(事務系)、「医療情報技師」(技術系)及び「医療機関CIO(仮称)」(経営系)について実情を とりまとめた。
(1)診療情報管理士
診療録(カルテ)の内容を管理する「診療情報管理士」(1996年に「診療録管理士」から名称 変更)は、ICD国際疾病分類に基づいて病名をコード化し、情報をデータベース化する役割を担 っている。診療情報管理士の業務は、診療録が紙からITへの移行に伴い、ITの知識と共に統計 学の知識(疾病毎の患者統計分析等)も必要とされている。(財)日本医療機能評価機構が医療水 準の向上を目的として第三者的立場から審査する「病院機能評価」(医療の質の評価、受審は任意)
の評価項目の一つとして診療録の管理がある。「診療情報管理士」が病院に存在することが医療情 報の品質管理がされているとして評価される。また診療報酬点数の加算項目にもなっており、「診 療情報管理士」は近年急速に増加している。更に、診断群分類DPC(Diagnosis Procedure Combination)別包括評価制度の導入に伴って「診療情報管理士」は、国際疾病分類に基づくDPC コードの付与、DPCベースの診療情報の統計処理・分析などの新たな業務を担うようになった。
(社)日本病院会が「診療情報管理士」認定試験を実施し、医療研修推進財団や病院団体により 共同認定されている。2007 年時点の認定者数は約9000で、2005度からは「診療情報管理士」の 技能・資質向上、管理者・指導者の育成を担う「診療情報管理士指導者」の認定も開始されている。
(2)医療情報技師
「医療情報技師」は、下記の役割を担っている。
①病院内で電子カルテを中心にした医療情報システムを構築する
②運用時において医療現場で業務をする従事者と情報システムのベンダとの橋渡し(通訳)の役 割を果たす
③効果的な医療情報システムにしていく
日本医療情報学会によると、このような役割を果たしていくために「医療情報技師」には医療 情報システムだけでなく情報処理技術及び医学・医療の3つの領域の知識の習得が求められてい る。そのため各領域には以下の科目が用意されている。
・医療情報の特性と医療情報システムの現状 ・コンピュータの基礎 ・医学・医療総論
・病院情報システム ・ネットワーク技術 ・医療制度
・広域ネットワークが支える医療情報システム ・データベース技術 ・医療・病院管理
・組織間の調整と契約 ・情報システムの開発と運用 ・社会医学
・医療情報の倫理標準化 ・システム管理 ・臨床医学
・医療記録の電子化 ・情報セキュリティ ・診療録およびその他の診療記録
・医療情報の倫理 ・臨床看護
・医療支援のためのデータ分析・評価 ・臨床検査
・医薬品の体系
・安全で適切な医療
・先進医療
医療情報システム 情報処理技術 医学・医療
「医療情報技師」の認定試験は日本医療情報学会により2003年から実施され、2007年までに 6000人以上が認定されている。約半数はベンダの人である。関西地域においては神戸市立医療セ ンター中央病院が「医療情報技師」の認定者数が30人と突出しており、全国一のレベルにある。
なお、「医療情報技師」の資格認定制度は「関西医療情報処理懇談会」で2001年頃から医療部門
の情報技師の資格認定についてワーキングで検討してきた内容などが下敷きになっている。なお、
同学会の医療情報技師育成部会委員も関西地域は、関東地域についで多い。また、「医療情報技師」
の上位の資格である「上級医療情報技師」が2008年2月に初めて81名が認定された。「上級医療 情報技師」は医療情報シスステムをマネージする立場の人を想定し、病院経営をにらんだシステ ムの企画と開発・運用の調整と共に蓄積されたデータベースを活用し、新しい知見を生み出すこ となどが期待されている。
地域(都道府県)の病院当たり医療情報技師数と電子カルテ導入率の間には相関が認められる。
関西地域では医療情報技師の資格取得に対して熱心な地域であることが見て取れる。
都道府県別病院当たり医療情報技師と電子カルテ導入率の相関
(2005年度)
0%
5%
10%
15%
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 病院当たり医療情報技師数(人/病院)
%)
出展:「厚生労働省統計表データベースシステム」(医療施設調査2005年10月)
「有限責任中間法人日本医療情報学会 医療情報技師育成部会」のHPより (上記の医療情報技師数は2003年〜2005年に認定された数の累計数である)
(3)医療機関CIO(仮称)
病院の経営を担う人材(病院長や事務局長クラスの人)を対象とした「医療機関CIO(仮称)」 の育成も検討されはじめている。「医療機関CIO(仮称)」は上記「上級医療情報技師」の延長 線上にあるというよりもむしろ経営陣の一翼を担う立場の人物が考えられている。そのような
電子カルテ導入率(
大阪 (東京) (愛知)
和歌山 奈良
京都
滋賀 兵庫
地域別病院当たり医療情報技師と電子カルテ導入率の相関
(2005年度)
0%
5%
10%
15%
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 病院当たり医療情報技師(人/病院)
)%(導入率テカル電子
中国・四国 関西
中部 関東 九州・沖縄
東北・北海道
認識から東京地区では「医療機関CIO(仮称)」の候補者を対象とした病院経営塾が開催され ている。「医療機関CIO(仮称)」の役割り、必要な知識、資質等については、現在色々な機関 で検討、模索しているところである。例えば、国際医療福祉大学では経済産業省より2004年 度に「医療情報管理者(CIO)育成のためのモデルプログラム開発事業」を受託し、育成プロ グラムを作成し、教育を実施している。また、その教育支援ツールとして経済産業省の2005 度委託事業「医療経営人材育成事業」として、医療経営人材育成テキストが作成された。更に 2006度には京都大学や大阪大学などを含む5つの団体(コンソーシアム等)が同テキストに対 する補完教材の作成や実証授業を実施している。また、京都大学は医療経営の人材プログラム を専門職大学院として有しており、「医療経営ヤングリーダーコース」を運営している。
アメリカでは特に珍しい存在ではない「医療機関CIO(仮称)」も日本では公的医療機関な どの一部を除き、まだ余り存在していない。医療機関でIT化が急速に進んでいく中で院内に おいてITガバナンスを確立するためには、「医療機関CIO(仮称)」の存在が強く求められて おり、その早期育成が待たれる。
ヒアリングを通じて得られた「医療機関CIO(仮称)」の役割、知識、資質についての一例 を下記に示す。
●「医療機関CIO(仮称)」の役割
・全体最適の視点からITを活用した病院経営戦略の構築
・情報を目的に沿って活用し、課題を克服する
・経営トップや各医局とのコミュニケーションや調整
・病院内外のITを活用した複数のプロジェクトを統合的にマネジメントする
・人間関係を押さえた上でのIT関連組織の編制
・情報やベンダについて取捨選択の判断
・IT関連の人材育成
・取り巻く環境変化(法改正等)への早期対応策の検討
●「医療機関CIO(仮称)」に必要な知識
・経営に関する知識
・ITに関する知識
・診療に対する知識
・病院の仕組み知識
●「医療機関CIO(仮称)」に求められる資質
・コーディネート力(コミュニケーション、調整能力)
・経営的センス
・強いリーダーシップ
・統合的プログラムマネジメント能力
なお、「医療機関CIO(仮称)」の機能を一層発揮するためには、サポートする事務局(情報 収集、分析等)を組織編成することが望ましいといわれている。なお、規模の小さい病院では 医療情報部がその役割を担ってもよい。
2.3 医療情報の標準化
レセプトコンピュータ(診療報酬書類作成を主体とした医事会計システム)については各医療 機関にほぼ行き渡りつつある。その中でも日本医師会総合政策研究機構(日医総研)によるレセ
プトコンピュータ(ORCAシステム)の診療所等への導入の伸びが特筆される。今後レセプト情 報のオンライン伝送化に伴い、医療保険事務コスト削減化や疫学的活用に向けた色々な分析が行 われようとしている。一方、電子カルテを中心とした院内システムの構築および地域の医療情報 ネットワーク化については、医療情報を共有することによりシームレスな高品質治療の確保、役 割分担をベースとした医療連携を行うことが目的である。従前の我が国の医療分野のIT化政策で は電子カルテの導入自体が目的化され、標準化・相互運用の確保が十分に確保さないままに進め られた結果、電子カルテはあまり普及をみず、また、地域の医療情報ネットワーク化の取り組み もエリアの一層の拡大にはつながらなかった。その反省を踏まえ現在では、標準化や相互運用性 に力点をおいた地域の医療情報の連携化の実証実験が進められている。
(1)標準化の必要性
医療機関の情報システムはマルチベンダの各種システムが複合したシステムとなっている。
そのため病院内はもとより地域で医療情報を相互運用するためには標準化が必須の要件とな る。医療分野が他の分野に比べて情報化が遅れている要因の一つとして標準化の遅れがある。
一連の標準化を行うことにより院内及び地域での相互運用が可能となり医療情報システムの 普及が促進される。
(2)標準化の要素
標準化には以下のような要素がある。
①診療記録の記載に必要な用語・分類コードの標準化(疾病名、薬名)
②医療情報交換規格の標準化(文字情報等のHL7、画像情報のDICOM)
③医療情報システム間の業務運用の標準化(IHE)
④セキュリティなどの基盤技術の標準化(公開鍵基盤の構築)
⑤診療プロセスの標準化(クリニカルパス)
⑥診療記録様式の標準化(POMR:Problem Oriented Medicai Record、電子カルテ記載内容)
● 用語・分類コードの標準化
(財)医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)は、マスターの標準化を進めている。
厚生労働省の委託を受けて用語・分類コードの標準化として9種の標準マスター(用語、コ ードを分野別に体系化したもの)を作成し、公開している。①病名マスター、②手術・処置マ スター、③臨床検査マスター、④医薬品マスター、⑤医療機器データベース、⑥看護実践用語 マスター・症状所見マスター・歯科分野マスター、⑨画像検査マスター
また、心電図や脳波の波形データの標準化としてMFER(Medical waveform Format Encording
Rules)交換規格の事務局を同センター内に設置し、日本から標準化を提案してISO/TSに採択
された。
● 交換規格や業務運用の標準化
医療情報の業界団体である保健医療福祉システム工業会(JAHIS)は、関係機関の協力を得 て医療情報標準化推進協議会(HELICS Board)を、また医療用放射線機器等の業界団体である 日本画像医療システム工業会(JIRA)は関連学会の協力を得て日本IHE協会(Integrating the Healthcare Enterprise)などを設立し、標準化の推進に取り組んでいる。それぞれ国内の標準化 の一貫性を保つための調整・承認、標準規格を利用した医療情報連携のガイドライン作りなど