第 4 章 除染事業の実施
4.2 除染特別地域における除染事前調査・同意取得
4.2.3 モニタリング調査等
空間線量率の測定は、主にシンチレーション式サーベイメータを用いて、1cm、50cm、1m の高さにおいて、ガンマ線の空間線量率や表面線量率の測定を行った。また、除染対象物の汚 染の程度の測定は、GMサーベイメータを用いて、対象物表面からのベータ線による表面汚染密 度の測定を行った。
なお、除染対象物の汚染の程度や除染後の効果を確認するにあたっては、周辺の放射線によ る影響を受けないように、コリメータ(鉛等による筒状の遮蔽材)を使用して測定を行った。
空間線量率を測定する場合には、JISZ4333に規定される性能、要件等を満足する放射線サー ベイメータを用いる。表面汚染密度を測定する場合には、JISZ4329に規定される性能、要件等 を満足する放射性表面汚染サーベイメータを用い、測定した計数率(cpm)を記録する。
放射線量の測定は、水分による遮へい効果を抑制するため、原則として乾燥した状態のもの を測定することとなっている。
図4-7 測定機器及び測定方法
出典:「除染関係ガイドライン 平成25年5月 第2版(平成28年9月 追補)」(環境省)
シンチレーション式 サーベイメータ
GMサーベイメータ コリメータ
空間線量率の測定 表面汚染密度の測定
(2) モニタリング技術の進展
空間線量率及び表面線量率の測定に際しては、ウェアラブルGNSS(装着式位置確認装置)に よる空間線量率測定システムを活用した事例が見受けられた。ウェアラブルGNSSの導入により、
機材の重量を約1/5に軽量化し、計測値の無線送信により誘導員と記録員を1名に集約するこ とができたこと、また、カーナビ感覚で高速誘導できるため作業効率が10倍以上に向上したこ と、測定結果及びGISにより除染進捗状況の見える化を実現できたこと等の効果が挙げられる。
また、撮影した画像に放射線の高低を色分けすることにより、放射線を可視化するガンマカ メラが開発された。これにより、目に見えない放射線を可視化することが可能となり、除染の 効果や仮置場の安全性の確認に寄与した。
図4-8 装着式位置確認装置による空間線量率測定システムの例
図4-9 ガンマカメラの例
鹿島建設(株)提供
図4-10 ガンマカメラの撮影例
出典:復興庁・環境省・福島市・郡山市・相馬市・伊達市「除染に関する有識者との意見交換会~国と4 市におけるこれまでの知見から今後を考える~ファクトブック」(平成26年8月1日)
(3) 除染活動支援システム
除染後の空間線量率を予測し、除染効果を評価するシステムとして、JAEA は、「除染効果評 価システム(CDE)」を開発した。本システムは、除染の前後の空間線量率を推定評価し、除染 による線量率の低減効果を評価するシステムとして開発され、汎用ソフトであるエクセルによ り、多くの人が活用できるシステムとなっている。また、WEB 上の簡単な操作画面で除染効果 を予測評価できる「除染活動支援システム(RESET)」を開発し、除染特別地域や汚染状況重点 調査地域の市町村で利用されているほか、JAEA が国や自治体等の依頼を受けて予測等を行い、
除染実施にかかわる助言や技術指導に活用している。
また、東京電力や大手建設会社等により開発された3次元の除染効果予測システムもある。
これらは、除染工事の実施例から定量的な除染効果を読み取り、より現実に近い条件(地形や スカイシャイン等の考慮)で除染効果を予測する解析技術であり、具体的な除染による除染効 果予測と実績の説明ができ、住民の同意取得を円滑に行うことにも繫がった。
清水建設㈱提供
図4-11 3次元除染効果予測システムの例
「Dose 3D Map」解析例
(除染後予測)
(除染前状況)
空間線量率(μSv/h)