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第 5 章 偏光 40

5.2 偏光の制御

自然界に存在する光は、決まった偏光を持っておらず、偏光が時間とともにランダムに変化する。一方、レーザが出力す る光は一定の偏光を有している。これらの偏光を制御するために、さまざまな素子が使われる。その代表的なものが、波長 板と偏光子である。ここではそれらの働きについて簡単にまとめておこう。

5.2.1 複屈折による偏光制御

結晶材料においては、偏光に応じて屈折率の異なるものが存在する。このことを複屈折という。ある複屈折材料を考え、x 偏光に対する屈折率がnx、y偏光に対する屈折率がnyであるとし、材料の厚さがlであるとしよう。このとき、この材料中 を伝搬する光波の波数はそれぞれkx= 2πnx/λ,ky= 2πny/λとなる。したがって、射出光のx偏光とy偏光の位相差は

∆ϕ= (ky−kx)l= 2πl

λ (ny−nx) (5.18)

だけ変化することになる。実際には、位相をπもしくはπ/2変化させるものが良く使われる。これらをそれぞれ半波長板 (half-wave plate, HWP)1/4波長板(quater-wave plate, QWP)という。

HWPによる偏光回転

図5.3に、直線偏光をHWPに入射した場合の偏光変化の様子を示す。直線偏光の偏光方向とx軸のなす角度を−ψとす る。また、HWPの軸はy偏光の光に対してπの位相変化を与えるように設定する。このとき、図5.3(a)のようにy方向の 電場の正負が反転するので、その偏光方向は−ψとなるであろう。逆に、図5.3(b)に示すように偏光をx偏光に保ったまま HWPの角度をψだけ変化させると、偏光方向は2ψだけ変化する。また、図5.3(c)(d)に示すようにHWPに楕円偏光を 入射すると、右回り楕円偏光は左回り楕円偏光に、右回り楕円偏光は左回り楕円偏光に変換される。このことは、図5.2δ がπ変化すると回転方向が変化することから理解できる。このように、HWPは偏光方向を回転させつつ、楕円偏光の回転 方向を反転させる働きを有する。

5.2.2 QWP による直線偏光と円偏光の変換

図5.4に、直線偏光をQWPに入射した場合の偏光変化の様子を示す。HWPのときと同じように、直線偏光の偏光方向 とx軸のなす角度を−ψとする。また、QWPの軸はy偏光の光に対してπ/2の位相変化を与えるようにする。このとき、

図5.4(a)のようにy方向の電場の位相が変化し、直線偏光は楕円偏光に変換される。また、図5.4(b)のように偏光をx

光に保ったまま、QWPの角度をψだけ変化させると、出力光を直線偏光から円偏光まで様々に変化させることができる。

逆に、楕円偏光をQWPに入射すると、直線偏光が出力される。このように、QWPは直線偏光と円偏光・楕円偏光を変換 する働きを有する。

5.2.3 偏光子による偏光成分の抽出・分離

偏光子とは、ある方向の偏光成分だけを抽出する素子である。ひとつの電場方向に対してのみ吸収が生じる材料を使った り、偏光によって反射・屈折の仕方が異なる材料・構造を用いる場合がある。後者を使うと、偏光成分に応じて光を分離す ることもできる。

前者の代表的なものとしてポラロイドフィルム偏光子がある。後者には複屈折材料を巧みに組み合わせたウォラストンプ リズム、グランレーザー偏光子、グラントムソン偏光子や、屈折率の異なる誘電体の層を組み合わせた偏光ビームスプリッ タ(polarization beam splitter, PBS)がある。

偏光子の透過光強度:Malusの法則

偏光子の働きを考えるため、偏光子がx偏光のみを通すものとし、ここに直線偏光の光が入射する場合を考えよう。ただ し、偏光軸とx軸のなす角度をψとする。このとき、入射光電場は

Ex=acosψcos(kz−ω0t) (5.19)

Ey=asinψcos(kz−ω0t) (5.20)

と表される。このうち、Exは偏光子を透過するが、Ey = 0となる。ここで、入射光のパワーをI0、射出光のパワーをI しよう。パワーは電場の大きさの自乗に比例するから、

I0∝(acosψ)2+ (asinψ)2=a2 (5.21)

I∝(acosψ)2 (5.22)

となる。従って

I∝I0cos2ψ (5.23)

となることがわかる。このことをMalusの法則という。

式(5.23)が比例関係となっているのは、ψ= 0においても何かしらの光エネルギーの損失があることを加味しているため

である。光エネルギーの損失が無いとすると、式(5.23)は等号となる。

5.2.4 ファラデー効果とファラデー回転子

磁性材料中では、右回り円偏光と左回り円偏光の間で屈折率が異なる現象が生じる。このことをファラデー効果という。

また、ファラデー効果を生じさせる素子のことをファラデー回転子という。直線偏光の光は右回り円偏光と左回り円偏光の 和として考えることができる。ここで、一方の位相が変化すると、直線偏光の偏光軸が回転する。すなわち、直線偏光にψ の偏角を与えることは、右回り円偏光・左回り円偏光の双方にψの偏角を与えることに相当する。円偏光に偏角を与えるこ とは、位相変化を与えることに相当するので、右回り円偏光には−ψ、左回り円偏光にはψの位相変化が加わる。逆に考え ると、右回り・左回り円偏光にθの位相差が加わると、直線偏光の偏角はθ/2だけ回転することがわかる。

5.2.5 偏光の制御や応用の例

任意偏光から任意偏光への変換

図5.5(a)に示すように、QWPHWPQWPを並べると、任意の偏光を任意の偏光に変換することができる。入力光の

偏光をQWPで直線偏光に変換し、HWPで直線偏光の偏角を変化させ、QWPで任意の直線・楕円・円偏光に変換する。

可変比ビーム分割

図5.5(b)に示すように、HWPPBSを用いて直線偏光を入射する場合を考えよう。HWPで直線偏光を適当な偏角に

変換して、その一部を透過させることができる。この構成は、ビームを任意の割合で2つに分割する際によく用いられる。

QWP HWP QWP (a)

HWP PBS (b)

PBS PBS

(c)

PBS

QWP M (45) (d)

P(45) (e)

P(0) FR

図5.5 偏光を用いた光学系の例。赤線は光のビームを表す。QWP: 1/4波長板。HWP: 1/2波長板。PBS:偏光ビー ムスプリッタ。FR:ファラデーローテータ。P:偏光子。M:ミラー。(a)任意偏光から任意偏光への変換。(b)任意比 でのビーム分割。(c)偏波合成・分離。(d)射出光と反射光の分離。(e)アイソレータもしくはサーキュレータによる伝 搬方向の分離。

偏波多重

図5.5(c)に示すように、PBS2つの光を合わせて、その射出光を再びPBSで分離することで、2つの光がひとつの光

路を共有することができる。このことを偏波多重という。最近の光ファイバ通信では、この偏波多重を用い、2つの偏光に 異なる情報を乗せて一本の光ファイバで伝送することが一般的になっている。

反射光の取り出し

図5.5(d)に示すようにPBSQWPを設置する状況を考えよう。ただし、QWPの軸はPBSの透過光の偏角に対して

45度の角度をなすものとする。この光が反射してきた場合を、PBS射出面から見てQWPの影響を2度受けるので、HWP と同じ偏光変化を生じ、偏光面が90度変化する。その結果、反射光をPBSの別のポートに出力することができる。

反射光の除去:アイソレータ

図5.5(e)に示すように、偏光子、ファラデー回転子、偏光子を並べよう。入力光の偏角はファラデー回転子で45度変化

し、2つ目の偏光子を通り抜けることができる。逆方向に光を入射すると、2つ目の偏光子を通った光は、ファラデー回転子 で同じやはり45度回転する。その結果、1つ目の偏光子を通過できない。このようにして、光の透過方向を一方だけに制限 することができる。このような素子をアイソレータという。

レーザの出力には多くの場合アイソレータが設置され、レーザ出力光が外部で反射されて戻ってきたとしても、レーザ動 作が影響を受けないようにしている。また、偏光子の代わりに偏光ビームスプリッタを用いると、反射光を取り出すことが できる。これをサーキュレータという。図5.5(e)のようなPBSQWPでは、出力光を円偏光にしておくことで出力光と 反射光が異なる偏光を有することを利用している。これに対し、アイソレータやサーキュレータは単一の偏光に対して非相 反な動作を実現している。

ドキュメント内 光電子工学I Yasuyuki OZEKI's personal web (ページ 47-50)

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