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事例研究の方法

ドキュメント内 学位の分野 教育学 (ページ 48-56)

1.患者選定の基準

 筆者が勤務している国立療養所に入院している筋ジス成人患者(二つの病棟があり、各 病棟約40床、2病棟合計約80床)の中から、以Fの基準に基づいて事例研究の患者とし て2人の患者(AさんとBさん)を選定した。

 (1)共通の基準として、

   ①社会人として働いていた経験がある〈基準1>

      学校・会社・勤労といった、世間一般の生活を経験してきた事。

   ②この国立療養所に入院後も何らかの社会的活動をしている〈基準2>

      ただ単に怠惰な生活をしているのではなく、目的をしっかりと持って療養iし       ている。

 (2)相反する基準として、

   ①家庭を持ち、その家族の協力を得られるか得られないか〈基ge 3~a、 b>

      つまり、一方が家庭を持ち、家族の協力が得られる(a)が、他方の患者は       独身で家庭を持った事がなく、兄弟や親戚の援助が得られない(b)。

   ②絵画など創作的な活動をしているか否か〈基re 4~a、b>

      つまり、一方の患者は創作的な活動をしている(a)のに対して、他方の患       者はそれらの活動を全くしていない(b)。

 以hから、選定した2人の患者を、上記基準を基にまとめると以下のようになる。

 Aさん(男性)…〈基準1・2・3~a・4~a>

         社会人として働いていた経験があり、入院した後も院内で何か社会的          な活動や創作的な活動をしており、家族がいて、その協力が得られる。

 Bさん(男性)…〈基準1・2・3~b・4~b>

         Aさん同様社会人として働いていた経験があり、入院したあとも、

         何らかの社会的な活動をしているが、独り身であり、院内では創作的          な活動はしていない。

2.研究内容とデザイン

 (1)研究内容

  〈面接による聴取に基づいた研究>

   a.病気や障害に関する事

   ①誕生から現在までの生い立ち・生育歴・現病歴と、その時々の思い、特に病気      になったり、筋ジスと確定診断され、心理的危機に陥った時の思いや葛藤、あ      るいはその乗り切り方を中心に話を伺う。

   ②病院内でのADLの自立度と困難の程度や内容を、つまりは身の回り動作や起      居動作・移動動作などをどのようにして実行しているのか、ないし介助しても      らっているのかを詳細に聴取する。

   b.病院内の生活に関する事

   ①病棟での一日の日課~起床から就寝、さらに夜間の体位交換までを詳しく聴取。

   ②病院での一週間の生活スケジュール~日曜日から土曜日までの日中の行事や行      動の内容。

   ③病院での年間の活動と行事の内容~1月から12月までの年間の恒例行事や活      動の具体的内容。

    ④病院附属リハビリテーション学院学生による患者ボランティア活動の利用状況      とそのボランティア活動に対する感想や意見

       リハビリテーション学院の学生による患者ボランティア活動の内容とそれ        に対する患者の感想を具体的かつ詳細に聴取。

   c.聴取方法     ①聴取期間と時間

      Aさんの場合~2001年5月24日から7月26日の期間、原則的には週1回、

       木曜日。時間は毎回13時から14時半まで(結果として合計        7回、延べll時間)。

      Bさんの場合~2001年11月9日から2002年4月5日までの期間、原則的        に毎月2回、第2と第4金曜日。13時半から14時半まで        (結果的に合計9回、延べ10時間25分間に及んだ)。

 ②聴取場所

   Aさんの場合~病院デイケア棟の絵画室。木曜日午後の絵画室は職員も他の       患者もおらず、静かな環境で話を伺えた。

   Bさんの場合~病棟の自分の病室。Bさんの部屋は6人部屋であるが、金曜       日午後の時間は状態が重く臥床している2人の患者以外は訓       練等で部屋に誰もおらず、比較的静かな環境で聴取出来た。

d.聴取のやり方

   各回の話題は初めの2、3回は生い立ちから現病歴を経て現在の病棟生活を    尋ねる事に終始したが、その後は行きつ戻りっしながら筆者が気にかかった    事、関心のある事、あるいは前回の面談時にはっきりしなかった事などを中    心に、毎回3点くらいに主な質問事項を選定して伺う。さらに時間の許す範    囲でその時々の話題をつけ加えた。

e.記録の仕方

   会話中の記録はメモ程度にとどめ、面談が終了した後、出来るだけその日の    うちに、会話のやりとりと内容を思い出しながら、可能な限り忠実に、かっ    重要と思われる会話を中心に、筆者と患者との会話形式で記録する。

    (Aさんに関しての記録は[記録A]、Bさんに関しては[記録B]を参照)

〈記録物の収集・調査とその分析>

   Aさんの場合~

     ・自費出版の書籍『神様がくれた休暇』(2000年2月出版)

     ・俳句サークル句会誌『風祭』に掲載された俳句

     ・OTでの切り絵作品と絵画サークルで描いた油絵作品

     ・小学校講演した時の参加者(小学生)の感想と、Aさん本人のそれへ       の返信の文章(2000年6月)

     ・『神様がくれた休暇』を課題として筆者が看護学生に講義した際の看       護学生の感想の文章とそれへ返答したAさんの文章(2001年5月)

     ・その他、Aさん自身が書いた記録物、ないしAさんに関する記事等。

   Bさんの場合~

     ・患者の文集『いばら』の記録

     ・俳句サークル句会誌『風祭』に掲載された俳句

〈参与観察による分析〉

  活動や日常生活に参加ないし見学しながら、その行動・動作や心の内面や気持

ちを探る。

 Aさんの場合~絵画教室への参加  Bさんの場合~OT訓練観察

、OT訓練での切り絵見学

 (2)研究のデザイン及び分析方法

 質的研究。

 但し、記録の中の個々の文章をカテゴリーに仕分け、項目化する“グラウンデッド・セ オリー・アプローチ”の考え方を参考にしてデータを分析する。つまり、ヒ記eで記録さ れた会話内容を基に、生い立ちから発症、入院など現病歴を辿りっつ、現在までの個人の 歴史を自叙伝風に再現し、生い立ち、学生時代、社会人時代、闘病生活時代、入院生活時 代など人生の転機となる時代毎に項目を分かち、見出し番号を付ける。そうして、その文 章の中で心理的契機や転換となった重要ないし大切だと思われる文章の一一部をほぼそのま ま簡潔に引用して書き出し、表を作成する(表9、ll参照)。そして共通なエポックとな った事柄を拾い出して凡例として、その番号毎に色をっけカテゴリーとし、それをさらに 共通のカテゴリー毎にまとめ、大カテゴリーとして集約する(表10、12参照)。

 こうして、筋ジスに罹った一人の人間の心の軌跡を、《大カテゴリー》~《カテゴリー》

~《区分》に構造化して全体的、かっ総括的に把握するとともに、本研究の4つの課題に 関しては、区分の番号を該当すると考えられる課題に割り振って当てはめて分析し、その 原因や契機・要因を解明する。詳細は第4章に譲るので、そちらを参照の事。以下に分析 方法の概略図を添付する。

      【分析方法】

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N       N

!1心理融変遜の分祈ノ      l

l      l

N      

1 面談の記録を個人歴に沿って再構成(参考となる記録物や調査内容も付け加える)‖

\       、

i    <個人歴醐成>    l

i      ↓      i

i

      i i人生の転機となる時代毎に番号1)~      i

i   〈時代区分け化>    i

i      ↓       i

i   と驚《⌒ 蹴l

      i

i

i       ↓      i

i表全体を概観し共通となる事柄毎に共通の凡例を作り、それに該当するすべての i

i

      i i番号に着色する       〈表の凡例化〉⇒カテゴリー化         i

i     ↓      i

i各カテゴリー毎に共通のものをくくり、⇒大カテゴリー化       i

l願の醐      i

i区分の醗本研究の・つの課題に当て1まめる(重複可とする)・ i

i      ↓      i i・噸題以外でも大切と蹴ぷ働}まそれにも振り分ける i i       ↓      i

i各課題に振り分けた脚内容を分析     i

i       〈課題と区分との照合>      i

i     ↓     i

i課題に対する難裡因や癖を見つ}拙す       i

l       i

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l_一_,_,_._,_、_._,_,_,_,_,_,_,i、,.-nt,_,_,-V-_,_._、_,_.-Vl”t-._.」

引用文献

(1)厚生省精神・神経疾患研究 筋ジストロフィーの療養と看護に関する臨床的、社会    学的研究班編:筋ジストロフィー看護マニュアル、1996、6ページ。

(2)山田富也:こころの勲章、エフエー出版、1990、36ページ。

(3)西岡和栄:日暮れて道遠し(自費出版)、1984、5~6ページ。

(4)山田富也:筋ジストロフィー症への挑戦、柏樹社、1983、146~147ページ。

(5)K Obler-Ross、 E:On Death and Dying,1969(川「]正吉訳『死ぬ瞬間 死にゆく人    々との対話』、読売新聞社、1971)。

(6)Frankl,V.E The Unheard Cry for Meaning,Pocked books(New York),Washington Square    Press,1978,P45.

(7)国立療養所西多賀病院詩集編集委員会編:車椅子の青春 進行性筋ジストロフィー    症者の訴え、エール出版、1975、3~5ページ。

(8)石川高広(石田較編):石川高広詩集 青空 母と子の心の記録、新書館、1977。

(9)橋本…俊・橋本日那子:オスカーをたのむよ 筋ジストロフィーで逝った19才の    青春、新声社、1981。

(10)安達哲男:心は生きている、思想の科学社、1988。

(ll)今井隆裕:春を待つこころ、エフエー出版、1991。

(12)栗原征史:神さまに質問 筋ジストロフィーを生きたぼくの19年、ファラオ企画、

   1992。

(13)春山満:僕にできないこと。僕にしかできないこと。、幻冬社、2000。

(14)渡辺一史:こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち、北    海道新聞社、2003。

(15)厚生省及び厚生労働省の精神・神経疾患研究委託費による筋ジストロフィー患者に    関する総合的研究(所謂『筋ジス第4班』)の研究成果報告書(昭和48年度~平成13    年度)

参考文献

(1)厚生労働省編:全国国立病院・療養i所便覧、2003。

(2)厚生省心身障害研究 進行性筋ジストロフィー症臨床的研究班、看護部会編:進行    性筋ジストロフィー症看護基準、1952。

(3)日本筋ジストロフィー協会編:ZSZ療育 第33回全国大会、1996。

(4)山田富也:難病患者・命を賭けた10年の記録 愛 振り返る時、エール出版、1985。

(5)石川正一:車椅子の上の17才の青春 たとえぼくに明日がなくとも、立風書房、1973。

(6)北原敏直(石田校編):星への手紙、新書館、1974。

(7)甲山政弘(石田絞編):長い道、新書館、1975。

(8)福嶋あき江:二十歳 もっと生きたい、草思社、1987。

(9)小西弘一:いのち煙めくとき 施設介護から地域へ自立する三兄弟物語、ハート出

   苑反、 2000。

(10)浅沼峯夫:神様がくれた休暇(自費出版)、2000。

(ll)中嶋智恵子:「ありがとう」と「ごめんね」 ミオパチー闘病記、2001(自費出版)。

(12)春山満:それぞれが幸福な社会迎えるために、扶桑社、2001。

(13)春山満:もう一度この手で、抱きしめたい、幻冬舎、2002。

(14)土屋竜一:神様からの贈り物、角川書店、2002。

(15)『国立療養所箱根病院誌上句会 風祭』誌。

(16)上田敏:筋萎縮性疾患とリハビリテーション、理・作・療法、12(6)、1978、373    ~382ページ。

(17)上田敏:リハビリテーションを考える 一障害者の全人間的復権一、青木書房、1993。

(18)上田敏:進行性疾患をもつ患者への心理的配慮、総合リハ、(3)454ページ、1975。

(19)梅崎利通:成人筋ジストロフィー症(PMD)入院患者用“生きがい指数”(Quality of    Life Index)の改良、筋ジストロフィー症の療養と看護に関する臨床的、心理学的    研究 研究成果報告書、厚生省、1989、403~410ページ。

(20)梅崎利通:リハビリテーション学院の学生による患者ボランティア活動、平成元年    度 厚生省神経疾患研究委託費 筋ジストロフィー症の療養と看護に関する臨床   的、心理学的研究、研究成果報告書、】990、IOO~105ページ。

(21)梅崎利通:入院筋ジス患者の外泊旅行とそのQOL、平成3年度 厚生省神経疾患

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