した。

先祖代々に渡って使用してきた田んぼを仮置場として貸すことへの不安、仮置場の安全性や 恒久化することへの不安など様々な不安や心配が示された。

これらの不安は当然のことであり、福島環境再生事務所職員は1つひとつ丁寧に説明を行っ た。当初、仮置場は存在しなかったため仮置場のイメージを持ってもらうことは難しかった。

そこで、仮置場の模型を作成し、地権者などに具体的なイメージを持ってもらうための分かり やすい説明を心掛けた。また、放射性物質の拡散の懸念に対しては、パンフレットなどを用い て外に放射性物質が漏れ出るおそれがないことやモニタリングを実施することを説明して理解 を得ていった。さらに、地権者等への調整にあたり、自治体の職員や行政区長に協力頂き、大 変助けられた。こうして、徐々に仮置場の確保の理解は進んでいった。

現在借用している仮置場をしっかりと管理するとともに、除去土壌等の搬出を進め、仮置場 の原状回復を行うことで、速やかに地権者に返還できるよう努力してまいりたい。

出典:「除染情報プラザ展示物貸出カタログ(模型)

4.4.2 仮置場の設置