村上 美緒
Mio MURAKAMI
中京大学現代社会学部現代社会学科 4年生(2011年度)
※この研究は、2010 年度の社会調査研究において、著者が「ラジオCM論~良いラジオCMとは何か~」を卒業研究 として発展させたものである。ラジオ研究の継続ということで、本報告書に掲載することとした。(担当教員)
◆要旨
最近は、過去のテレビ CM をまとめた DVD が発売され、また動画サイトが発達したことにより昔は困難だったテレビ CM の収集が容易になった。そのことによりテレビ CM の研究はされるようになってきた。しかし未だラジオ CM の研究 はほぼされていない。本論文ではスポット CM に的を絞り、ラジオ CM 研究とは何に注目するべきなのか、どのように分 析するのか、まずはその枠組みを考えてみたいと思う。
第一章では昨年私が研究したデータをもとに構成からみえるラジオ CM の分類を考え、第二章では「語り」に注目し た分類を考える。
ラジオは音だけのメディアである。声と音楽と効果音だけで聴衆者にイメージをふくらませさせる。音の使い方に 特化したメディアである。広告業界は厳しさを増している。民間放送である限り、広告収入がないとラジオ局でも潰 れてしまう。Radiko の本格放送も昨年から始まり一年余り。今後のラジオ業界をも見据える第一歩、半歩にでもなれ ば良いと思う。
もくじ
第 1 章 分析の手掛かり
第 2 章 新たな分類の仕方〜「語り」の文法
2-1. 語りの文法「読み上げ口調」「呼びかけ口調」「語りかけ口調」
2-2. 語りの文法と、「人間距離」「コミュニケーションの文体」
2-3. 語りの文法と放送されているラジオ CM 2-4. 語りの要素「速さ」「高さ」「間」
第 3 章 まとめと今後の課題
3-1. 音の世界を文字の世界に表す難しさ
3-2. 本研究結果と今後の課題
■第 1 章 分析の手掛かり
ラジオ CM を研究するにあたって、まずぶつかった壁は先行資料のなさだった。何を基準に分類すればよ いのか、全てが手探りだった。
昨年の個人研究では「良いラジオ CM とは何か」というテーマで以下の項目に注目した。
① 音楽(歌・BGM)
② 効果音(SE)
③ 出演者の人数
④ 伝えたい情報の位置
◆1-1.現状からみたラジオ CM の特徴と優れた CM の条件
まず放送されている CM からその特徴を見いだすことによって「良い CM」とは何か考えていくこと にする。
平成 23 年 2 月 7 日(月)5 時〜29 時の 24 時間の間に放送された CM は 305 本。
平成 23 年 2 月 7 日(月)5 時~29 時の 24 時間の間に放送された CM は 305 本。そのうち、BGM が使 用されているものは 270 本であり、約 89%もの CM に BGM が使用されていた。それに対して SE は 40 本 と予想に反して少なかった。また、出演者は一人が 169 本で約 55%、二人が 93 本で約 30.%、三人が 38 本で 13%、四人が 4 本、5 人以上が 2 本となり、出演者一人の CM が半分を超えた。
調査対象:FM愛知
期間:平成 23 年 2 月 7 日(月)5 時〜29 時の 24 時間 方法:録音/番組・CM表作成 ⇒別紙資料参照
図1 図2
図3
続いて、④伝えたい情報の位置である。
最初から最後まで伝えたい情報のみを伝 えている CM(伝達型 CM)が 305 本中 221 本で約 73%。続いて、始めは宣伝したい ものとは関係ないまたは関係があっても 直接的な宣伝にならない情報を述べ、最
後の最後で重要な情報を述べる CM(後だし CM)が 65 本で 21%。この二つで約 8 割を占めており他 は、途中から大切な情報を徐々に述べていく CM(小出し CM)が 13 本で約 4%。最初と最後に大切 な情報を述べる CM(論文型 CM)が 6 本で約 2%であった。
また、番組の宣伝や局主催のイベント、コンサート情報などのほとんどは伝達型 CM である(伝達 型 CM221 本中 89 本)。伝達型 CM は伝えたいことだけを発信するため、情報量が多く、伝えたい情 報をたくさん伝えることができる。しかし単調になりやすく耳に留まりづらい。それに対して後 だし CM は最初にインパクトを与えたり、気になるシチュエーションを演出したりすることで、リ スナー(聴衆者)を引きつけることができる。しかし情報量が少ない上に失敗すると最後まで聞 いてもらえなかったり、最後まで聞いていても大切な情報を聞き逃してしまったりする可能性が ある。この間を取っているのが、小出し CM と論文型 CM である。しかし小出し CM ではリスナーを 引きつける力が落ちる上に情報量も伝達型より少ない。論文型も最初と最後に大切なことを述べ るためわかりやすくはあるが、その分だけ耳に留まりづらくなってしまう。この点から考えると 良い CM とは「情報量」と「引きつけ力」のバランスの良いものなのではないだろうか。
また、CM は基本的に5つの形式によって分類することができる。
(1)読み上げ形式 (2)語りかけ形式 (3)歌形式 (4)列挙形式 (5)ドラマ形式
情報量(少) ・後だしCM
・小出しCM
・論文型CM 情報量(多) ・伝達型CM
引きつけ力(小) 引きつけ力(大)
(図5 図4
(1)読み上げ形式とは伝達型 CM の中でもフォーマルな文体で話されていて、一から多に向けてのコミュ ニケーション方式をとっているものである。局主催のイベント、コンサート情報に多く見られ、CM の 出演者が一人で BGM が使用されていうことが多いことも特徴である。例えば、民放FM同時生放送ライ ブの CM(図 6)や NTT 西日本の CM(図 7)。
続いて(2)語りかけ形式では、読み上げ形式と比べてより親しみを込めた略式の文体が使用されている。
一対多というよりは、一対一のコミュニケーションに近い印象を持つ。例えば、株式会社 TOP の CM(図 8)。この形式は伝達型 CM に限らず、小出し型、後だし型、さまざまな形をとる。
(3)歌形式とはその名の通り CM の大部分が歌によって占められているものである。伝達型でも歌にの せて伝えているので、耳に残りやすい。例えば、キャッシングのユニーファイナンスの CM(図 9)や AC の あいさつ(図 10)の CM など。
続いて(4)列挙形式とは、こんな時はこれ、あんな時はそれ、のように事例を挙げてイメージさせる手 法を使用した CM。関連した事例を挙げて最後に商品名や企業名をあげる場合が多いが、まさかのどん でん返しもできる形式である。例えば NDS ソリューション(図 11)や東海東京証券(図 12)、ブルボンのア ーモンドラッシュ(図 13)の CM など。
そして、(5)ドラマ形式。これが一番想像しやすいと思うが、背景やキャラクターの設定があり、ラジ オドラマ形式になっている CM のこと。例えば、ワンダモーニングショット(図 14)や森永のチャリチョ コ(図 15)、聖教新聞(図 16)などの CM で使われている。2,3 人以上の会話を中心としたものが多いが、
一人での回想シーンのように出演者が一人の場合も多い。背景や情景をイメージさせるために BGM や SE が使用されることが多い。