• 検索結果がありません。

第4章 高次脳機能障害者に対する高次脳機能障害ケアプログラ ムの一般病院における実証研究

第5節 一般病院の療養型病棟における高次脳機能障害ケアプログラムの実践

5-1 目的

高次脳機能障害ケアプログラムを一般病院の療養型病棟に入院した高次脳機能障害のあ る患者に実施し、本プログラムの効果について検討する。

5-2 方法 5-2-1 対象患者

対象患者は一般病院の療養型病棟に入院した高次脳機能障害のある患者 3 名.とした。3 名の患者はいずれも急性期病院での治療を終了し、在宅に向けてリハビリテーション目的 で療養病棟に転院してきた患者であった。

患者 A:40 歳の男性で前職業は大手会社に勤めるシステムエンジニアであった。病名は脳 動脈瘤破裂後くも膜下出血、開頭血種除去術を施行。昏睡 10 日間であった。身体状況で麻 痺はなかった。前病院で記憶障害、注意障害、病識欠落、遂行機能障害の高次脳機能障害が あると診断された。

患者 B:20 代の女性で、前職業は事務職であった。スケートボード中の事故で脳挫傷とな った。昏睡 15 日間であった。身体状況で左不全麻痺麻があった。前病院で発動性障害、見 当識障害、注意障害、左空間失認の高次脳機能障害があると診断された。

患者 C:50 歳女性で主婦であった。高血圧症で近くの病院で通っていたが、内服を受傷 1 年前からしなくなり、脳出血となった。昏睡 18 日間であった。身体状況で痺麻はなかった。

前病院で発動性障害、見当識障害、注意障害の高次脳機能障害があると診断された。

5-2-2 高次脳機能障害ケアプログラム実施手続き

1. 高次脳機能障害ケアプログラムの「プログラムの進め方」に則り、以下のようにし た。

対象者は「身体状況のアセスメント表」を用いて、治療と高次脳機能障害ケアプログラム の対象となり得るかを判断した。(表 4-3)

2. ベースラインを 3 日間とした。高次脳機能障害から起こる生活上の問題を明確にする ために、3 日間昼夜を通して担当した看護師が「脳機能障害より起こる生活上の問題抽出 アセスメント表」より確認した場合「あり」に○をつけ、カンファレンスで共有した。

(表 7-2)

3. 高次脳機能障害が複合しているかを判断するために、「高次脳機能障害の有無と障害重 複確認チャート」より視覚的に確認し、カンファレンスで共有した。(図 4-1)

4.看護上の問題、目標設定、課題別介入の選択は「日常生活の課題・課題目標・課題介入 チャート」を用いて問題抽出、目標設定、課題別介入を選択し、カンファレンスで共有し た。(図 4-2)

5. 看護師は実践に先立ち、各高次脳機能障害別基本的な関り方を確認して実行した。

6. 看護師は該当する課題別介入を共有し実施した。

7. 評価は 1 週毎に患者評価としてカンファレンスを病棟で開き行った。評価の方法は、プ

85

ログラムに則り、課題介入を行って成果が1週間たっても効果が出ない場合には介入は、一 時中断した。検討し評価をする。評価の視点は看護師の介入方法が正しく行われたか、統一 して行えたか、患者については目標が高すぎたかなどを検討した。逆効果であった場合には すぐに中止することにした。成果があった場合で、行っている介入がなければ、成果が継続 しない時には介入は継続とした。その後、介入なしで効果が持続する場合は介入を修了した。

8. 研究者によるスーパーバイズとして、初回の患者 A の 1 例に対してスーパーバイズした。

他 2 名は、看護師のみで行った。スーパーバイズの内容は、プログラム行う際に、アセスメ ント表の用い方、高次脳機能障害の有無と障害重複確認チャートの用い方、日常生活の課 題・課題目標・課題介入チャートの用い方、課題別介入の実際、評価の際のカンファレンス に出席した。主にファシリテーターとして関わった。

5-2-3 実施期間

実施期間は平成 29 年 1 月から 3 月であった。

5-2-4 倫理的配慮

本研究は、千葉科学大学倫理審査(承認 No.28-9)を受け、施設管理者に研究趣旨と方 法等を文書と口頭で説明し承認を受けた。対象患者と家族に対しては、予め、施設の病棟 管理者より口頭と文書で説明してもらい、同意を得た。後日、研究者が家族に研究趣旨、

実施の安全性、途中撤回可、匿名化について説明をした。

5-3 結果

5-3-1 3名の患者の身体的状況

3 名の患者を「身体状況のアセスメント表」を用いて、高次脳機能障害ケアプログラムの 対象となり得るかを判断した結果、A の患者は、呼吸、循環、覚醒、嚥下と消化器、麻痺、

尿失禁、痙攣の項目で異常は認めなかった。B の患者は、麻痺側の足関節の痛みはあったが、

捻挫や骨折、拘縮などの痛みではなかった。C の患者は、尿失禁があったが、尿検査の異常 は認めなかった。よって 3 名の患者はプログラムに参加に移行できた。(表 4-8)

86

表 4-8 患者 3 名の身体的状況

5-3-2 3名の患者の高次脳機能障害より起こる生活上の問題抽出

高次脳機能障害から起こる生活上の問題を明確にするために、3 日間に勤務する看護師が 生活上の問題を確認した場合に、「高次脳機能障害より起こる生活上の問題抽出アセスメン ト表」の「あり」欄に○をつけた。患者 A は、注意障害 8 項目中 2 か所(以下 2/8 と略す)、 記憶障害項目 9/9 の全項目、見当識障害項目 3/3 の全項目、遂行機能障害 7/7 全項目、発動 性障害 1/4 であった。患者 B は、注意障害 3/8、失認 4/7、発動性障害 2/4 であった。患者 C は、注意障害 2/9、見当識障害 3/3、4/7、発動性障害 4/4 であった。(表 4-9)

身体のアセスメント項目 患者A 患者B 患者C

呼吸自覚症状 なし なし なし

呼吸他覚症状・検査データ SPO298% SPO298% SPO298%

循環自覚症状 なし なし なし

検査データ P68,BP138/70 P66,BP110/60 P72,BP138/88

覚醒自覚症状 なし なし なし

検査データ 清明,他所見なし 清明,他所見なし 清明,他所見なし

嚥下と消化器自覚症状 なし なし なし

検査データ 誤嚥なし、他所見なし 誤嚥なし所見なし 誤嚥なし所見なし

麻痺自覚症状 ― 足関節が痛い ―

検査データ ― 所見なし ―

尿失禁自覚症状 なし なし 尿失禁あり

検査データ 尿検査所見なし 尿検査所見なし 尿検査所見なし

痙攣自覚症状 なし なし なし

脳波 所見なし 所見なし 所見なし

87

表 4-9 3 名の患者の高次脳機能障害より起こる生活上の課題の状況

機能障害 アセスメント項目 患者A 患者B 患者C

・2つの事を同時にできない

・飽きっぽい、すぐ注意がそれる

・できたりできなかったりする

・同じミスを繰り返す

・一つのことにこだわり言っても変更できない

・車いすに乗っていて体がずれて落ちそうになる

・車いすのフットレストに患足が載っていない

・更衣やトイレ移動時にべらべら話し、集中できないで転倒しかけた

・行った場所が思い出せない

・自分の部屋が分からない

・病棟のトイレを探していて迷子になる

・行ったことが思いだせない

・作業過程を思い出せないことがある

・現在の状態が事故や病気から起きたことがわからないi

・体験したことを忘れている

・数秒前または数分前のことが思い出せない

・受け持ち看護師など覚えていない

・何時であるか、何月何日何曜日であるか見当つかない

・自分がいる場所の見当がつかない

・どのような関係の人か見当つかない

・ナースコールが押す行為がない(ナースコルを伝達手段とわからない)

・言葉がうまくだせない、出にくい

・語のまちがいがある

・語の読みまちがいがある

・ひらがなが読めない

・全体の文字の読みはできないが、漢字が読める時がある

・文字が書けなくなった

・相手の話の理解ができなくなった

・絵を見て名称を言えない

・手順が分からない

・手順を書いてあげると行えることがある

・計画が立てられない

・物事を具体的に進めていけない

・料理ができなくなった

・掃除ができなくなった

・洗濯ができなくなった

・使い慣れた道具(歯ブラシやブラシなど)が使えない

・単純な動作の指示に従えない

・立体図形や絵の模写ができない

・衣服の着衣ができない

・物と物との位置関係が理解できない

・何指なのかわからなくなる

・自分の体の部分が分からない(片方の手や足がベッドにあるなど)

・日頃使っている物を触ってもわからない

・家族の顔を見ても分からないが、声を聴くと家族だと分かる

・人や物にぶつかる

・強烈な匂いでも分からない

・部分が見えていない

・半側が見えていない

・味覚がおかしい 辛い、甘い、苦いなどわからない

・気分の幅が大きいすぐに不機嫌になる

・すぐに怒る・怒鳴る・暴言がある・暴力があるのどれか一つでもある

・食欲をコントロールできない

・性的逸脱行為がある

・ほしいと思ったら盗む

・ぼーっとしており、促さなければベッドで横になっている

・無為な状態  同じ姿勢で何時間もいる 

・膀胱・直腸機能に異常はないが動作を起こさないために失禁する

・動作が中断し、自身の意思が働かない、促しで行動はとれる