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レンズの応用例

ドキュメント内 光電子工学I Yasuyuki OZEKI's personal web (ページ 40-43)

第 4 章 レンズ 31

4.4 レンズの応用例

4.4.1 リレーレンズ

図4.6(a)に示すように、レンズによるフーリエ変換を繰り返すことで、ある面の電場の空間分布を別の面に投射すること

ができる。これをリレーレンズ、あるいは4f 光学系と呼ばれる。このとき、フーリエ変換を2回繰り返すので、上下左右 が反対になることに注意しよう。

また、図4.6(b)に示すように、フーリエ面に適当な絞りを設置することもよく行われる。これは、フーリエ面において、

電場分布に対してあるパターンを掛け算していることに相当する。従って、リレーされた電場分布には、絞りのフーリエ変 換パターンが畳み込まれる。この光学系は、カメラの絞りや、光による相関処理等の光信号処理に使われる。また、光学系 の空間分解能の解析等にも絞りの概念が使われる。カメラの絞りを狭くすると、光量が少なくなると同時に、リレーされた 像には光がゆるく絞られる。その結果、ピントずれに対する像ボケが少なくなる

4.6

。これは、ゆるく絞られたガウシアン ビームのレーリー長が長いことと同様に考えることができる。

図4.6(c)に示すように、リレーレンズの前半と後半で、レンズの焦点距離をabのように変えておくと、パターンを拡

大・縮小することができる。このとき、x=xaの点に点光源を置き、これがxbの点に集光されるとすると、図4.6(c)より、

この系はxb/xa =−b/a=M を満たす。このような状況を、面Aの像が面Bに倍率M 倍で結像される、という。

4.4.2 単一レンズによる結像

結像そのものは、一枚のレンズで行うことができる。図4.7(a)に示すように、焦点距離fのレンズに対し、距離aだけ離 れた点Aに点光源を置く状況を考える。ただし、このとき、点光源の位置がレンズの中心軸からxaだけずれているとする。

レンズは波面の曲率を変える働きをするが、これは、レンズの中心からの距離に比例して波面の向きを変化させることを意 味する。従って、レンズの中心では波面の向きが変わらない。このことに注意すると、図4.7(a)において、面Aの座標xa

を出発した光が、面Bxb に集光され、確かに面Aが面Bに結像されることがわかる。このとき、xb/xa=b/a≡M を満たす。これは、リレーレンズを用いた結像系の状況と良く似ている。

一枚のレンズによる結像と、リレーレンズによる結像はどこが違うのであろうか?違いがあることは明らかである。例え ば、コリメートされたビームを単一レンズに入射すると、焦点距離において一旦絞られ、その後広がりつつ伝搬する。一方、

4.5x=X+xX,y=Y =yYとおくと、

∫∫dXdYH(X+xX, Y +yY) =∫∫

dxdyH(x, y)e(0x+0y)= ˆH(0,0)

4.6

このことを、カメラの言葉でいうと、焦点深度が深くなる、という。このように、絞りを開いたり閉じたりすることで、被写体と背景のピントの合 い方を調節できるのは一眼レフカメラの醍醐味である。

z

f (a)

f f f

A1(x, y) A2(x, y) =e4ikfA1(−x,−y)

Fxy Fxy

(b)

z

f f f f

A1(x, y)

Fxy P(x, y) Fxy

A2(x, y)

∝A1(−x,−y)∗P˜(kx/f, ky/f)

z A1(x, y)

Fxy Fxy

a a b b

A2(x, y)

x=xa

x=xb

=−(b/a)xa

=M xa

(c)

図4.6 リレーレンズの例。4f光学系とも呼ばれる。(a)焦点距離fのレンズによるリレーレンズ。(b)フーリエ面に 絞りを設置した場合。(c)焦点距離の異なるレンズを用いる場合。

z (a)

z (b)

z b

a

x=xa (c)

Fxy Fxy

b a

Fxy Fxy

a a b b

x=xb

A B AA BB

AA BB

x=xa

x=xb

図4.7 単一レンズによる結像系とリレーレンズとの関係。(a)焦点距離fのレンズによるリレーレンズ。レンズ中心を 通る光線を青線で示した。(b)リレーレンズを、図4.6(b)のフーリエ変換系(一回のフーリエ変換にレンズを2枚使う)

で置き換えたもの。(a)はこの一部と考えることができる。(c) (b)4.6(c)のフーリエ変換系で置き換えたもの。

リレーレンズにコリメートされたビームを入射すると、リレーレンズの射出光もコリメートされている。このようにレンズ の射出光が大きく異なるものの、強度分布のみを考えると、結像そのものはどちらの場合もできているのである。この違い はどのように考えると良いだろうか。

そこで、リレーレンズの系を、図4.7(b)のように、レンズ2枚によるフーリエ変換で置き換えよう。すると、面A’と面 B’がリレーされていることがわかる。従って、面Aは面A’の電場分布が凸レンズによって変化したものと考えることがで きる。逆に、図4.7(c)に示すように、面Aの直後に凹レンズを置いてその射出面をリレーし、さらに凹レンズを通したもの が、単一レンズによる結像と等しい。従って、単一レンズによる結像は、凹レンズ+リレーレンズ+凹レンズと等価であ ることがわかる。すなわち、リレーレンズでは位相まで含めて電場分布が再現できるのに対して、単一レンズでは、結像後 の位相が変化してしまうことがわかる。また、以上の理由により、単一レンズにおける絞りの効果は、リレーレンズにおけ る空間フィルタリングと同じように考えて良いこともわかる。

z

a b θ

∆x

L1

L2

L2

L1

P P

x

θ

Q Q

θ

∆x

x (a)

(b)

図4.8 結像系の空間分解能を考えるための図。(a)点光源の位置が点PからP’に距離∆xだけ移動したとする。この とき、レンズの上端を通る光路はL1からL1に、レンズの下端を通る光路はL2からL2に変化する。その光路長は、前 者はPQだけ短く、後者はP’Q’だけ長くなる。ただし、QP’からL1に下ろした垂線との交点、Q’PからL2に 下ろした垂線との交点である。従って、レンズの上端と下端を通る光路長が2∆xsinθだけ変化することがわかる。(b)

2∆xsinθ= 1.22λのとき、Pがつくる強度分布とP’がつくる強度分布は、中心が互いのゼロ点のところに位置する。

PP’が互いに独立な(すなわち位相関係が時間とともに独立に変化する)光を発するときは、結像面の強度分布はそ れぞれの強度分布の和となる。

結像系の空間分解能

図4.8のような結像系を考え、点PP’2つの点光源がある場合に、これを見分けられるかについて考えよう。点光源 から発生する光は、球面波のように大きな広がりをもってレンズに入射し、レンズの射出光は面Bに集光される。このとき の強度分布は、円形開口の回折パターンのように、(J1(r)/r)2のようになり、ある広がりを持つであろう。これが結像系の 空間分解能を制限する。このとき、この強度分布が点Aの周りにあるとした場合(もしくは1倍で結像した場合)の強度 分布を点像分布関数(point spread function, PSF)という。光学系が理想的であったとしても、光は波動であるため、

PSFを無限小にすることはできない。このように、PSFによって制限される空間分解能を回折限界という。

3.3.3節で見たように、円形開口の回折パターンがあったとして、その両端の光路長が1.22λだけ異なるとき、回折パター

ンの強度が0になる。ここで図4.8(a)に示すように、点光源から発生した光のうち、光軸から±θ以内の角度で進行する成 分のみを検出できるとしよう。点光源の位置が∆xだけ変化すると、レンズ上端への入射光は∆xsinθだけ光路長が短くな り、レンズ下端への入射光は∆xsinθだけ光路長が長くなる。この差分が1.22λとなる条件は、

∆x= 0.61 λ

sinθ (4.15)

である。上記の議論では、点Aが空気中にあるものとしたが、点光源が屈折率nの媒質中にあるとすると、次式を得る。

∆x= 0.61 λ

NA (4.16)

ただし、NA =nsinθは開口数(numerical aperture)と呼ばれる。式(4.16)が、回折限界の空間分解能と呼ばれる。こ のことから、結像系の空間分解能を高めるためには、短波長の光を使う、開口数の大きなレンズを使う、試料を屈折率の大 きな媒質内に置く、等をすれば良いことがわかる。ただし、sinθ1を超えることはできないし、n1のオーダーである ため、結局、可視光を使った顕微鏡の分解能は波長の半分のオーダーに制限される。

近年、この回折限界を打ち破る方法として、超解像顕微鏡が開発された。ここではその詳細を割愛するが、その原理は以 下のようなものである。式(4.16)は、2つの点光源を同時に結像する際に識別可能な最小距離を表している。一方、2つの 点光源を別々に光らせることができれば、結像した場合にPSFだけの広がりを有するが、その中心の位置を正確に求めるこ とができ、2つの点光源を識別できるのである。

4.4.3 レーザ走査

図4.9に示すように、レンズ手前のフーリエ面に可動ミラーを設置し、レーザビームを導入して、ビームの方向を変化さ せよう。すると、レンズのフーリエ変換作用によって、ビームの方向が位置に変換される。これをレーザ走査といい、レー

Fxy

f f

図4.9 レーザー走査系。

(a) (b)

z

f1 f2

z

f2

−f1

図4.10 ビーム拡大・縮小系。(a)ケプラー型。(b)ガリレイ型。

ザ加工やレーザ顕微鏡などにおいて、所望の位置にレーザ光を集光するときに用いられる。顕微鏡の対物レンズなど、焦点 距離の小さなレンズを用いる場合は、レーザ走査した光をリレーレンズで対物レンズに結像することもよく行われる。

4.4.4 ビーム拡大・縮小

レンズにより集光する際に所望の集光スポットを得るためには、レンズに入射するビーム径を制御することが重要である。

レンズを用いた代表的なビーム径制御系としては,ケプラー型およびガリレイ型のビーム拡大・縮小器がある。ケプラー型 は凸レンズ2枚から構成され、ガリレイ型は凹レンズと凸レンズから構成される。これらの構成を図4.10に示す。いずれ の構成においても、拡大率・縮小率M は、レンズの焦点距離をf1、f2とすると、M =f2/f1で表される。また、ビーム を拡大すると、ビームの進行方向は光軸に対して平行に近づく。逆に、ビームを縮小すると、ビームの進行方向は光軸に対 してより斜めになる。このことを用いて、ビーム縮小系は望遠鏡として使われる。遠方からの光を大きなレンズで受け取り、

そのビームを縮小して目に導くと、網膜に集光されるときの位置変化を大きくすることができるのである。

Space-variantspace-invariant

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レンズは、光の位置に応じて異なる位相シフトを与える。このような現象を、space-variant(位置依存)という。一方、

伝搬現象は位置が変化しても伝搬の仕方が変わることはない。このような現象を、space-invariant(位置無依存)とい う。フーリエ変換はspace-invariantな現象を解析するための有効な手法である。これは、時間領域において、linear

time-stationary system(線形時不変系)を解析するためにフーリエ変換を使うことと対応している。

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