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JIS X 8341-3 は 5 年ごとに見直しが行われます。

過去 5 年にわたり、試験とホームページ全体の機械的な検証に基づく改善を実施

6.2.4. ユーザー評価

利用者(ユーザー)にホームページ等を実際に閲覧・操作してもらうことによって、問 題点を把握する取組をユーザー評価と言います。

(1)ユーザー評価の効果

ユーザー評価を実施することによって、利用者がホームページ等で提供されている情 報・機能を知覚できるか、操作できるか、理解できるかを確認することが必要です。

地方公共団体においては、職員が発信する情報の対象者は、多くの場合その地域の住民 です。実際に、情報の受け手である地域住民から評価を得、適切な情報発信となってい るかどうかを確認するためにも、ユーザー評価を実施することが有効です。

(2)簡易的なユーザー評価実施の流れ(例)

専門の器材・施設等を使用することなく、利用者自身の利用環境を活用してユーザー評 価を準備・実施する方法を解説します。

 地方公共団体の管内に居住する障害者等の利用実態を把握するためにも福祉関連部 局、及び当該自治体内の社会福祉協議会等に対して、ホームページ等の改善への協 力を要請します。具体的には、協力者等を紹介してもらい、その協力者に対象とな るホームページ等を利用してもらい、問題点等がある場合に指摘してもらいます。

 協力者がふだん利用している機器やソフトウェアを用いて評価していただけるよう、

協力者の自宅等の通常の利用環境で実施できる内容とします。

 ユーザー評価の結果から、問題点や改善点を把握し、対応の優先度を検討します。

(3)評価の準備、実施における注意点

高齢者や障害者は、利用者の身体条件によって様々な環境でホームページ等を利用して います。ホームページ等を利用する際に問題となる点は、障害の種類や利用環境に応じ て異なります。可能な範囲で、異なる障害を持つ方々に評価を依頼しましょう。

【参照】

ユーザー評価の対象者や人数を検討する際、JIS X 8341-1:2010「高齢者・障害者等配 慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第1部:共通指針」

の「附属書JB(参考)試験方法 JB.2.2 試験にかかわる利用者の特性及び分類」が参 考になる。

 できるだけ事前に対象となる障害についての理解を深めた上で、調査依頼、実施を 行いましょう。

 協力者の選定・依頼は、福祉担当職員や、地元の障害者団体、シニアネット、特別

報提供施設や障害者ITサポートセンターの多くで障害者モニターの紹介を受ける ことが可能です。

 依頼時には、実施目的、ユーザー評価から得られた結果の活用方法、ユーザー評価 の実施内容、個人情報の取扱い、謝礼の有無、調査実施場所等を説明し、理解を得 た上で進めましょう。

 健常者よりも、評価に参加する負担が大きいことを認識した上で、ユーザー評価を 企画しましょう。

 ホームページ等の中から特定又は任意の情報を探し出すことを依頼する場合は、利 用者における実際の利用シーンを想定した上で依頼内容を設定します。協力者が全 く興味を持てないような内容は避けましょう。

 評価の際に録音や撮影(カメラ、ビデオ)を行うような取組を企画する場合は、本 人の許可を取りましょう。

 高齢者や障害者がホームページ等を利用している様子を見せてもらうことは、ウェ ブアクセシビリティの問題点と改善方法を適切に理解することに繋がります。ただ し、協力者の負担となる場合がありますので、十分に相談の上で実施しましょう。

(4)継続的に評価を得る取組

一過性の取組で終わることなく、継続的にアクセシビリティの向上に寄与してもらうモ ニター制度等を設け取り組むことが有効です。ホームページ等を利用する際に問題とな る点は、障害の種類や利用環境に応じて異なります。可能な範囲で、異なる障害を持つ 方々に評価を依頼しましょう。

(5)利用者のスキル向上につながる取組

地方公共団体においては、誰もがホームページ等をより円滑に利用できるようにしてい くために、関係部署等と連携し、利用者のホームページ閲覧等のスキル向上につながる 取組(障害に応じた利用相談会や、利用者や支援者等に対する講習の実施等)を企画す ると良いでしょう。

【参照】

 9.4.(参考)視聴覚障害者情報提供施設等一覧(P.143) ポイント!

一過性の取組で終わることなく、継続的に実際の利用者の評価を得て、問題点を確 認したり、その改善方法について意見交換を行ったりするなどにより、利用者とと もにウェブアクセシビリティの確保・維持・向上を目指すことが重要です。そのた めにも高齢者や障害者をはじめとするユーザーと連絡を密にする等、信頼関係を構 築しておくことが必要です。

【事例】

ユーザー評価、運用会議等を通じてアクセシビリティを高める

1.基本情報

団体名:東京都杉並区

対象サイト:のーまらいふ杉並 総ページ数:約6,000ページ CMS導入の有無:あり 2.主な内容

2007年に障害者施策課所管のホームページ として、障害のある方への生活支援サイト

「のーまらいふ杉並」を開設。以後2015年まで、毎年、障害者によるユーザー評価や

JIS X 8341-3:2010に基づく試験を実施し、アクセシビリティの向上に取り組んだ。

また、開設当初2年間においては、障害者支援団体等のヒアリング調査を行い、利用者 の意見を参考に利便性の向上に努めた。

3.参考にしたいポイント

 全盲(音声読み上げソフト)、弱視(拡大表示)、肢体不自由(マウスを利用でき ない)の利用者に協力を得てユーザー評価の取組を実施し、障害者がホームページ を利用する際に実際に直面する問題点・課題を把握し、改善を行った。(例:拡大 表示する利用者が、ページ下部の「サイトマップ」のリンクに気づけなかったた め、ページの上部に移動した)

 障害者から具体的な指摘を得ることにより、担当職員の理解が深まり、日頃から障 害者の利用をイメージしながらホームページを作成できるようになった。

 同様の取組を毎年繰り返し、2013~2015年の試験において等級AA準拠を確認。

4.苦労した点、工夫した点

 障害者関連の所管課や施設の職員、広報課のホームページ担当者、CMS運用事業 者、コンサルティング事業者等が参加する運用会議を年に数回開催。関係メンバー 全員で、ユーザー評価等で確認された問題点・課題を共有した上で、改善方法を協 議し、具体的な改善に結びつけた。

※20161月に杉並区全体のウェブサイト再構築を実施し、「のーまらいふ杉並」は公式ホームページに